【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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「月の砂漠のかぐや姫」登場人物等紹介

「月の砂漠のかぐや姫」は、今でない時、ここでない場所、人と精霊の距離がいまよりももっと近かった頃の物語です。「月から来たもの」が自らの始祖であると信じる遊牧民族「月の民」の少年少女が、ゴビと呼ばれる荒れ地を舞台に、一生懸命に頑張ります。
 物語世界の下敷きとなっている時代や場所はあります。時代で言えば遊牧民族が活躍していた紀元前3世紀ごろ、場所で言えば中国の内陸部、現在では河西回廊と呼ばれる祁連(

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月の砂漠のかぐや姫 第192話

 遥か遠くにそびえ立つ祁連山脈に端を発するこの川は、その山々の麓に湧く水が少しずつ集まって小さな流れとなったものが源でした。この川は上流の方では山脈に沿って東から西へと流れていますが、一部で地表に顔を出す他は、地下を流れる水脈となっています。ゴビの地表にはとても強い日差しと絶え間なく吹き続ける風があるため、地表を走る分流の多くは枯れてしまっています。
 川は祁連山脈の西端で北西方向へ流れる向きを変

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今日は良い日になりそうです💛

月の砂漠のかぐや姫 第191話

 王柔が必死に水をかく先では、大きな茶色の塊が波間に浮かんでいます。その塊は、駱駝のコブが水面から顔を出している姿でした。
 駱駝のコブには水が入っているとよく言われます。それが嘘か真かはわかりませんが、どうやら水に浮かぶことは確かなようです。それは、まるで大きなナツメヤシの実がぷかぷかと水に浮かんでいるかのように、激しい川の流れの中でも全く沈むそぶりを見せていませんでした。
 羽磋は泳ぎ着いた駱

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月の砂漠のかぐや姫 第190話

「王柔殿、早く、理亜を駱駝の背に」
「そうだ、理亜は、理亜はどこに。羽磋殿、理亜は!」
「王柔殿、理亜は貴方の後ろにいます。うわっ、あれはなんだっ」
 ようやく意識がはっきりとしてきた王柔は、直ぐに自分の一番大切な存在である理亜を探し始めました。彼女のことが心配でなりませんでした。理亜は無事でいてくれているのか。羽磋のように、自分よりも上手に泳げているのか。それとも、自分の助けを必要としているのか

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貴方に美しい夜があらんことを!

月の砂漠のかぐや姫 第189話

 羽磋が子供の頃の遊びで、ナツメヤシの木の上からオアシスに飛び込んだ時もそうでした。高いところから飛び込むと、その勢いで水中で体がぐるぐると回転してしまい、どちらが上か下かもわからない状態になってしまいます。もちろん、そのまま水中にいると息ができませんから、不安な気持ちがどんどんと大きくなってきます。そのため、まだ小さくて羽と呼ばれていた頃の彼は、早くどちらが上かを探して水面に顔を出そうと必死にも

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月の砂漠のかぐや姫 第188話

「ィヤアアッ・・・・・・、オージュ!」
 王柔の胸の中で理亜があげる悲鳴が、空中に長い尾を引きました。王柔は少しでも理亜を守ろうと、ギュッと目をつぶったままで、彼女に回している腕に力を込めました。実際の所では、王柔の腕は理亜の身体をすり抜けてしまうのですが、彼はそうせずにはいられなかったのでした理亜の悲鳴を聞いた羽磋は、目を見開いて自分に何かできることがないか必死に頭を回転させ続けました。でも、彼

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月の砂漠のかぐや姫 第187話

 突然自分のお尻に生じた強い痛みに驚いて真っすぐに駆けだした駱駝は、背中に理亜を乗せたまま、そして、引き綱に掴まっている王柔と羽磋を引きずったまま、切り立った岩壁の側面に刻まれた小道の縁から空中へと、勢いよく飛び出してました。
 ブオオッ。ウオゥツ・・・・・・。ブ・・・・・・?
 痛みから逃れたい一心でとにかく前へ進もうとする駱駝の脚は何度も回転をしますが、もはやそれは地面に触れてはおらず、前に進

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月の砂漠のかぐや姫 第186話

 当然のことながら、隊の前の方を歩いていた男たちも、何者かが崖の上から攻撃を仕掛けて来て、自分たちの後方の隊が大混乱に陥っていることは承知していました。でも、ここは岩壁と崖っぷちに挟まれた細道で、ある程度広くなったり細くなったりはするものの、その最も細い部分の道幅といえば駱駝の横にそれを引く男がようやく立てるほどしかありません。
 そこへ、攻撃を受けた場所で壁際に避難した男たちが引き綱を離した駱駝

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月の砂漠のかぐや姫 第185話

 ここで、物語は少し時間を遡ります。
 時の頃は冒頓たちがヤルダンに入る前で、場面はと言えば、切り立った崖の中腹に刻まれた細い小道を、王柔や羽磋を先頭とした交易隊が駱駝を引きながら進んでいるところです。
 細い小道の左側には切り立った砂岩の壁があります。小道の右側は崖になっているのですが、薄暗い崖下がどうなっているのかは道の上からは見通せず、道を踏み外して落下でもしたらどこまで落ちていくのかわかり

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月の砂漠のかぐや姫 第184話

 呪いの青い光が見せる世界は、人が眠った際に見る夢と同じで、それを見ている者にとっては現実と何ら変わりがありませんでした。つまり、自分が見ている世界が過去に経験した出来事であるのかどうかなど、それを見ている者が考えることはないのでした。そこで起きる出来事にただ心を痛め、あるいは、涙を流すだけなのでした。
 冒頓も、眩しい白一色の世界から浮かび上がっては目まぐるしく変わっていく場面の一つ一つを、全力

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月の砂漠のかぐや姫 第183話

 青い光に飲み込まれてしまった冒頓の視界は、太陽を直接見た時のように真っ白になり、何物の姿形も見えなくなってしまいました。
「クウゥッ・・・・・・」
 鋭い痛みを発する両目を押さえながら苦しげな声を出す冒頓の耳に、母を待つ少女の奇岩の声が聞こえてきました。
「お前のせいで、わたしは長い間一人だったのだ。お前も苦しめっ。苦しむんだっ」
 それは彼女の心の底から発せられた声で、そこには彼女が長い間経験

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