クレオパトラとアイデンティティ【安芸の湯 ドーミーイン広島@広島】(2/2)
僕が「安芸の湯 ドーミーイン広島」に着いたのは17時頃。初の広島出張ということもあり、なるべく緊張を高めないために普段から利用に慣れているドーミーインに宿泊したい狙いもあったのだけれど、せっかく経費でホテルに泊まるのであればサウナ付きのほうが好都合でもあったのだ。
チェックインを済ませると、部屋の鍵を渡された。ドーミーインはカードキーであることが多いけれど、こちらはシリンダーである。それからエレベーターに乗り、指定された部屋に向かうと、その中もドーミーインの基本仕様とは若干異なっているようだった。とはいえサービス内容は変わらず、アルコールや夜鳴きそばを無料でいただくことができる点にほっとした。
今日は明日の仕事の件でパートナーと打ち合わせをする予定があり、準備を済ませると早々にホテルを出て、近所のカフェで落ち合ったのち、音戸温泉に行ったりお好み焼きを食べに行ったりしてから部屋に戻った。時刻は23時を回ったところだ。
「では、行きますかね」
僕は館内着に着替え、タオルを持って8階に向かった。エレベーターを降りると、すぐ脇の本棚には漫画が並んでいたり、冷凍庫には無料のアイスが用意されていたりと、ドーミーインならではのホスピタリティを感じることができた。
浴場はそのさらに奥にあった。僕は脱衣所に入って準備を済ませると、いよいよ浴室へと足を踏み入れた。
「ほぉ、相変わらずきれいだ」
(公式サイト: https://www.hotespa.net/hotels/hiroshima/spa/ )
広々とした浴場には大きな内湯がひとつと水風呂がひとつ。そしてガラス越しに見えるのは露天の壺風呂だ。
(公式サイト: https://www.hotespa.net/hotels/hiroshima/spa/ )
僕はさっそく身を清めてからお風呂で体を温め、さっそくサウナ室へと向かい、棚に用意されていたサウナマット用のビート板を手にして扉を開けた。
「コンパクトだけど良い雰囲気だな」
(公式サイト: https://www.hotespa.net/hotels/hiroshima/spa/ )
物理的には6人ほどが座れる2段構成のサウナ室は、106℃と十分な熱さが保たれていた。僕は空いている上段に腰をかけ、正面に設置されたテレビの音に耳を傾けながら静かに呼吸をした。湿度は低めで、ストーブから発せられる熱がサウナ室内を対流して僕の体を蒸してくる。次第に全身からは汗が流れ出し、心臓の鼓動が激しくなってくるのがわかった。
ーーそろそろ出るか……。
僕は立ち上がり、サウナ室を出て体の汗をすすいでから、水風呂に肩まで浸かった。
「やっぱり冷たいな……!」
ドーミーインの水風呂はどの店舗もとても冷たく、今回も体感では15〜16℃程度だろうか。僕の火照った身体は急激に鎮められ、自然と呼吸が深くなっていった。
それから30秒ほど経ったところで立ち上がり、広々とした露天スペースへと移動して、椅子に腰をかけて大きく深呼吸をした。
「はぁ……最高だ……」
外から入り込む冬の冷気が僕の体を優しく包み込み、自然と全身の力が抜けていった。幸いなことに周囲に他のお客さんはおらず、露天スペースは貸切状態だ。そっと目を閉じて五感を研ぎ澄ませると、僕が今いる場所には、静かで贅沢な時間が流れていた。
ーー明日の仕事は無事に終えることができるだろうか。そういえば、アポイントを取った相手は推定十数億円の資産を持つ経営者だったな。初めて会うけれど、どんな人なのだろう。そしてどうすればそれほどの資産を築くことができるのだろう。僕もそのくらい経済的に豊かになることができたら、今よりも幸せな人生を歩むことができるのだろうか。
外気浴中には、僕は自分の心の声に耳を傾けるようにしている。今日の僕は、どうしても明日の仕事のことが頭から離れないようだった。僕が会う予定の相手は敏腕の経営者で、いわゆる勝ち組のステータスなのだが、その前情報に意識を向けると、どうしても羨ましいと思ってしまう。ただ、ここで僕の頭の中には別の考えも浮かんでいた。
ーーその経営者には、他の人にはわからない苦悩があるのかもしれないし、お金で解決できない悩みもあるかもしれない。もしかしたら、その人が手に入れることができなかったものを、僕自身が持っている可能性だってある。僕がその経営者になろうと思ってもなれないように、その経営者も他の誰かにはなれないんだ。他人と自分を比べたって、そこに意味なんてないのかもしれないな。
僕は目を開けて、まっすぐ前を向いた。そして立ち上がり、再びサウナ室へと向かった。
(written by ナオト:@bocci_naoto)
YouTube「ボッチトーキョー」
https://www.youtube.com/c/boccitokyo
①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます