考えるために考えるな【ヒラリーズ心斎橋】(2/2)
今回宿泊することにしたのは、ホテルヒラリーズ心斎橋だ。繁華街から程近く、予定していた仕事先へもアクセスが良いホテルの中から選んだ唯一の理由は、もちろんサウナである。
といっても、先にアムザに行く予定を立てていた僕は、指定された部屋で準備を済ませると、必要な荷物だけを持って一時的に出かけることにした。
夜、アムザから部屋に戻った僕は、翌日に予定している仕事の準備に取り掛かった。ホテル近くの「タコタコキング」でたこ焼きをテイクアウトして夕食を済ませた。やはり本場のたこ焼きははずれが無い。
ーーでは、行きますか。
僕は部屋からタオルを持って、大浴場がある13階へと向かった。
脱衣所のドアはセキュリティキーを入力すると開く仕組みになっており、中に入ると清潔感のある真新しい空間が広がっていた。それもそのはずで、2018年にオープンしたばかりのホテル「フェリーチェ心斎橋」を2020年にリブランドする形でオープンしたのが、ここヒラリーズ心斎橋なのだ。
そこで棚に荷物を預けた僕は、いよいよ浴場へと足を踏み入れた。
ーーやっぱりきれいですよね
シンプルな造りの浴場には、お風呂と水風呂が1つずつあるのみ。全体的に手入れが行き届いていて、とても落ち着いた雰囲気だ。
さっそく身を清めた僕は、お風呂に浸かって体を温めることにしたのだけれど、すぐ側の窓からは大阪の街並みを眺めることができ、さらにひんやりとした夜風が程よく気持ちいい。
そこで一呼吸置いて、僕はいよいよサウナ室へと向かった。
「おっ、コンパクトで良いじゃないですか」
2段構造のベンチには、ストーブの位置の関係で物理的には3人までが座れるようになっていたが、この時は感染対策のために2人までの入室制限がかかっていた。といっても、浴場には僕しかおらず、貸切で贅沢な時間を味わえることは確約されていたのだが。
湿度は比較的低く、ストーブとベンチとの距離が近いため、体感温度は非常に高い。やや明るいサウナ室の中では余計な音が一切せず、終始無音の状態が続いた。そこでじっと蒸されていると、次第に心臓の鼓動が激しくなっていき、いつの間にか全身からは大量の汗が流れ出していた。
日頃、常にパソコンかスマートフォンを触ってインターネットに繋がり続ける生活をしている僕は、なにかしらの外部情報に意識が向いてしまい、なかなか自分自身と向き合う時間を取ることができなかった。すると、脳が休まらず、心に余裕がなくなってくるのだ。
だからこそ、このようなデジタルデトックスの機会は人間としての生存本能を維持するためには欠かせなくなった。あらゆる外部情報を遮断し、余計なことをなにも考えず、ただひたすらに自分とだけ向き合う大切な時間である。脳の緊張が解ける感覚。この非日常感を意図的に味わうようにすることで、日常が彩りのあるものになっていくのだろう。
ーーそろそろ出よう。
サウナ室を出た僕は、シャワーを頭からかぶり、そして勢いよく水風呂に肩まで浸かった。
ーー包み込まれるようだな。
体感で15℃程度と十分に冷たい水風呂は、上から覗き込むだけではわからなかったが、実際に入ってみると想像以上に深かった。バイブラはなく、自分のペースでゆっくりと呼吸をしながら30秒をカウントする。
火照った身体は徐々に鎮められていき、そして心臓の鼓動が落ち着いてきたところで僕は立ち上がり、先ほどのお風呂に浸かって窓から入り込む隙間風を再び感じた。
ーー僕はこれだけで満足なんだよな。
アムザのようなサウナは、それはそれでエンターテイメントとしての非日常感を味わうことができる。ただ、ヒラリーズのようなシンプルなサウナも、また別の意味での幸福を僕にもたらしてくれたのだった。
(written by ナオト:@bocci_naoto)
①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます