信用の連鎖【Smart Stay SHIZUKU 上野駅前@上野駅】
ありがたいことに、僕は独立後に自ら仕事をもらいに行ったことがない。基本的にはすべて知人からの紹介である。
僕自身、なぜこの状態を維持できているのかを考えたことがあるのだけれど、その結論はいたってシンプルだった。それは「信用を得ているから」だ。
モノも情報もコモディティ化している今の時代、抱えている課題を解決するための手段は溢れていて、どれを選んでも一定以上の満足度を得ることができてしまうのだ。その均一化している選択肢の中で自分を選んでもらうためには、「この人なら任せても後悔しないだろう」と信頼され、信用を得ることが重要なのだと思う。
それでいうと、誰でもWebないしSNSを通じて情報の受発信ができるようになった今の時代においては、「どのような口コミが書かれているのか」ということよりも「誰がその口コミを書いているのか」という発信者個人の信用度が重要視されつつあるように思う。一時期もてはやされた「インフルエンサー」という言葉も、その存在自体が懐疑的になり、「SNSアカウントのフォロワーが多い人」という意味から「信頼できる情報を発信している影響力のある人」という意味に変わってきているのが実情だ。
となると、もしかしたら令和時代における情報の取捨選択は、真実か虚構かではなく、納得感があるかどうかが基準になってきているような気がする。「この人が言うなら納得できる」「この人なら納得して任せられる」という感覚だ。要するに、「誰が発信したか」の重要性がより高まっているのではないかと思う。
そういえば、Twitterでさまざまなサウナ愛好家の先輩たちとコミュニケーションを取っていると、おすすめの店舗を紹介されることがある。そのどれも気になる店舗ばかりなのだけれど、たまたま個人的によく連絡を取り合うフォロワーさんから、こんなリプライをいただいたのだった。
SHIZUKUとは、上野駅から徒歩圏内にあるカプセルホテルのことで、実は僕個人も店舗の公式アカウントさんとは以前から相互フォローになっていたこともあり気になっていたのだ。しかも、今回は比較的連絡を取り合う頻度が高いフォロワーさんからの推薦ということもあって、この機会に伺うことを決めたのであった。
今日は1月25日(月)。天気は晴れ。絶好のサウナ日和である。僕は荷物をまとめて自宅を飛び出し、お昼の12時半ごろに上野駅に到着した。
サウナのおかげで、上野には本当によく来るようになった。「ドーミーイン上野・御徒町」に始まり、それから「上野ステーションホステル オリエンタル1」や、ドラマ『サ道』の舞台にもなっている「サウナ&カプセルホテル北欧」など、ここ最近で特に足を運んでいる気がする。
過去に伺った上野エリアにあるサウナのことを思い出しながら歩くこと約3分。今日の目的地が見えてきた。
「はじめまして」
SHIZUKUは2020年2月にオープンされたばかりの真新しいカプセルホテルで、日帰り入浴にも対応している。おそらく女性をターゲットにしていて、全体的に洗練された清潔感のあるホテルだ。
さっそく中に入ると、すぐ目の前に下駄箱が並んでいたのだけれど、明らかに主張の激しい番号がこちらになにかを訴えかけてきていた。さすがに少し躊躇ったものの、「せっかくなら」と利用させていただくことにした。その番号とは、もちろん「037(サウナ)」である。
若干照れながらも、その鍵をフロントでスタッフに渡して受付を済ませることに。今日はたまたま月曜日ということもあって、通常60分で税込700円のところ、それと同じ料金で90分滞在できる「湯ったりMonday」というキャンペーンが行われているようだった。もちろん利用しない手はない。
お会計は先払い制らしく、ロッカーキーを受け取って自動チェックイン機で700円を支払い、奥へと進んだ。
(SHIZUKU公式サイト: https://shizuku-hotel.jp/uenoekimae/service.html )
そのまま階段を降りれば浴場があるのだけれど、その手前に別の空間が広がっているようで、少し中を覗いてみた。
「ひろっ!」
ここは漫画が豊富に揃っているラウンジで、手入れが行き届いていて落ち着いて過ごすことができる休憩スペースになっていた。
並んでいる椅子に身を委ねてみたが、想像していたよりもふかふかで座り心地も抜群だ。奥には女性専用座席もあって、SHIZUKUのコンセプトが伝わってくる。
しかも、ここにはPC作業にうってつけの広々としたデスクまで設置されていた。そこではコンセントやWi-Fi、有線LANも利用できるので、コワーキングスペースとしての機能も十分だ。
今回はお得さに目が眩んで90分コースを選択してしまったが、ここまで充実しているのであれば、もっと長時間滞在できるコースを選択すればよかったと少し後悔した。
「では、行きますか」
(SHIZUKU公式サイト: https://shizuku-hotel.jp/uenoekimae/service.html )
ラウンジに気を取られてしまったが、今日の主役はもちろんサウナである。僕は浴場がある地下1階を目指して階段に向かったが、ここに設置されている棚には館内着が積まれていて、ここから自由に取っていいそうだ。
階段を降りると、その先にある廊下には自動販売機とベンチが並んでいて、湯上がりの簡易休憩スペースになっていた。
SHIZUKUの設備について一通り把握したところで、僕はすぐ脇にあるドアから脱衣所に入ったが、ここも明るく清潔感があり、快適に衣服の着脱ができる空間が広がっていた。タオルセットはあらかじめロッカーの中に用意されているので、そこに荷物をしまいつつタオルを握りしめ、いよいよ浴室への扉を開けた。
「お〜、なかなか綺麗だ!」
浴場はシンプルな造りになっていて、お風呂は1つのみ。そこにサウナ室と水風呂、そして十分な数のシャワーが並んでいた。
(SHIZUKU公式サイト: https://shizuku-hotel.jp/uenoekimae/spa.html )
まずは身を清めて、お風呂で体を温めてからサウナ室へと向かったのだが、ドアの前にはサウナマットのビート板とアルコール消毒用のスプレーまで用意してくださっている。
「では、いただきます」
SHIZUKUのホスピタリティに感心しつつ、僕はゆっくりとサウナ室のドアを開けた。
「めちゃめちゃ良いじゃないですか!」
サウナ室の中は6人程度が座ることができる広さで、コンパクトながらも窮屈さを感じない、むしろ安心感のある居心地の良い空間が広がっていた。
(SHIZUKU公式サイト: https://shizuku-hotel.jp/uenoekimae/spa.html )
「満天の湯」や「アスティル」、「スカイスパ」のような大きいサウナ室は、それはそれで伸び伸びと過ごすことができるので気持ちがいい。しかし、SHIZUKUほどの小さなサウナ室は、これもこれで落ち着いてリラックスしながら蒸されることができるのだ。さらに、ここは程よく薄暗くて無音なので、より一層サウナ特有の非日常感を味わうことができるのだった。
しかも、なんと先客はゼロ。つまり貸切である。そもそも浴場全体でも僕を含めて3人程度しかお客さんがおらず、サウナ利用者は僕しかいないようだった。やはりサウナに行くなら平日のお昼頃がベストである。
僕はさっそく2段構成の上段に腰を掛けて、サウナ室の仕様を確認した。温度は93℃と十分な熱さ。そしてサウナストーブの上にある反射板を見ると、その中心に妙な突起がついていることがわかった。
「もしや、これは……?」
その直後、僕の予感は的中した。その突起部分から水が流れ落ちてきたのである。そう、SHIZUKUのサウナストーブはオートロウリュつきなのだ。湿度はどんどん上昇し、それに伴い体感温度もいっきに上がっていった。このロウリュを独り占めだなんて贅沢すぎるぞ。
そのまま7分ほど蒸されていると、心臓の鼓動が徐々に激しくなっていった。
「そろそろ出よう」
僕は立ち上がり、サウナ室を出てすぐ隣にある水風呂に、全身の汗を流してから肩まで沈み込んだ。
「うおぉーーー! 冷たいっ!!」
(SHIZUKU公式サイト: https://shizuku-hotel.jp/uenoekimae/spa.html )
水温は13℃と、なかなかキンキンに冷やされている。そこまでの広さはないけれど、貸切状態なので肩までどっぷりと浸かることができるし、この水風呂も改良湯のように壁に囲まれている構造だからか、居心地がとても良い。バイブラも無いので、僕は静かにじっくりと羽衣を感じながら体を鎮めていった。
それから1分ほど経過し、徐々に心臓の鼓動が落ち着いてきたところで、僕は立ち上がってすぐ近くにある ”ととのい椅子” へと向かった。腰をかけ、大きく深呼吸。
「ふあぁーーー、最高だ」
浴場が地下にあるため外気浴はできないが、僕はこのように外の世界から隔離された空間でゆっくりと休む時間も好きなのである。
そのままそっと目を閉じ、全身を脱力させると、頭の中に散らばっていた思考が整理されていった。
ーー最終的に、みんな自分が信じたものから裏切られたくないだけなんだろうな……。
僕は今回、Twitterの大切なフォロワーさんの推薦を受けて、生活圏外にあるSHIZUKUへとわざわざ足を運んだ。その結果、とても満足度の高い時間を過ごすことができている。やはりあの人のことを信じてよかったのだ。きっと、あの人が他に薦めてくれるサウナも良いに違いない。
結局、僕はさらに2セット、合計3セットをほぼ貸切状態でいただいて、多幸感に包まれた90分間を過ごしたのだった。
信用は、実績の上に成り立つ。僕自身も自分が発信する情報に責任を持たなければいけないと思いつつ、今日も誰かに向けて『#連続サウナ小説』を届けている。
(written by ナオト:@bocci_naoto)
YouTube「ボッチトーキョー」
https://www.youtube.com/channel/UCOXI5aYTX7BiSlTt3Z9Y0aQ