見出し画像

父の選択

「あの時、あっちを選択をしていればよかったなと思うことない?」

8月10日。父と母と私で夕飯を囲んでいる時に、そう父が言った。

父は寡黙であまり喋らない。

ご飯中は大体、
母と私が趣味や最近の出来事で盛り上がり、
それを聞いているのか聞いていないのかわからないほどの表情で黙々とご飯を食べすすめているのが日常だった。

そんな父が急に言ったから、驚いてしまった。

「なにか後悔していることでもあるの?」
私が聞くと父は、

「いやあ、もし20歳の時に戻れたら
こっちを選んでいたらどうなっていたのかっていうのを知りたいんだよね」

と言った。

ちなみに、母は父と全く逆の考えであり、

「私は人生に全く後悔ないよ、だって全部自分で決めてきたんだもん」

こう言うと父は後悔しないことなんて絶対にない!と言い張る。

高卒で母と出会った会社に入社したことや、子供を5人育てたことに後悔をしているのかなと私はなんだか少し悲しくなってしまった。

「選択肢の選ばなかった方を見てみたい、
そっちを選んでいればどうなったのかただそれを見たいだけなんだよ。」

思わず、「お父さん、それは…」と声がでた。

確かに、人生には大切なポイントで必ず選択肢がある。
でも、父が選んだ選択のおかげで、私の母が母で、兄がいて、私がいて、
何不自由なく幸せに育ててもらった。
どれか一つでも違う方を選んでいれば、目の前の景色なんてなかったのだ。だからそんな無神経なことをいった父に少し言い返したくなった。

「お父さん、お父さんの人生はもう一人の人生じゃないんだよ。
私は結婚してないし、子供もいないから、過去の選択を変えても、特に影響はないし、またその道を歩くだけだと思う。
けどお父さんは今まで選んできた選択の積み重ねで、お母さんがいて、お兄ちゃん達がいて、私がいるじゃん。お父さんの選択で、命があって今家族6人を幸せにしていることを忘れないでね。」

そういうと少し驚いたような表情で深く頷いていた。すると父は、

「いまのこの選択を捨ててまで、もう一つの選択を選びたいわけじゃない、選ばなかったほうの結末を見てみたいだけだ」と。

なんだか安心した。
少しこの話題で盛り上がりすぎて、何時間も討論会みたいになっていたが
いまの選択肢を捨てたくない。とその後も何度か言っていた。

それは、私にとって今の人生に後悔していないと遠回しに聞こえた。

父は小さな頃からすごく苦労をしていた。
でもその苦労を乗り越えるために努力をし続けて、
いまは立派な私の「お父さん」なのだ。
誰にも自慢したくなるようなお父さんなのだ。

選択が正しかったかなんて、両方を一緒に選べないのだから誰にもわからない。
その選択が良かったと思えるように自分で変えていくしかないと思う。

ところで、父が何の選択の話をしているのかは最後まで教えてくれなかった…。



最後に。
これは本当にあった会話ですべて実話です。
ちなみに私は過去に戻ってやり直せるよと言われても絶対に過去には戻らない派です。笑
父は女性関係の選択じゃないからねと強く言っていました。(安心)笑


父を幸せにする番が娘にやってきたなと思った会話でした☺️

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?