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北欧映画と本

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ゆっくり、長く歩くこと

ゆっくり、長く歩くこと

北欧文学ブックレビュー No.1

『歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を生きる術』トマス・エスペダル著 枇谷玲子訳 

評者 山下泰春
 
 酔い潰れて終着駅まで送られたことがある人なら分かるだろうが、深夜にそこから歩いて自宅まで帰るときほど惨めで孤独で、しかし自由な時間は存在しない。スマートフォンの充電も底を突き、タクシーを呼べるほどの金もなかった私だったが、幸いにも歩いて一時間半ほど

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北欧映画3作品紹介

北欧映画3作品紹介

北欧好きの皆さんは、北欧好きのままで変わりはないと思います。
さて、すでに公開されているものも含めて鑑賞をお勧めしたい北欧映画を紹介します。

『たちあがる女』(アイスランド映画)
養子縁組が成立してウクライナからの養子を授かる事になった女性が、環境に悪影響をあたえるアルミ工場と戦うという話。

余談)予告編をみると合唱団の映像がでてきます。北欧映画には主人公が合唱団に関わるという設定がよく出てき

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北欧映画が目白押し。

北欧映画が目白押し。

『特捜部Q-カルテ64』
デンマークの人気ミステリー小説を映画化した第4作目。すでに観賞しましたが、本作はシリーズの傑作の呼び声が高い仕上がりです。1960年代のデンマーク社会の闇をテーマにした作品で、非常に説得力があり見ようによっては非常に味わい深い余韻に浸ることもあるでしょう。

『ウトヤ島、7月22日』
ノルウェー映画。2011年7月22日に起きたノルウェーのウトヤ島で起きた、若者が集まる政

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パルムドール賞を受賞した北欧映画をチェック

パルムドール賞を受賞した北欧映画をチェック

是枝監督はカンヌ映画際でグランプリに当たる「パルムドール賞」を受賞しました。
昨年は現在日本でも公開中のスウェーデン監督リューベン・オストルンドの「「ザ・スクエア 思いやりの聖域」が受賞しています。ちょっと気になって北欧のカンヌ映画際グランプリ受賞作を調べて見ると以下のようでした。

1946年
「もだえ」

監督アルフ・シェーベルイ
製作国: スウェーデン

「地球は赤くなる」
監督ボディル・イ

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フィンランド映画『白夜のタンゴ』

フィンランド映画『白夜のタンゴ』

不思議な映画を観ました。

あのアキ・カウリスマスキ監督がでてきて、「タンゴはフィンランドで生まれたんだ」とフィンランドタンゴ起源説をとうとう説明するシーンから始まります。
カメラはすぐにパンして、アンルゼンチトンのブエノスアイレスが映し出されます。タンゴを愛するミュージシャンが次々でてきて、「そんなことあるか。タンゴはアルゼンチンだ」と言い張ります。
そのうちの3人は、うんじゃ確かめに行こう、と

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スウェーデン映画『エヴァとステファンのすてきな家族』

スウェーデン映画『エヴァとステファンのすてきな家族』



出演 : エンマ・サミュエルソン/サム・ケッセル/リーサ・リンドグレン
監督 : ルーカス・ムーディソン https://www.bitters.co.jp/moodysson/index.html
配給元 : ビターズエンド

スウェーデン人の半分が観たという映画
「ショー・ミー・ラヴ」でデビューした、スウェーデンを代表する若手映画監督の一人、ルーカス・ムーディソンの第二作。前作と同様、本作

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デンマーク映画 『フォーリンフィールズ』

デンマーク映画 『フォーリンフィールズ』

主演 : 1985年のデンマーク映画『ペレ』で主役を演じたペレ・へウネゴー
監督 : オーエ・ロイス

若いデンマーク人兵士ヤコブは、国連部隊のPKOでボスニア行きを命ぜられる。射撃の腕はすこぶるよかったが、実際の戦地では小競り合いにもかかわらずビビってしまい、ホルト軍曹に窮地を救われる。

休暇のある日、ヤコブはホルトから同行を誘われる。ついてゆくと、それは戦争とは関係のない「セルビアン人狩りツ

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スウェーデン映画 『太陽の誘い』

スウェーデン映画 『太陽の誘い』

失意の女性を救った不器用な男の愛と祖国スウェーデンのきらめく夏

監督・脚本 : コリン・ナトリー
出演 : ロルフ・ラスゴー、ヘレーナ・ペリストレム
スウェーデン映画 : 118分
写真提供 : アルシネテラン

誰しも、生きていて自らのアイデンティティに揺らぎを覚えることは一度や二度ではないと思う。自分が足下から消え入ってしまいそうな不安を覚えるのだ。そんな自分を早く取り戻すための特効薬は、立

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『ヒトラーの忘れもの』をめぐる歴史的背景

『ヒトラーの忘れもの』をめぐる歴史的背景

『ヒトラーの忘れもの』は2016年末に話題になったデンマークの映画です。

DVD化されレンタルシショップにもでたのを借りようと思っています。観る前にちょっと予告編でも観ておこうかと思って、映画の公式ページを開け「歴史的背景」のタグをクリックしたら、古屋先生の文章が出て、読み始めたらとまらなくなりました。幸福の国デンマークの歴史のダークサイドががいかに生まれたのかが分かります。そして、戦争は嫌だな

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デンマーク映画「きっと、いい日が待っている」

デンマーク映画「きっと、いい日が待っている」

孤児院に入った兄弟の過酷な生活を描いた映画です。
私自身は未見ですが、ツイッターの観賞後の呟きを見るとタイトルから想像するイメージとは裏腹に、「重い」「エグい」などの言葉が見られます。そういう感想を書く人は、多分、デンマーク映画を初めて見た人ではないかと想像しています。

デンマーク映画を初めて見る人は「デンマーク映画を観賞した」のではなく「デンマーク映画を体験した」という感じになっていて、観賞直

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