蝶子

胡蝶の夢、夢幻の月。この世の果て、花天月地。

蝶子

胡蝶の夢、夢幻の月。この世の果て、花天月地。

記事一覧

読書のそのあとで。

君が消えてしまっても、君への想いは僕の中に残るのに、君の僕への想いはどこへ行ってしまうのだろう。 そもそも心とはどこに在る?脳の中か、それとも魂の中なのか。心と…

蝶子
7年前
5

読書のそのあとで。

向田邦子さま 先生、お探しの手袋は見つかりましたか?それとも、次の世で探す宿題となさったのでしょうか? 私は靴を探しております。ヒールは7cm、赤いエナメル。ど…

蝶子
8年前
4

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

いいかい、良くお聞き。 眠りの中、お前が憎からず思う者の声で、後ろから名前を呼ばれても、決して返事をしてはいけない。ましてや、振り返ったりしたら、お前は囚われて…

蝶子
8年前
3

読書のそのあとで。

唇から紡ぎ大気を震わす、耳に届く言葉だけが、ふたりの言語じゃない。 触れる唇、絡める指先、繋ぎ合う身体。声に出さず語らう、愛を。 くちづける、魂に触れるほど深く…

蝶子
8年前
1

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

星がめぐる微かな音のする、真夜中。 囚われたのは、私なのか、あなたなのか。 いにしえ、月の女神は穢土に棲まう男に恋をした。生まれては必ず死するさだめの人間の男に…

蝶子
8年前
3

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

ゆらり、 大気が揺らぐ。 婀娜めきながら、篭る熱に陽炎が立つ。 震えるたびに形を失くす曖昧な輪郭は、何人も触れることを許さない。 呼ぶたび舌に甘い、真名。 それ…

蝶子
8年前
1

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

蜉蝣のように儚げでありながら、私が死しても尚、世界の頂点に君臨する不死の民。この世に一人残され、孤独に生きることを宿星とした、尽きるを知らぬ生命。 どこまでも道…

蝶子
8年前
2

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

秘密の呪文を教えよう。 そっと、盈月の晩に唱えてみるといい。 どうぞ、我を狼男にさせたまえ 男を食べる者にさせたまえ 女を食べる者にさせたまえ 子供を食べる者に…

蝶子
8年前
2

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

うつおのふねで、構わない。それ以上は身にあまる。 この世のすべてが等価交換ならば、僕には等しく差し出せる対価が無い。 君の想いと釣り合うだけのものが、僕にはこの…

蝶子
8年前
2

読書のそのあとで。

愛情と愛憎の境界で往くことも還ることも、堕ちることも踏み止まることも出来ない。 心は身体に殉ずるのか、身体は心に殉ずるのか教えて欲しい。 齎される苦痛はこの上な…

蝶子
8年前
4

読書のそのあとで。

今よりずっと若い頃、『愛情』とは狂気の一種類だと思っていた。でも、本当はそうじゃないことを、今では知っている。 『愛情』は狂気そのものであり、そこから派生する様…

蝶子
8年前
3

読書のそのあとで。

道ならぬ恋でも、人でなしの恋でも、溺れている間はしあわせなのだ。よそから見たら、ひどい有様でも。 しあわせの形は、人それぞれ。どう思われようが、どう見えていよう…

蝶子
8年前
3

こことは別のところで頂いた『切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒』という一文が、ずっと頭から離れないでいます。ここから連想される世界の断片を、言葉にしてみるのもいいかなと思っています。

蝶子
8年前
1

真空管や基盤を眺めていると、波立つ心が静かになります。
この見た目も、真空管という名前も大好きです。

蝶子
8年前
2

色彩雫、月夜。

蝶子
8年前

読書のそのあとで。

君が消えてしまっても、君への想いは僕の中に残るのに、君の僕への想いはどこへ行ってしまうのだろう。

そもそも心とはどこに在る?脳の中か、それとも魂の中なのか。心と魂、君が望んだのはどっちだ。

聞かせて欲しかった、君の言葉の続きを。

『死者の帝国』伊藤計劃+円城塔 著 読了

読書のそのあとで。

向田邦子さま

先生、お探しの手袋は見つかりましたか?それとも、次の世で探す宿題となさったのでしょうか?

私は靴を探しております。ヒールは7cm、赤いエナメル。どんな荒野も嵐も怯まず進む、私だけの靴を。かりそめに妥協せず探し続けます。

向田邦子著 『夜中の薔薇』再:読了。

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

いいかい、良くお聞き。

眠りの中、お前が憎からず思う者の声で、後ろから名前を呼ばれても、決して返事をしてはいけない。ましてや、振り返ったりしたら、お前は囚われて二度と戻っては来れない。

いいね、忘れてはいけないよ。大人になっても、眠る前には必ず、私が教えた事を思い出すんだよ。

子供の頃に、そう教えてくれたのは、母だったのか祖母だったのか、今ではもう覚えてはいない。

繰り返し繰り返し、教えら

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読書のそのあとで。

唇から紡ぎ大気を震わす、耳に届く言葉だけが、ふたりの言語じゃない。

触れる唇、絡める指先、繋ぎ合う身体。声に出さず語らう、愛を。

くちづける、魂に触れるほど深く深く。

教えて、この恋が終わるまでに私とあなたは何と何を失くせるのかを。

久世光彦 著 『飲食男女』 読了。

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

星がめぐる微かな音のする、真夜中。

囚われたのは、私なのか、あなたなのか。

いにしえ、月の女神は穢土に棲まう男に恋をした。生まれては必ず死するさだめの人間の男に。

嘆く女神は希う、老いるを知らず死ぬるを知らぬ永のいのちを。

そうして男は繋がれた。

永遠のいのちと永遠の眠り、朽ちることも果てることも許されない抜け殻となって。

女神は夜ごと訪れる、愛しい男の眠る場所。折り重なる互いの熱を、

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切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

ゆらり、

大気が揺らぐ。

婀娜めきながら、篭る熱に陽炎が立つ。

震えるたびに形を失くす曖昧な輪郭は、何人も触れることを許さない。

呼ぶたび舌に甘い、真名。

それが、快楽の名前。

目を開けたまま見る、夢の具現。

追いかけても届かない、光ほのめく、偽りの焔(ほむら)。

切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

蜉蝣のように儚げでありながら、私が死しても尚、世界の頂点に君臨する不死の民。この世に一人残され、孤独に生きることを宿星とした、尽きるを知らぬ生命。

どこまでも道連れに出来るのならば、この身の内から引き裂かれるような、痛みにも似た感情から逃れられるのだろうか。

どうぞ、我を狼男にさせたまえ

男を食べる者にさせたまえ

女を食べる者にさせたまえ

子供を食べる者にさせたまえ

どうぞ、血を恵みた

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切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

秘密の呪文を教えよう。

そっと、盈月の晩に唱えてみるといい。

どうぞ、我を狼男にさせたまえ

男を食べる者にさせたまえ

女を食べる者にさせたまえ

子供を食べる者にさせたまえ

どうぞ、血を恵みたまえ、人の血を恵みたまえ

どうぞ、今夜それを恵みたまえ

偉大な狼の霊よ

我が心、我が身体、我が魂をすべて捧げよう…

煌々と輝く十五番目の月の許、狗の名残りの歯は鋭い牙となり、指先からは柔らか

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切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

うつおのふねで、構わない。それ以上は身にあまる。

この世のすべてが等価交換ならば、僕には等しく差し出せる対価が無い。

君の想いと釣り合うだけのものが、僕にはこの命以外に無い。

欲しいものならばある。

決して言葉になど出来はしないのだから、気づかなければ良かった。目を瞑り、耳を塞ぎ、心を鎖してしまえば、或いは、今まで通り幸せなままでいられたのかもしれない。

それでも、

僕には、欲しいもの

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読書のそのあとで。

愛情と愛憎の境界で往くことも還ることも、堕ちることも踏み止まることも出来ない。

心は身体に殉ずるのか、身体は心に殉ずるのか教えて欲しい。

齎される苦痛はこの上なく甘いのですから。

若合春侑著『腦病院へまゐります。』読了。

読書のそのあとで。

今よりずっと若い頃、『愛情』とは狂気の一種類だと思っていた。でも、本当はそうじゃないことを、今では知っている。

『愛情』は狂気そのものであり、そこから派生する様々はひとを殺める凶器となり得る。狂うほどに甘美なのだ、蕩けるくらいに。

山田詠美著『ジェントルマン』読了。

読書のそのあとで。

道ならぬ恋でも、人でなしの恋でも、溺れている間はしあわせなのだ。よそから見たら、ひどい有様でも。

しあわせの形は、人それぞれ。どう思われようが、どう見えていようが、自分のしあわせは自分にしか分からない。

皆川博子著『妖恋』読了。

こことは別のところで頂いた『切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒』という一文が、ずっと頭から離れないでいます。ここから連想される世界の断片を、言葉にしてみるのもいいかなと思っています。

真空管や基盤を眺めていると、波立つ心が静かになります。
この見た目も、真空管という名前も大好きです。

色彩雫、月夜。