切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。

ゆらり、

大気が揺らぐ。

婀娜めきながら、篭る熱に陽炎が立つ。

震えるたびに形を失くす曖昧な輪郭は、何人も触れることを許さない。

呼ぶたび舌に甘い、真名。

それが、快楽の名前。

目を開けたまま見る、夢の具現。

追いかけても届かない、光ほのめく、偽りの焔(ほむら)。

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