切なくて美しいその世界は、限りなく青に近い黒。
蜉蝣のように儚げでありながら、私が死しても尚、世界の頂点に君臨する不死の民。この世に一人残され、孤独に生きることを宿星とした、尽きるを知らぬ生命。
どこまでも道連れに出来るのならば、この身の内から引き裂かれるような、痛みにも似た感情から逃れられるのだろうか。
どうぞ、我を狼男にさせたまえ
男を食べる者にさせたまえ
女を食べる者にさせたまえ
子供を食べる者にさせたまえ
どうぞ、血を恵みたまえ、人の血を恵みたまえ
どうぞ、今夜それを恵みたまえ
偉大な狼の霊よ
わが心、わが身体、わが魂をすべて捧げよう
窓の外には、見事な紅蓮の望月。
この心に永劫消えない傷痕をつける、刃のような情愛。
我が身と魂を捧げたのは、世にも艶冶なひとかた。
真夜中に愛を説く、麗しき狼月。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?