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鳥にも心を驚かせる朝《140字の日記+ 23》

明けがたに眠りがあさくなり、浴びるような小鳥のさえずりをききました。平成最後の夏に平成最悪となったあの連日の豪雨は確実に遠ざかっていることを、ふとしたことで感じます。しかし、沖縄には目のくっきりした巨大な台風が。こにちらにまで来ないとしても、まだ続きがあるのか、と暗澹とします。

 

《140字の日記》のマガジンもあります。
https://note.mu/beabamboo/m/m855ee9417844

 

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 昨日も今日も、ふつうに洗濯物を干すことができました。ふとんを干しただけでなく、シーツも全部、洗って干すことができました。

 朝は小鳥の声で目覚めました。こんなことで幸せを感じるくらい、あの大雨の1週間は、「あたりまえ」が遠ざかっていたことを感じます。

 

 かつて「春望」を読んだとき、啼く鳥の声にはっとし、咲く花の色に涙をこぼした杜甫に、「杜甫、いったいどんだけ~!」と感じた五百蔵ですが、いまは「杜甫、こんだけやったんか……」と、かみしめています。

 

 大風によって軒先に迫るほどにしなり、撓んでいた青竹が、夏の太陽に照りつけられて、静かにすっくりと立っています。椿の藪ではめじろが無心に囀っています。あたりまえすぎて涙が出ます。

 あの1週間、毎日のように、朝起きて、今日もまた灰色の雲が重く垂れこめているのを確かめて、雨が降り、風が吹くことの予期に脅え、降れば降った、吹けば吹いたで、いまにもなにかが起こるのではないかと怯え、自分では泰然自若とかまえていたつもりだったのに、じつは、おびえていなかった瞬間など一瞬たりともなかった。そういえば横になっている間も、強まる雨足、荒ぶ風に、まんじりとできなくなってたっけ。

 

 今また、追いうちをかけるように、沖縄に大きな台風が迫っています。その台風が異様なまでにくっきりとまるい目をしているのを見ただけで、蝕むように安全をおびやかされていた恐怖がよみがえり、精神が確かさを失うのを感じます。

 くやしいですが、あの雨は、五百蔵の身の回りには、目に見える破壊こそおよぼさなかったけれども、五百蔵の心には確実に破壊をもたらしていた。
 しかたないので、きょうはなんかのときにもらった安定剤の残りでも探して飲んでしのぎます。

 

・◇・◇・◇・

 

 失われた「もの」に対しては「もの」の支援が必要ですが、平安を失った「こころ」には「こころ」を届けるしかありません。

 傷つき困窮しているだれかを思って、いてもたってもいられなくなって、
 自らの所有する「もの」を分かち合うのもひとつの志で、
 ことばやかたちに置き換えて「こころ」を届けるのもまた志です。

 

 たとえ迷惑行為になってしまったとしても、
 そうやって「いてもたってもいられない」思いを、具体的な物や行動に移しかえたいと望むひとが多い世の中がいい世の中に決まっている。

 ただし、現状ではまだ、膨大な「いてもたってもいられない」思いを、上手に交通整理することができていないから、思わぬところで渋滞をおこして、ちいさな親切が大きなお世話になってしまうときがあるんですけどね。

 

 それでも、
 躊躇するくらいなら、
 いまできることを、なにか。

 ちいさなことでいいから、調べて、動け。知恵を出せ。

 そしてつぎには、より賢く動けるようになることを目指せばいい。

  

 だって、
 困っているだれかを思って、

 「いてもたってもいられなくなる」ことは人間の本質だし、
 「いてもたってもいられない」思いを伝えたくなるのも人間の本質で、

 だけど、「いてもたってもいられない」思いは、
 動きや物のかたちをとらねば届かないのだから。

 

 「いてもたってもいられない」はどうしてもとまらないものだから、
 強い禁止の言葉でコントロールしようとするよりも、
 上手に流して回していく知恵を出してあっていく方が、たぶん、いい。

 

・◇・◇・◇・

 

 だけど。

 五百蔵とおなじように、
 終わりの見えない風雨の轟きに心だけ壊されて立ち往生しているあなた。

 あなたには、お金や物のかたちをした「いてもたってもいられない」思いは届かない。
 だから、このメロディーをお薬がわりに届けます。

 わたし自身の「いてもたってもいられない」思いを込めて。

いま、病気で家にいるので、長い記事がかけてます。 だけど、収入がありません。お金をもらえると、すこし元気になります。 健康になって仕事を始めたら、収入には困りませんが、ものを書く余裕がなくなるかと思うと、ふくざつな心境です。