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2020年5月の記事一覧

100年前の随筆を読む。I read a essay written 100 years ago.

「子猫」という題名の随筆を寺田虎彦(物理学者・随筆家)は今から約百年前(大正時代)に書いています。あなたも一読すればわかりますが、どこか懐かしい匂いが漂う(旧仮名遣いを除けば)それでいて古さを感じさせない随筆です。その内容は令和時代を生きる愛猫家たちの心情を代弁しているといってもいいほどです。寺田は「子猫」を以下のように結んでいます。

「私は猫に対して感ずるやうな純粋な温かい愛情を人間に対して懐

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「何が起こる?」 "What happens?"

『ストッキング』(村上春樹著)という超短編が好きです。『夜のくもざる』(単行本は平凡社刊/文庫本は新潮社刊)に収められています。ちなみに新潮文庫のカバー裏の紹介文には「ストッキング」は「読者が参加する小説」と書かれています。「よろしいですか、想像してみてください。」から始まり「十五秒で答えてください。ちくたくちくたく。」で終わります。文庫本では158頁から164頁までです(そのうちの162頁から1

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人よ、変われ!滅びる前に。People, change! Before it perishes.

あなたは山本義隆さんを知っていますか? ある人にとっては元学生運動家として、ある人にとっては物理の予備校講師として、ある人にとっては科学史の作家として、ある人にとっては原発や世の中に対して警鐘を鳴らす知識人として、知られています。

1960年代後半。少年の私がテレビを見ているとNHKの定時ニュースが流れました。アナウンサーの「内ゲバで大学生が死傷した」という声で、私は画面を見ます。驚きもせず、い

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トニーは孤独を教えてくれる。Tony teaches loneliness.

『トニー滝谷』(村上春樹著)という短編が好きです。『レキシントンの幽霊』(文藝春秋刊)に収められています。

そのタイトルが、まず好きです。トニーはハーフではなくて、日本人です。では、なぜ「トニー」という名に? 

物語は、トニーの父親の省三郎から始まり、トニーの圧倒的な孤独で終わります。トニーは常にスマートでクールで、そして孤独です。孤独とは何か?

トニーは、その人生の中で愛を得て、一旦は孤独

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完璧な文章などといったものは存在しない。    There's no such thing a perfect piece of writing.

『風の歌を聴け』(村上春樹著)の冒頭です。noteを書く私の背中を押してくれる言葉です。

そして、この言葉は「完璧な絶望が存在しないようにね。」と続きます。

私は、明日への出口が見つからず、絶望が迫ったとき、呪文のように唱えます。この言葉は私の心を守ってくれます。

完璧な絶望が存在しないと信じることができるなら、希望がどこかに発見できるはずです。諦めずに探せば必ず出口はある…。

小説は精神安定剤になり得るか? Can a novel be a tranquilizer?

「小説は精神安定剤になり得るか?」という自問には「小説による」と自答することになります。もちろん「私という読者ならば」という大前提がありますが。

たとえば『雪沼とその周辺』(堀江敏幸著)。特に事件というか、何かが起こるわけでもなく、物語は静かに進んでいきます。読者は、そこで暮らす住民のように頁をめくります。このとき、読者は精神が不安定なので、ゆっくりと読み進めたいものです。

むかし住んだことが

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汽車は闇を抜けて光りの海へ…。The train goes through the darkness to the sea of light….

汽車は闇を抜けて光りの海へ…。The train goes through the darkness to the sea of light….

私を構成する5つのマンガは『銀河鉄道999』『あしたのジョー』『妖怪人間ベム』『童夢』『ストップ!!ひばりくん!』です。順番には特に意味はありません。念のため。

もちろん思いつくままに並べてみれば、ルパン三世、タイガーマスク、サスケ、AKIRA、ベルサイユのばら、天空の城ラピュタ、ブラックジャック、ゴルゴ13、リボンの騎士、火垂るの墓、オバQ、ドラえもん、アンパンマン、ゲゲゲ(墓場)の鬼太郎、気

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