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この一日を生き抜け―映画『シングルマン』

この一日を生き抜け―映画『シングルマン』

 1962年、キューバ危機下のアメリカは核攻撃まで秒読み段階とも言われるきわめて緊迫した情勢に置かれ、不安に覆われていた。トム・フォードの初監督作品となった映画『シングルマン』は、その年のロサンゼルスを舞台に、ある男の一日を描いている。

 大学教授であるジョージは、8カ月前に最愛の恋人ジムを交通事故で失って以来、喪失感から立ち直れずにいた。たった一人の理解者であり、自分の半身だったジム。彼なしで

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数千倍の死、数千倍の血―映画『ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い』

数千倍の死、数千倍の血―映画『ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い』

 ウクライナで起こったマイダン革命のドキュメンタリー映画『ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い』を見た。2013年11月、EUとの協定に署名しなかったヤヌコーヴィチ政権に対し抗議するために始まったデモが大規模な反政府運動となり、93日間に渡って続く中で、死者125人、行方不明者65人、負傷者1,890人もの犠牲を出し、大統領辞任によって終結するまでをカメラがとらえたものだ。

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木綿豆腐と牛乳の味―映画『オアシス』

木綿豆腐と牛乳の味―映画『オアシス』

 最近、木綿豆腐が好きだ。子どもの頃からの食わず嫌いで絹ごし豆腐しか食べなかったのだけれど、数日前にうっかり絹ごしと間違えて木綿の豆腐を買ってしまった。
 捨てるのももったいないので、仕方なく味噌汁に入れて食べてみたら、それが思いのほか美味しかった。それまではもそもそしていて味気ないとしか思っていなかったのに、感動して思わず三日連続で食べた。

 そう言えば韓国映画にも、よく木綿豆腐が出てくる。韓

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天国の話をしよう―映画『Matterhorn』

天国の話をしよう―映画『Matterhorn』

「キリスト者は、平安の保証によるよりも、むしろ多くの苦しみによって天国に入ることを信じなければならない」

 今から505年前の1517年、マルティン・ルターは贖宥状(免罪符)を販売するローマカトリック教会に対して95ヶ条に及ぶ批判を書き連ね、最後の1ヶ条をこう締めくくった。

 ルターは、そもそも従来の教会が言うような「生きている間に善行を積んだ人間が救われる」と言う話さえありえないのだと説く。

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あの日の既読スルーと、桜桃の味

あの日の既読スルーと、桜桃の味

 数年前の冬、友人から届いたLINEのメッセージを、ずっと既読スルーのままにしてしまっている。実を言うと、それ以来LINEはアプリ自体開いていないし、新しいスマホにはインストールしてすらいない。

「ジョンヒョンのニュース、見た?泣」

 メッセージはそれだけだった。お互いK-POP好きだったから、衝撃的な報せを見て、思わずLINEをしてきたんだろう。彼女は何も悪くない。
 返事ができなかったのは

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恥ずかしい体なんてない

恥ずかしい体なんてない

 高校時代、すらっとした細身で可愛らしい顔をした友人が、さっきまで話していたクラスメイトの後ろ姿を指差して、顔をしかめた。 

「見て、あの子、太ももと太ももがべたーってくっ付いてるの。気持ち悪い」 

 私は、中学時代の自分もあのくらい太っていたとはとても言えず、気まずい思いで笑うしかなかった。

 思春期を過ぎてからこれまでずっと、ストレスで太ったり、無茶なダイエットで痩せたりを繰り返しながら

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ある路上生活者の一生

ある路上生活者の一生

 2013年の二月、ある路上生活者の男が、テキサス州オースティンの貯水池の浅瀬で溺れて死んでいるのが見つかった。

 1959年にカリフォルニアで生まれたその男は、17歳で海軍に入り、日本で船に乗っていた。しかし、そのうち無許可で離隊して軍法会議にかけられ、軍をクビになってしまった。

 その後の人生をどう送ったのかは明らかでないが、53歳の頃にはテキサスに流れ着き、移動遊園地で大道芸人として働い

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