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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】分離症・すべり症と鍼灸

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。
いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

今回、取り上げるテーマは『分離症・すべり症』です。

腰痛といえば中高年が抱える身体の不調と思われがちですが、最近は小・中学生などの若年層にも腰痛の訴えが広がっています。
特に若年層の腰痛は、日ごろからスポーツに親しみ、部活動を毎日欠かさずおこなっているような場合によくおこり、整形外科では、「分離症・すべり症」と診断がされるケースが多いそうです。

そこで今回は、「分離症・すべり症」はどうして起こるのか、その原因と治療方法について西洋医学・東洋医学の両面からみていきます。
なお、本編の中では、分離症・すべり症の症状に対する鍼灸によるアプローチについてもご紹介していきます。

1.分離症とは

からだを支える背骨は、たくさんの椎骨と呼ばれる骨が積み木のように積み重なっていて、通常では簡単にずれることはありません。
その椎骨の突起部分が本体部分から分離してしまい、腰痛などの症状をひきおこす疾患を分離症、正式には「脊椎分離症」といいます。
その多くは、幼少期の過度のスポーツ活動によって椎骨にひびが入ったり、疲労骨折が起きることが原因といわれていて、ジャンプや腰の回転など背骨に負荷のかかる運動を長く繰り返して行うことで起こります。
そのため、一般の人よりもスポーツ選手に多く見られます。
脊椎分離症は多くは10代で発症します。
脊椎分離症の状態が放置されると、分離した部分の安定性が失われるため徐々に上下の骨が正常な位置からずれていき、分離すべり症に進行していく場合があります。

2.すべり症とは

次に、すべり症ですが、先に紹介をしたような脊椎分離症を主なきっかけとして、椎骨にずれが生じてしまい、結果、脊髄神経の圧迫がおこり、痛みやしびれなをひきおこします。
この状態をすべり症、正式には「脊椎すべり症」といいます。

脊椎すべり症は、原因となる背骨の状態によって大きくふたつに分かれます。

①分離すべり症:
脊椎分離症に伴って起こるすべり症です。10代からみられます。
②変性すべり症:
若年層ではなく、中高年に多くみられます。
加齢に伴う椎骨や椎間板などの変性によって起こるすべり症です。

脊椎すべり症になると、腰痛や座骨神経痛に悩まされ、立ちっぱなしの状態やある程度の距離を歩いた時に足にしびれや痛みが出るようになります。
また、しばらくしゃがんだり座ったりして休むと再び歩けるようになる、いわゆる間欠性跛行といった症状が出やすくなるのも特徴です。
そのほか、下肢のしびれや麻痺、尿の出が悪くなるなどの症状がでることもあります。

似たような症状の出る他の疾患には、脊柱管狭窄症や下肢の閉塞性動脈硬化症などがあります。

3.西洋医学によるアプローチ

病院では、ほとんどの場合には、整形外科が受診先となります。
整形外科では、まず検査を行い、それにより分離症・すべり症であるという診断がおります。

3-1.検査

レントゲン写真、MRI、CTなどの画像検査を行い、椎骨の状態、ひび、骨折、ずれ具合を確認します。
CT、MRIでは、さらに細かく、神経の圧迫の程度を確認します。

3-2.治療

強い痛みや障害がなく日常生活を送ることができる場合には、保存的治療が一般的です。
ひびや骨折が早く治癒するように、コルセットを使用したりして、骨の癒合を確認した後に腰を支える筋肉を鍛えるためにリハビリテーション療法を行います。
痛みの緩和に対しては、服薬のほか、注射による神経ブロック療法が行われることもあります。
また、日常生活や仕事に支障が出るようなの痛みが出る場合には、外科的処置として、神経の圧迫を除去する手術や固定術が行われることもあります。

4.鍼灸によるアプローチ

「分離症・分離すべり症の症状は、整形外科の温存治療、リハビリテーションだけでなく、鍼灸による治療も可能なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、分離症・分離すべり症の諸症状も鍼灸によるアプローチが対応可能な症状の一つです。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

整形外科を受診しながら、鍼灸治療を併用していくことで、
・初期の痛みを緩和する
・組織の回復修復を早め、骨を癒合しやすくする
・リハビリテーションが終わった後の慢性的な腰痛、しびれ、違和感の緩和
といったような効果が期待できます。

また、分離症・分離すべり症になってしまったことで、スポーツ自体を一定期間休まないといけないことから、早く治りたいという気持ちや本当に治るのだろうか、という不安感、焦り感、イライラ感がおこりがちです。
こうした精神面の不安定さが続くと、眠りが浅くなり身体の完全な休息を妨げることから、組織の回復、治癒を遅らせることにつながります。
鍼灸では、分離症・分離すべり症の症状自体だけでなく、こういった精神的な部分についても、同時に治療をしていくことが可能です。

鍼灸施術による分離症・すべり症の治し方は「症状が起こっている根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって、分離症・すべり症の症状を取り除くとともに、分離症・すべり症の症状をおこさない身体づくりをしていきます。

東洋医学的には、「季候、食事、疲労、ストレスなど、何らかの原因で、体内循環が停滞、または身体を十分に栄養することができないために、分離症・すべり症の症状がひきおこされる」と考えて治療にあたります。

なお、鍼をする前には、あらかじめ詳しく問診をする必要があり、悩んでいる症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(随伴症状といいます)、その人の体質、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。

その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼をします。

骨は腎と関連が深いということをこれより先の章でご紹介しますが、安易に腎に関するツボに鍼をしたり、腰が痛いからといって腰周辺のツボに鍼をすることはしません。
あくまでも、根本原因にあったツボを選び、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

5.東洋医学における分離症・すべり症とは

では次に、分離症・すべり症について東洋医学的にみていきましょう。
東洋医学的には、分離症・すべり症による、しびれや痛みの症状は『腰痛』のひとつとして扱います。
腰痛については、すでに別の記事でご紹介をしていますので、ここでは簡単に触れておきます。

東洋医学的に腰痛をひきおこす原因には、以下ようなものがあります。

①筋肉や関節の使いすぎによるもの(経絡経筋病型)
②外気の影響によるもの(風寒・寒湿・湿熱-外邪型)
③ストレスが原因となるもの(気滞、肝鬱気滞型)
④血流の停滞によるもの(瘀血型)
⑤暴飲暴食の繰り返しによるもの(脾虚、湿痰阻絡型)
⑥肉体疲労と体力低下によるもの(腎虚型)

くわしく知りたい方は、ぜひ、以下の記事をお読みください。

【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】腰痛と鍼灸https://note.com/ayajazari/n/ne06b19be1099

6.東洋医学のおける骨

西洋医学上では、脊椎という骨の異常により分離症・すべり症がおこることについては既にご紹介ずみですが、東洋医学では『骨』自体をどのようにとらえているのでしょうか?
東洋医学では、骨のことを『骨(こつ)』といいます。
東洋医学の古い文献には、この骨に関する記載がされていますので、そのいくつかをご紹介します。

6-1.骨と臓腑の関連

古い書物である『素問』の中に『腎の合は骨なり』とあるように、東洋医学では、骨は腎との結びつきが強い、とされています。
腎が正常に働いていると骨は丈夫に、逆に、腎の働きが衰えると骨ももろくなってしまいます。
また、この骨をみたすものを『髄』といい、骨格を栄養するとともに、脳の満たして脳の働きにも深く関与します。

6-2.骨の異常に関する症状について

骨は腎と関連が深いので、骨の異常に関する症状は腎の働きの変動と密接に関係する、とされています。
古い書物である『素問』と『霊枢』の中には、具体的な骨に関する病として、以下のようなものの記載があります。

・骨痛(こつつう) 骨にまでひびく節々の痛み
・骨痠(こつさん) 脱力感、だるさを伴う骨の痛み
・骨厥(こつけい) 腎に関する経絡(足の少陰腎経)の変調からくる症状
・骨消(こつしょう) 筋骨が需要されずに痿弱(いじゃく)になること
・骨蝕(こつしょく) 毒邪が深く侵入して骨質が腐る、骨髄炎の類
・骨疽(こつそ) 附(腐)骨疽のこと、骨が壊死する骨髄炎や骨結核の類
・骨痺(こつひ) 
 外気(風・寒・湿)の影響で、骨や関節が重く、だるく痛み、こわばり、さらに全身の寒冷などを主要症状とする病、関節リウマチ性疾患の類。
・骨痿(こつい)
 腎の働きがくずれて、熱により骨が枯れて骨の中の髄がスカスカになることでおこる病のことで、症状としては、腰や脊椎がだるくて力が入らず屈伸ができない、手足が軟弱無力で行動ができない、顔色がくすんで黒い、などがある。

6-3.歯と骨

東洋医学では、歯は『骨余(こつよ)』=骨の余りであり、さらには腎との関連が深い、とされています。

なお、骨と深く関係する腎については、以前の記事で詳細に扱っていますので、ぜひこちらも読んでみてくださいね。

【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】生命の種火 腎のちから!
https://note.com/ayajazari/n/nc796385b108c

7.まとめ

今回は、分離症、すべり症についてとりあげました。
東洋医学においても、分離症、すべり症に対して鍼灸によるアプローチが可能なことはご理解いただけたでしょうか。
記事を読んで、鍼灸治療に関して興味をもった方、一度、治療を受けてみたいと思った方は、ぜひお近くの鍼灸院を訪ねてみてください。
なお、鍼灸といっても様々な方法がありますので、ここに記載されたような方法を行っている場合とそうでない場合がありますので、まずは問い合わせをしてみるのがよいでしょう。

今回はここまでとなります。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
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画像の出典:https://www.photo-ac.com/

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