榛名いおり

院生 研究職

榛名いおり

院生 研究職

マガジン

最近の記事

過去を色眼鏡で見ないことー木村伊兵衛の展示に寄せて

ここでいう過去とは、自分の記憶の中にあるような経験した過去ではなく、自分の生まれるもっと前、自分の知り得ない時間としての過去である。 「木村伊兵衛と画家たちの見たパリ色とりどり」ーー言わずと知れた日本の名写真家・木村伊兵衛の作品のうち、日本人写真家として戦後初めてヨーロッパを取材した彼がカラーで捉えたパリのスナップ写真群をメインとして、目黒区美術館が企画した展示である。 今回の展示は、フライヤーに印刷された彼の写真に惹かれたことがきっかけで足を運んだものだった。 これま

    • 下書きのタブを開くと、溜まっているいくつもの文章に後ろめたさを覚えるが、まだ書き上げられていない文章につけた、格好だけは良い題名たちを眺めるのも、また良いものである。

      • 久しぶりに大学に登校したら、エントランスに大型の油画が飾られているのが目に入った。芸術系の学科の卒展らしい。学生一人につき、やや小型の習作と、完成作品の二つがそれぞれ掛けてあった。まだ在学生であろう彼女たちの存在がぼんやりと透けて見える。卒展には、独特の心地よい生々しさがあった。

        • 雨上がりの夜が一番好きだ。田圃に水を張る季節と同じで、安心する。

        過去を色眼鏡で見ないことー木村伊兵衛の展示に寄せて

        • 下書きのタブを開くと、溜まっているいくつもの文章に後ろめたさを覚えるが、まだ書き上げられていない文章につけた、格好だけは良い題名たちを眺めるのも、また良いものである。

        • 久しぶりに大学に登校したら、エントランスに大型の油画が飾られているのが目に入った。芸術系の学科の卒展らしい。学生一人につき、やや小型の習作と、完成作品の二つがそれぞれ掛けてあった。まだ在学生であろう彼女たちの存在がぼんやりと透けて見える。卒展には、独特の心地よい生々しさがあった。

        • 雨上がりの夜が一番好きだ。田圃に水を張る季節と同じで、安心する。

        マガジン

        • 美術史と私と
          10本
        • 文学と私と
          6本
        • エッセイ
          6本
        • 展示考察
          5本

        記事

          早く秋服を着たい。

          早く秋服を着たい。

          どう考えても塗り絵に向かないゴッホで塗り絵コンテンツを公開するゴッホ美術館、好きです。

          どう考えても塗り絵に向かないゴッホで塗り絵コンテンツを公開するゴッホ美術館、好きです。

          展示替えのススメ

          展示替えとは。美術館や博物館において、展示してある作品を入れ替えることである。例えば会期の長い企画展において、保存などの観点から会期を前期と後期に分けて作品の一部を入れ替えるといった形で行われている。ではここに展示替えのススメとして文章を書き始めたのは何故か。ここでいう展示替えとは、自分の部屋における展示替えのことである。 展示替えとは何か。意外なことに、ジャパンナレッジでこの言葉を引いてみても見出しは一件もヒットしない。代わりに「模様替え」の語を引いてみる。 私の部屋の

          展示替えのススメ

          文学は私を閉じ込めてくれる。音楽は私を溶かすが、閉じ込めることはない。ここに両者の違いがあるように思われる。

          文学は私を閉じ込めてくれる。音楽は私を溶かすが、閉じ込めることはない。ここに両者の違いがあるように思われる。

          今日の授業では、心理学が専門の教授に対して、美術(史)における知覚及び認知の問題というテーマで学生の私が1時間近く講義をしました。私のこれが講義と呼べる立派なものであったかは別としても、少なくとも1時間の話をできる程度には自分の中に知識体系が備わっているのだと実感する機会でした。

          今日の授業では、心理学が専門の教授に対して、美術(史)における知覚及び認知の問題というテーマで学生の私が1時間近く講義をしました。私のこれが講義と呼べる立派なものであったかは別としても、少なくとも1時間の話をできる程度には自分の中に知識体系が備わっているのだと実感する機会でした。

          院生所感(信用について) 2022.4.19

          院の授業が始まって明日でやっと1週間が経つ。教授よりも院生の方が少ないなんて贅沢な環境のため、中には教授とマンツーマン、二人で楽しく歓談して終わる授業もあった。学部の時には大教室で豆つぶほどに小さくなった教授の話をやっとのこと聞くような状況もあったから、教授という存在を毎週100分間自分のためだけに独り占めできるのは、非常に有難いことである。 自分が他大の院に進んだのには、そこに自分の研究分野の第一人者である教授がいるからというだけでなく、学部の時と違う領域から研究対象にア

          院生所感(信用について) 2022.4.19

          この頃は祖母宅の庭に生えている柿の木の若芽がちょうど萌え出す時期である。この何とも爽やかで軽やかな光を透かす黄緑が好きで、毎年楽しみにしている。伝統色の世界では春先に萌え出る若葉の色を指して萌黄(萌木)色とするそうであるが、柿の木はこれよりも黄味の強い鶸色の方が近いように見える。

          この頃は祖母宅の庭に生えている柿の木の若芽がちょうど萌え出す時期である。この何とも爽やかで軽やかな光を透かす黄緑が好きで、毎年楽しみにしている。伝統色の世界では春先に萌え出る若葉の色を指して萌黄(萌木)色とするそうであるが、柿の木はこれよりも黄味の強い鶸色の方が近いように見える。

          おすそ分け

          本などを読んだときに自分が惹かれた文章を集めている、いわば言葉の宝石箱のようなノートがあるのですが、その中からいくつかをここにおすそ分けします。 あの男といっしょにいるとき ちがっていたのは 全然不安も悲しみも感じなかっ

          おすそ分け

          研究者記念日

          今日は人生で初めて参加する学術調査の初日であった。 春からお世話になる大学院の研究室が、ある美術館の収蔵品調査を請け負うということで、まだ学部生の私も参加の機会を得ることとなった。 図録やガラス越しでしか見ることのなかった資料を自分の手で扱うという初めての経験に、私はあたふたするばかりであった。絵画や彫刻と違って扱い方に癖のある資料を専門とする自分にとって、たとえ実習であっても実物資料を扱う機会はこれまで一度もなかった。色や手触りはこれまで視覚から得た情報から想像していた

          研究者記念日

          夜と地続きの朝は絶望でしかない。

          夜と地続きの朝は絶望でしかない。 いつだったか、本当に怖いのは夜ではなくて昼間に起こる怪奇だという話を目にしたことがある。夜の怖さの根源は大抵暗さにあるから、とりあえず明るいところへ行けばいいのだという逃げ道がある。だが、昼間にドッペルゲンガーを見でもしたら、元々明るいところで起こっている怪奇から逃れるにはどうしたらよいのか分からないということだ。 一昨年の夏に人生で初めてといっていいほど大きな精神と身体の不調を経験してから、自分は逃避行動としての「眠り」に大きく依存する

          夜と地続きの朝は絶望でしかない。

          これからのこと

          長いこと投稿をしていなかった。ここしばらくは大学院入試のことで頭がいっぱいで、自分の進路について深く考える期間だった。 自分は他大学の院に進学するのだが、無事院試に合格したことを現在在籍している大学の教授に伝えると、またもやんわりと博士課程への誘いを受けてしまった。研究したい気持ちはもちろんあるのだが、「展示」という作業に早く関わりたいという気持ちから修士が終わったらすぐに学芸員として就職したいと考えており、周りの人たちにも日頃からその旨を強く伝えていた。しかも修士でお世話

          これからのこと

          最近買ったもの

          最近、物欲を満たすことで心を埋めている感じがあっていろんなものを買ってしまったので、購入品紹介をしてみます。Youtuberみたい。 本ほとんど院試と卒論用。とかいって、自分は趣味で好きなものを研究でもやっているので経費で私物買ってるみたいなものです。そう言って正当化している。家計簿をつけるとき、娯楽カテゴリの本っていう項目と、学習カテゴリの文献って項目があるんですが、全部文献で登録しています。ちなみに紙って植物からできてるから、積読は実質観葉植物ってことらしいですよ。

          最近買ったもの