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これからのこと

長いこと投稿をしていなかった。ここしばらくは大学院入試のことで頭がいっぱいで、自分の進路について深く考える期間だった。

自分は他大学の院に進学するのだが、無事院試に合格したことを現在在籍している大学の教授に伝えると、またもやんわりと博士課程への誘いを受けてしまった。研究したい気持ちはもちろんあるのだが、「展示」という作業に早く関わりたいという気持ちから修士が終わったらすぐに学芸員として就職したいと考えており、周りの人たちにも日頃からその旨を強く伝えていた。しかも修士でお世話になる教授は私が修士を終えるタイミングで定年退職なさってしまうため、博士まで見てもらうことはできない。にもかかわらず、卒論の担当教授はありがたいことに「博士で戻ってくるなら歓迎しますから」と毎度言葉をかけてくださる。回を重ねるごとに「修士二年目には学振(助成金)の申請が始まりますから遅れないように」などと具体性が増しているのがプレッシャーだ。

自分は五年近くもかけて博士論文を書くのが嫌で博士に進むつもりがなかったのだが、院試に向けて卒論と修論の研究内容を詰めていくにつれ、論文を書きたいから博士に進みたい気持ちが芽生えつつあるのを感じて末恐ろしい。自分のやっている研究は資料を用いた応用研究というよりは、引用される資料そのものの属性や性質を明らかにする基礎研究のようなもので、満足のいくまで研究し終えるには修士では時間が足りない。しかもこれほど新規性があって社会的にも意義がある研究なのに、これを公開性の低い修士論文で終わらせてしまうのがすごくもったいないというか、しっかりと自分の名前の出た状態でパブリックに論文として発表しておきたいという気持ちになったのである。博士に進まないのであれば、幸い私の進みたい世界にはお給料をもらいながら研究をして学芸業務もできる素晴らしいポストがあるのでこれを狙うか、良い修士論文を書いて出版社に目をつけてもらって本を出版するかのどちらかだ。とりあえず研究者として名と業績を残したい。

最近石黒圭氏の『文系研究者になる』(研究社、2021年)という本を読んだ。これは基本的に筆者が人文系アカデミアへの進路を「積極的にはお勧めしない」というスタンスで研究者としてのあれこれについて細かく指南してくれているので良い。研究者人生のゴールが「名誉教授 ご臨終」となっているのに笑ってしまった。教授になるつもりは毛頭ないので、院の教授の「二年で学芸員になれるよう鍛えます」との言葉を信じて、血迷って博士に進んだりしないように気を保ちたい。

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