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展示考察

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展示メモ3:眠り展@東京国立近代美術館

先月まで竹橋の東近美で開催されていた眠り展。フライヤーのデザインが気になって興味を持ったのが始まりだが、その内容は思っていたよりも素晴らしく、私的2020年度ベスト展示になるかもしれない。 「問い」のスタンス「眠り展」というシンプルなタイトルながら、その中身は「眠り」を主題とした単なる作品の寄せ集めではなく「眠り」についての問いかけである。各章の章立てと導入文を見るとそれがよくわかる。下にその導入文の一部を引用しておく。 序章 目を閉じて  眠るためには、まず目を閉じなけ

展示メモ2:漱石山房記念館

今回は夏目漱石の旧居「漱石山房」の跡地に立つ新宿区立漱石山房記念館を訪れた。住宅街の中に設置された黒猫モチーフの案内板を目印に辿りつくことができる。 一階部分手前は導入展示となっており、ここは無料で観覧することができる。漱石の書籍を閲覧できるコーナーなどもあり、ガラス張りのフロアが暖かくて心地よい。導入だけ無料という形は初めてなので面白い。 受付を通ると漱石の暮らした「漱石山房」の再現展示がある。記念館の建物の中に旧居が丸ごと再現されており、建物の中にさらに建物が内包され

展示メモ1:日本美術の裏の裏@サントリー美術館

最近、企画展や美術館博物館を展示作品そのものだけでなくどう「展示」しているかという視点で見るようになってきたため、メモを残していくことにする。過去の展示についても遡って書いていけたら。将来自分が学芸員として展示を作るときの参考として敢えて批判的に見ているところもあります。 展示構成章立てのトピックはまさに「日本美術史入門」。一歩踏み込んで見たい、の一歩目としてふさわしいものであるように思う。大学での日本美術史入門と冠された授業と同じようなトピック選択である。 第1章 空間

展覧会の作品リスト

展覧会を見にいった時にほとんど必ずと言っていいほどおいてある作品リストだが、なんとなく貰ってはきたものの帰宅しても見返すことなくしまわれていることが多いものではないだろうか。 私自身も以前はそうであったのだが、ある時から気になった作品の欄に目印として軽く折り目をつける習慣をつけ始めた。展示室内では基本的にインクを使う筆記具を用いることが望ましくないため、何かをメモする時には鉛筆を用いなければならない。しかしふらっと展示を見つけて入った時にはシャープペンシルやボールペンを持ち

「明るく」なる博物館

 私が幼少期から足繁く通っている博物館のうちに国立歴史民俗博物館、通称「歴博」という施設がある。先史・古代から現代までの5つの展示室に加え、民俗を合わせた合計6つの展示室を持つ非常に充実した博物館である。私が初めて歴博を訪れた時にはまだ現代の展示室は存在していなかったように、10年通ううちに各展示室はリニューアルを重ねその姿を変え続けている。今回は数年がかりのリニューアルを終えた先史・古代の展示室を見るために歴博を訪れて感じたことを残しておこうと思う。 リニューアルした展示