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#米光講座

”フリ”をする私が”フリ”のできないヨンヒさんについて考えること(『となりのヨンヒさん』レビュー)

”フリ”をする私が”フリ”のできないヨンヒさんについて考えること(『となりのヨンヒさん』レビュー)

いま、韓国の女性作家の本が注目されている。
本屋に行くと必ず『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、 斎藤真理子訳、筑摩書房)をはじめ、韓国フェミニズムのコーナが大きく取り上げられている。
ほとんどの本が誰かが手に取った跡があり、日本でも必要としている女性が多いのだということを実感する。

その中の一つである、『となりのヨンヒさん』(集英社)はチョン・ソヨンが手がけた15作品のSF短

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「自分じゃないものになりたいと思う?」

「自分じゃないものになりたいと思う?」

「私は植物になりたい。感情をもたなくていいから」
22歳のとき、渋谷のスターバックスでMちゃんがそんなことを言った。
Mちゃんは新卒で仕事を始めたばかりだった。すこし疲れていたようにみえたけど、具体的な悩みは教えてくれなかった。
私は「植物になりたい」Mちゃんの気持ちがちょっとわかった。
わかっちゃったからこそ「逃げてる」と感じた。だから「植物だって生きるのに大変だと思う」と答えた。

この間、川

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人は本当に実用性を求めてうごくのか

人は本当に実用性を求めてうごくのか

「鑑賞用の植物を育てることと食用の植物を育てることに違いはあるか?」小石川植物園でもらったギンナンを調理しながら考えた。
イチョウは紅葉も綺麗だし、実を食べることもできる。
『イギリス庭園の文化史』という本に、イングリッシュガーデンは鑑賞用の植物を植える美的な側面と、食用の植物を植える実用的な側面の両方を備える庭であると書いてある。

なるほどイチョウは両方を持っているエライ植物だなと考えた。

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なんとなく放っておいて、いい

なんとなく放っておいて、いい

(※前回の記事とは違う視点で書き直しました)

今朝、多肉植物の葉から、根が出た。 葉挿ししてからもう1ヶ月以上たっていた。
私は、あっちにもこっちにも根がついているのを確認して、思わずヒエっと声をあげてしまった。

葉挿しとは、ちぎった親株の葉から子株を増やすこと。
本によると、多肉植物は葉に養分や水分をたっぷり持っているので、それを使って根を生やし、新しい芽を出せるそうだ。

切断された一

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見ることをもっと楽しめたらいいのに

前回記事・蓼科バラクライングリッシュガーデンレポでの記事追加。

右を見ても、左を見ても草がこちらに向かっている。
その隙間に光が差し込んでいる。
通りぬけたあとの、ぱあっと空が広くなるきもちよさ。
野良猫たちには普段こんな風に世界が見えているのだろうか。

そのうち、通り雨は行ってしまって、雨の雫が光を浴びて、キラキラと光りだした。庭園一面に、水を浴びた植物たちが、ぐわっとエネルギーを発散さ

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