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緑の中に村が点在する、トスカーナの田舎。その3。 *エノガストロノミア&アトリエ n.7*

『フード&デザイン』をテーマに、アトリエや工房を見学しつつ、「ワインを飲みながら、食事も楽しみましょう!」という、あちらも、こちらも、どちらも楽しそうなイベント。

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ムジェッロ地方は、フィレンツェの胃袋。乳製品、肉、野菜、栗、きのこ、蜂蜜、小麦、さらには、ミネラルウォーターまで賄えます。最近はワインも作り始め、魚だけがない!

ミルク!

フィレンツェには、ムッキというメーカーの乳業会社があります。イタリア語で牛はムッカ Mucca。複数系はムッケ Muccheとなり、そこをもじって、ムッキ Mukki という社名。

わたしは、ムッカです。

フォントのスタイルがバラバラなのに、なぜか統一感のあるパッケージ。

参照:Mukki

ムッキのミルクは、100%トスカーナ産。そのなかでも、ムジェッロ地方のミルクは、地方名MUGELLOを、そのまま商品名として販売しています。

「天の川」の英語は「ミルキーウェイ」。直訳すると「ミルク道」。ムジェッロ地方には、ミルク通り『La Via del Latte(ラ・ヴィア・デル・ラッテ)』というものがあり、酪農家が連ねる道です。

参照:Visit Tuscany

そのなかで、ムッキと契約している酪農家は16社。

毎年、ムッキでは、酪農家が一般人の訪問を受け入れるオープンデイを開催しており、牛舎、放牧している牛、乳搾りなどが見学できるようになっています。

ムジェッロの酪農家オープンディ
参照:Mukki

チーズ!

牛がいれば、羊もいるのが、ムジェッロ地方。トスカーナ地方には、ペコリーノチーズと呼ばれる羊のチーズがあり、牛と比べると、脂肪分が少なめ。

羊がいた!

怖がりなのに、好奇心旺盛。好奇心旺盛なのに、怖がり。近付こうとすると、微妙な距離を保ちながら、後退しつつ、群れてはチラ見。チラ見しては群れる、羊たち。

写真に収めた時は、寒い時期だったので、羊毛をとっぷり着込んでいるけど、今頃は、刈られてツルツルなはず。

お乳がたぷたぷなので、絞って欲しくて順番待ちをする羊たち。

農家さんを訪問すると、たいてい犬数匹、猫数匹が同居。塩を加える前の、柔らかいチーズ待ち。

絞ったミルクは、ざーっと、型に流し込み、

大きな浴槽を満たしたら、

手で型に流し込み、

型に流し込んだら、

ステンレスの板を取り除き、

ぎゅうぎゅうと、力を込めて押し込みながら、いらない水分を押し出していきます。

結構な重労働。午前中の日課。

ペコリーノチーズには、3タイプあり、1週間くらいで食べる若いチーズ、3ヶ月ほど寝かせる半熟成タイプのセミスタジョナート、1年またはそれ以上寝かせる熟成タイプのスタジョナートがあります。

こちらは、熟成タイプ。形が崩れてシワシワ。カビ菌が水分を取り、腐るのを防いでくれます。これが、うんまいのです。

ペコリーノチーズにも、青カビタイプあり。ゴルゴンゾーラは牛さんの乳を使うけど、こちらは羊さんの乳。牛さんのは、ねっとり甘めだけど、羊さんのは、ジワっと旨味があとから追いかけてくるタイプ。

熟成室。いたってシンプル。手前のザルに入っているのは、リコッタチーズ。型に流し込んむときに、水分がたくさんでますが、これは、ホエー。集めて再加熱して、リコッタチーズを作ります。

リコッタは、リ -Ri(再び)コッタ-cotta(加熱)という、実は、そのまんまの意味。

できたては、柔らかくて、ミルクの甘い香りがして、ぱくぱく食べれる。午前中に農家さんを訪問するときの醍醐味です。

お肉!

お肉も、もちろん、あります。ムジェッロ地方のほぼ最北端にあるフレンツォーラ村に本部がある、お肉専門店。

ムジェッロ地方の村々や、フィレンツェのスーパーでも販売されていて、青空市場にも、出店。

参照: HP CAF

霜降りとは対極の、いっぱい運動して、草を食み、放牧されて育った牛さん。赤身で、高タンパク質。

村々のお店では、塊がゴロっとショーケースに並んでいるので、「この肉を500グラム下さい」という風に注文し、切ってもらいます。

ムジェッロ産のいろいろな食材を生産し、販売するお店。前回案内したナイフの街スカルペリアの近くにあります。

ムジェッロ地方の食材を、すべて挙げると切りがないので、最後はミネラルウォーター。

水!

パンナという水。ムジェッロ地方の水。パンナは、生クリームの意味ですが、この水の名前は、パンナという土地名からきています。

このパンナ。発砲のないタイプなので、日本でお目にかかる機会はないと思いますが、緑色のボトルに水色のレベル。そして、真ん中に赤い星の、発泡水サンペレグリーノと同じ販売元。

参照:Sanpellegrino

こちらは、パンナ邸宅(Villa Panna)。誰の持ち主だったでしょう? ムジェッロ地方から、フィレンツェに降りて、大成功を収めた一族。

参照:HP Acqua Panna

そう、メディチ家所有の別荘だったんです。

銀行家として財を築き、ムジェッロ地方に、カファジョーロ別荘を建て、ボスコ・アイ・フラーティ教会を改築し、さらに、こちらの別荘も、城塞だったところを改築させたもの。

嫉妬深いフィレンツェ人を相手に、日々過ごし、心身ともに疲れを感じたら、休息のために田舎へ引っ込む当主。

さて、今回はどこに行こうか。

歴代のメディチ家が建てさせた邸宅が、フィレンツェを中心にトスカーナ地方に何軒もあります。そのままの姿で残っているのも、多し。

ムジェッロ地方にあるカファジョーロ別荘と比べると、パンナ邸宅は、森に囲まれていて、自然のなかで狩猟を楽しむことができる。

よし、今回はパンナに数日滞在して、狩猟を楽しむとするか。

時は移り、1900年代に入ると、ボナコッシ伯爵へと所有者が代わり、パンナ社が設立されます。が、戦争が勃発。水を詰めるボトルは、壊されないように、パンナ邸宅の人口湖の底に隠したそうです。

1951年に、ようやく事業が再開。2020年からは、パンナ邸宅は、生物多様性の研究機関になっています。

参照:HP Acqua Panna

サグラ!

サグラとは、村祭りのこと。村の人たちがご飯を作り、訪れる人に提供する、仮設青空食堂。

イタリア津々浦々どこにでもあり、ムジェッロもしかり。平日は、みんな普通に仕事をしているので、週末のみ運営。

お祭りが開催中の村。
旗が飾られている。

海へと、山へと、行楽へ行った人たち。
週末は自然のなかで、のんびりしたい。
マンマ、週末は料理したくない。
安くて美味い料理を食べて、友達とワイワイしたい。

食べたいものを、
レジで先に精算。

行楽の帰り道に看板を見つけたり、あらかじめ予定を立てた人たちが、サグラという甘美な言葉に誘われ、会場へと引き寄せられます。

こんな風に道沿いに看板が出ているので、
「→」に沿って、会場に向かいます。

Tボーンステーキが若干高めで、500グラムが15ユーロ。1キロが20ユーロ。レストランと比べると、断然安い。

こんな風に、手書きの可愛いメニューに出会うこともあり。

Dolci Fatti in Casa は手作りお菓子。かたつむりの絵があるのは、エスカルゴがテーマのサグラだったから。イタリア語で、エスカルゴは、キオッチョラ。イタリアの音って、なんてかわいいんでしょう。

レジ係り、キッチン係り、注文確認係り、配膳係り、あらゆる世代の村人たちが、担当を分けて、お仕事中。

子供達が大人に混じって、配膳をしてることもあり。おしゃべりに夢中で渋滞に陥りがちなお客さんを、きちんと交通整理したり、キッチンとテーブルを忙しく往復していたり、ちゃんと仕事をしています。

真夏日和だと、みんな日陰に移動。広場の真ん中にあるテーブルは、夜用でしょう。夜は気持ち良いだろうな。

大抵のサグラは、プラスチックの容器。と、紙のランチョンマット。これが、いいのです。

ムジェッロ地方フィレンツォーラ村に本部がある、お肉専門店のTボーンステーキ。

乗馬でやってくる人もいるんですね。

栗の里、ムジェッロ地方マッラディ村まで、フィレンツェのリフレディ駅から蒸気機関車で行くことのできるお祭りもあります。

採りたての栗をはじめ、ムジェッロ地方の特産物を食べれて、1日楽しめます。去年は、10月17日でした。

ムジェッロ地方。トスカーナ州にあり、あまり聞かない地方ですが、どうでしたか? 

ワインで有名なキャンティ地方や、世界遺産に登録されているピエンツァがあるオルチャ渓谷などと比べると、キラキラ感はないですが、自然と共存し、のんびり生活している、住民たちの空気に溶け込むことのできる、地方です。

さて、そろそろフィレンツェに戻りましょうか。次回はフィレンツェ編をご案内します。

最後までお読みくださり、
ありがとうございます。
次回はフィレンツェで会いましょう!


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