イタリアのモノづくり | ようこ

イタリアのモノづくりはなぜ輝きを放ち続けるのか。政治も経済も、特に優れているわけでない…

イタリアのモノづくり | ようこ

イタリアのモノづくりはなぜ輝きを放ち続けるのか。政治も経済も、特に優れているわけでない(失礼!)イタリア。なのに彼らの作るモノは、艶っぽくて魅力的。フィレンツェに移り住んで見える、イタリアの気質や、豊かさ、アートと職人の関係を、わたしなりの解釈で読み解いていきます。

マガジン

  • フィレンツェ物語

    ルネッサンス文化が香る古都フィレンツェは、紀元前に古代ローマ人が開墾し築き上げた、なにもない小さな国でした。 依頼人がいて、職人という名のアーティストがいて、通りにひしめき合う工房で、人の手が加えられて、いまのフィレンツェがあります。 それぞれの時代に生き、活躍した人達の物語は、そのままフィレンツェの物語です。歴史の点と点が、線で繋がる、昔から今へと紡がれている、フィレンツェにご案内します。

  • 救われたアート 1937年〜1947年

    第一章は、戦時中に自分たちの命をかけて、アートを守る勇士に身を転じた、美術館の館長達の物語。第二章は、戦時中にアートを守り、戦後は革新的な活動で美術館を新生したカッコイイ女性館長の物語。美術館で鑑賞するのとは異なる、アートの歴史をご案内します。

  • 職人のモノづくり

    ときに、生活とは無関係の無用の用で、遊びの世界かもしれない。 それなのに? それだから? より美しく、心をこめて、魂をこめて、生み出されるモノと、人との関係に焦点を当てています。

  • 美しさとは

    美しさの定義って、難しい。その時代に生きた人の価値観とともに、変わるのかもしれない。いや、まったく変わらないものなのかもしれない。美しさってなんだろう。自分に問いかけて、考えたことを書いています。

  • 美しい小都市や田舎を訪ねる。

    イタリアの小都市や田舎は、きちんと整えられて、花が飾られていて、住民同士の絆が深くて、自然と、歴史と、人が、ゆったりと時のなかに身を置いています。豊かさってなんだろうって、考えてみたくなります。

最近の記事

巨匠の試し描き。 プライベートのデッサン室。 n.5(最終回)

現在はフィレンツェのバルジェッロ美術館に展示されている、ミケランジェロの未完の作品。2018年に日本でも展示されている。 「ダヴィデ」と「アポロン」ふたつの名前を持っている。 ダヴィデは旧約聖書に登場する国を守る英雄。 アポロンはギリシア神話のオリンポス十二神の一柱。音楽、医学、予言など様々な側面を持ち、シンボルは竪琴。 特徴の異なるダヴィデとアポロンが、なぜ一つの名になったのか。 当初は新聖具室に飾る一体としてダビデ像を製作していたらしい。だが1529年に起きたフ

    • 巨匠の試し描き。 夢と苦悩。 n.4

      秘密の小部屋のデッサンの大半は、1530年に描かれたと推測される。 なぜか? 発端は、1527年5月6日に起きるローマ劫掠。 このときのローマ法王はメディチ家出身のクレメンス7世。 ローマがすごいことになっているらしい。 ジュリオ(クレメンス7世)も逃げるのに奔走しているはず。 機を虎視眈々と狙っていた反メディチや共和国支持者は、数ヶ月前からスペイン王カール5世の大軍がローマに向かっている情報を得ている。ローマの劫掠は、フィレンツェへ直ちに届けられる。フィレンツェ

      • 巨匠の試し書き。 飛行する思考。 n.3

        狭い階段を、足を踏み外さないように慎重に下りていくと、空気が湿気を帯びてくるのを感じる。床面に着いたので、顔を上げると、正面、右、左、背後。壁一面に描かれたデッサンが目に飛び込んでくる。 圧倒的な大きさや筆力に、唖然。何世紀も前に描かれたものなのに、デッサンからは新鮮な魂を感じる。 多くのデッサンは黒色で描かれており、わずかな部分が赤茶色。黒色は先端を尖らせた木片を火で焼いて木炭にしたものが用いられ、ある線は太く、ある線は細く描かれている。赤茶色は、十分に焼けきれなかった

        • 最新情報をお知らせします! 連載中の「巨匠の試し書き」で紹介している、壁に描かれたミケランジェロのデッサンですが、2024年12月31日まで見学が延長になりました!こちらから購入ができます。 一回限定4名。1週間100名が見学可能。 https://webshop.b-ticket.com/webshop/webticket/eventlist?production=68

        巨匠の試し描き。 プライベートのデッサン室。 n.5(最終回)

        マガジン

        • フィレンツェ物語
          46本
        • 救われたアート 1937年〜1947年
          22本
        • 美しさとは
          21本
        • 職人のモノづくり
          77本
        • 美しい小都市や田舎を訪ねる。
          24本
        • モノづくりインタビュー
          22本

        記事

          巨匠の試し書き。 小部屋での発見。 n.2

          全員が固唾を呑む。 ずっと昔に年配の学芸員が言っていたことは本当だった。 1メートルにも満たない木製の扉を開けると、暗闇の中に狭く急な階段が現れた。階段は、地下に繋がっている。10数段はあるだろう。 どのような状態になっているのか分からないので、扉を開けたままにし、地下に入る装備を整える。 湿気とカビの入り混じった匂いのする、狭い階段を一段づつ降りていくと、細長く狭い空間が現れた。暗闇に懐中電灯を照らし周囲を観察すると床には砂や泥が積もり、壁はカビで黒くなり、蜘蛛が至

          巨匠の試し書き。 小部屋での発見。 n.2

          巨匠の試し書き。 秘密の小部屋。 n.1

          ずっと昔に聞いたことがある。 古参の学芸員が言ってたんだ。 地下に繋がっているって。 フィレンツェにあるメディチ家礼拝堂は、その名の通りメディチ家の礼拝堂があり、メディチ家一族が埋葬されているところでもある。 簡素な石造の建物からは想像もつかないほど、内部は色で埋め尽くされおり、礼拝堂に一歩足を踏み入れた者は、その色面積の大きさ、モニュメントの大きさに圧倒され、あんぐりと口をあけたまま、しばらく目に映る光景に立ち尽くしてしまう。 さらにその先には、新聖具室がある。白

          巨匠の試し書き。 秘密の小部屋。 n.1

          解放記念日

          festa della Liberazione 今日4月25日はナチス軍とムソリーニ政権から解放された記念として、イタリアは祝日です。 美術館の作品を戦火から守り、ユダヤ人を迫害から守った、ミラノのブレラ美術館の女館長フェルナンダ・ヴィットゲンスが投獄されて数日後だったことが思い出されます。 砲撃を受け瀕死の状態だったレオナルドダヴィンチ作の「最後の晩餐」も、彼女が救ったといっても過言ではありません 彼女の物語を改めてこちらにリンクします。

          高貴で冷々たる美しさを、我が手中に。

          スペーコラ博物館 鉱物セクション Museo Specola - Mineralogia メディチ家コレクションメディチ家のコレクションは絵画や彫刻のみならず、貨幣、甲冑、植物、陶器と、さまざまな分野に広げていきましたが、鉱物もそのひとつ。 ヴェッキオ橋を渡り、かつてメディチ家の邸宅だったピッティ宮殿を通り過ぎ、さらに南へと進んでいくと、最近リニューアルオープンしたばかりのスペーコラという博物館があります。 ここには昆虫から大型動物までのありとあらゆる生き物の剥製が

          高貴で冷々たる美しさを、我が手中に。

          地産地消で知るイタリアの食 - 2/2

          毎年春にフィレンツェで開催される食の見本市「テイスト」。愛情と情熱が込められた食には、その数だけ物語があります。今年訪問して心に残った生産者を案内しています。 ラクイラ村で、大地と生きる女性達アブルッツォ州のラクイラ村。 2009年に大地震に見舞われ、 あれから何年も経っているのに いまだ完全に再起してるとは言えない土地。 このラクイラ村で強く逞しく、 大地とともに生きる女性に出会いました。 アーモンドの枝という意味の ラーモ・ディ・マンドルロ社。大地震の起きた10年後

          地産地消で知るイタリアの食 - 2/2

          地産地消で知るイタリアの食 - 1/2

          フィレンツェでは毎年春が近づくとテイスト(Taste)という食の見本市が開催されます。 イタリア食材といえば、生ハム、サラミ、チーズ、オリーブオイル、ワインなどが思い浮かぶでしょうか。見本市を訪問するたびに、こんなものがあったのか!と呆れるくらい多種多様な食に出会います。 出展する半数以上が中小規模の生産者です。と言うことは、高級食材店で見かけることはあっても、日常のスーパーマケットには出回らないものがほとんど。 生産している地域で消費されるものが大半を占め、話を伺うと

          地産地消で知るイタリアの食 - 1/2

          再生

          チェッレリーニの音

          前回のチェッレリーニ店のショート動画を投稿します。 次回の記事「地産地消で知るイタリアの食」 前振りばかりですいません。もうしばらくお待ちください!

          再生

          地産地消で知るイタリアの食

          地産地消で知るイタリアの食

          路面店のない、ハンドメイドの鞄店。n.4

          今回のインタビューは、フィレンツェ中心街にある『Cellerini チェッレリーニ』です。 1960年から同じ場所に工房とショールームを構え革製品の商品を作っている、フィレンツェの老舗店です。 今回は、チェッレリーニのインタンビュー最終回です。 ******** * イザベッラさん イザベッラさんは工房に入り今年で4年目。 学校を卒業後、なにをしていいのかわからない。 自分が将来なにをしたいのかもわからない。 それでこの工房に入りました。 お店の接客をしていて、

          路面店のない、ハンドメイドの鞄店。n.4

          路面店のない、ハンドメイドの鞄店。n.3

          今回のインタビューは、フィレンツェ中心街にある『Cellerini チェッレリーニ』です。 1960年から同じ場所に工房とショールームを構え革製品の商品を作っている、フィレンツェの老舗店です。 第2回目はお店や販売のことなどを伺いましたが、第3回目は工房でのお仕事や想いについて、職人アントネッラさんに伺います。 ******** Q. クラシックな形が多いですが、新しいデザインもされますか? 壁に掛けられているのは、1960年から現在までの型紙です。 番号が振って

          路面店のない、ハンドメイドの鞄店。n.3

          路面店のない、ハンドメイドの鞄店。n.2

          今回のインタビューは、フィレンツェ中心街にある『Cellerini チェッレリーニ』です。 1960年から同じ場所に工房とショールームを構え革製品の商品を作っている、フィレンツェの老舗店です。 貴重な時間を頂いてしまうので、 あまり長居をしないように心がけています。 しかし日本贔屓の職場ということもあり、 ついついおしゃべりに花が咲き あっという間に時間が過ぎるのを 引き戻しながらのインタビューとなりました。 楽しそうな工房の雰囲気も感じて頂ければ嬉しいです。 **

          路面店のない、ハンドメイドの鞄店。n.2