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美しい小都市や田舎を訪ねる。

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イタリアの小都市や田舎は、きちんと整えられて、花が飾られていて、住民同士の絆が深くて、自然と、歴史と、人が、ゆったりと時のなかに身を置いています。豊かさってなんだろうって、考えて…
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トスカーナの山奥にある、絵の村。 n.2

n.1では、カーゾリ村の心温まる村里アルバム壁画などを紹介しましたが、今回は彼らの知られざる歴史から村に近づきます。 海と村と、気球。カーゾリ村の壁は、歴史も語る。左から右に連なる連作。 最初の一枚。日傘を差した2人の女性が描かれている背後の建物。Grand Caffe (グラン・カフェ)と書かれている。どこかで見た。どこだったろうと、記憶を辿り思い出した。海岸沿いのヴィアレッジョという街のメインストリートにいまも建っている、あの建物だ。 1900年代初期は、ヴィアレッ

トスカーナの山奥にある、絵の村。 n.1

海岸沿いからほど近い村にて、お肉を調達していた時のこと。ショーケースに並ぶお肉をあれこれ物色しているときも、おしゃべりが絶えることのないイタリア。 会話に出てきたカーゾリという村。店の息子さんはここから通っているそうだ。 「面白い村だから、行ってきたらいいよ。」 その一言につられ、なんの予備知識もなく訪れたカーゾリ村。前回の投稿からずっと彷徨っている村である。 Casoli - カーゾリ村下界からは空の彼方に霞んでみえた山の頂上が、目の前に立ちはだかり、迫ってくるよう

緑の森に浮かぶ、茶色い屋根。田舎の美しさ。 *Buti ブーティ村 *

前回に引き続き、「田舎の美しさ」シリーズです。 マグネシウムを多く含んだ硬水が多いイタリアですが、ところによっては日本のお水のように柔らかい軟水の水が湧き出るところもあります。 城壁に囲まれたトスカーナ州ルッカ街の周辺もそんなところ。とうとうと流れる川と共存している村も多く、ただ歩いているだけで空気が美味しく清々しい気分になります。 ブーティ村。前回のルオータ村が山の頂上にあるとすれば、ブーティ村(Buti)は同じ山の裾にあります。 建物から張り出した納戸のようなもの

お山のてっぺんにある、田舎の美しさ。 *Ruota ルオータ村 *

イタリアは8月1日から気もそぞろ。もとい。7月1日から気もそぞろ。 あといくつ寝ると夏休み。指折り数えて待ちに待った夏休みが真っ盛りのイタリアです。フィレンツェの中心街は、6月7月ほどではありませんが、それでも道を真っすぐに歩けないほどの混みようです。 かたやフィレンツェの市街では、人々は海へ山へと大陸移動し、朝も夜もしんと静まり返り、車の音の代わりに、風の音すら聞こえてきます。 今回は、日々そんな美しい静けさの中で過ごしている、小さな村へとご案内します。 夏休み時期

人の人との繋がりのある、田舎の美しさ。*Ortonovo オルトノーヴォ*

11世紀から12世紀にかけて造られたOrtonovo(オルトノーヴォ )村。Ortoは菜園や野菜畑の意味。novoは新しいの意味。「耕作するための新しい土地」という名を持つ村です。 地図にも通りの標識にも、オルトノーヴォと示されていますが、2017年4月20日から、ルーニへと名称が変更になったという面白い村。 どうして村名が変更になったのか興味が湧き調べてみたら、住民投票で決めたらしいです。93.20%が変更する。6.8%が変更しない。圧倒的多数でルーニに変更決定。 な

田舎の美しさ。番外編。*Portus Lunae ルーニ港*

いままでご案内してきた村々。村の起源は古代ローマ時代まで遡りますが、この地方に残っているものがあります。 じゃん! 円形劇場。 紀元前177年に、古代ローマ人がマグラ川の河口に街を建設。ローマ時代は街のすぐ隣に港があり、貿易の寄港地として栄えます。 湿地地帯を開墾して作られた街は、「湿地」という意味のLun(ルン)もしくはLuk(ルク)からルーニと名づけられます。 さらに面白いことに、ルーニの単数形はLuna(ルーナ)で「月」という意味。月をシンボルとする女神はアル

ある夏の日の、田舎の美しさ。*Castelnuovo Magra カステルヌオーヴォ・マグラ*

今回は、山の傾斜に立つ村じゃなくて、横長の村。 Castelnuovo Magra カステルヌオーヴォ・マグラという、人口約8500人の村です。 マグラというのは、近くに流れる川の名前。マグロじゃなくてよかった。一文字違うだけで、まるで感じが変わります。マグロ川なんて、お魚の鮪が泳いでいるのを想像してしまいます。 マグラというのは「痩せた」という意味。広く大きな川ですが、常に砂利が見えるほど、水量の低い川で、リグーリア州とトスカーナ州の境を流れています。 城跡の隣に大

石畳のアーチが連なる、田舎の美しさ。*Vezzano Ligure ヴェツァーノ・リーグレ*

アルコラ村でおまわりさんから教えてもらった、貴重な地元情報。 人口約7000人が住む村。やはり小高い丘の上に立っています。 村の一番高いところに建つ塔を目指して行ってみましょう。 村の入口の広場に描かれたフレスコ画。これはなんでしょう? RIONEは「地区」という意味。ヴェツァーノ・リーグレ村は、広場地区を中心に、9つの地区に分かれていることを示しています。 場所によっては、地区対抗のレースが繰り広げられます。代表的な例では、フィレンツェから日帰り旅行できる古都シエ

時間と自然と人が共存する、田舎の美しさ。*Trebiano トレビアーノ村*

前回は、5つの村が断崖に立つチンクエテッレで有名なリグーリア州にある、アルコラ村をご案内しましたが、今回は続編です。 アルコラ村からトレビアーノ村までは、距離にして7キロ。だけど、山道をうねうねと登るので、車で15分ほど。 トレビアーノ村はアルコラ村の集落。ということは、アルコラ村より、もっと小さい村。 村の一番高いところには、かつてのお城が建っていますが、建立は963年。崩れたとはいえ、いまでも残されていることに驚きます。石のひとつひとつが、いまも昔も、じっと佇み、人

緩やかな時間が流れる、田舎の美しさ。 *Arcola アルコラ村*

近年脚光を浴びるようになった、岸壁に立つ5つの村、チンクエテッレ。トスカーナ州の上にあり、海に沿うように長細いリグーリア州の観光名所です。 いま海沿いの街にいて、チンクエテッレへも比較的近いので、先週の平日に行ってきました。人の多さにびっくり。 夏休み最後の週だったこともあり、家族連れや学生達も多く、小さな村がぎゅうぎゅうのすし詰め状態。 そこに、欧米人と思われる、団体旅行御一行が押し寄せ、車幅ほどの歩道は、人で埋め尽くされ、すぐそこに海が見えるのに、ぜんぜん進まない。

香りの工房。n.8 *薬局と、薬草店と。*

前回までルネッサンス時代へとタイムスリップしていましたが、今回からは現代に戻り、イタリアの薬草の世界についてご案内します。 前回までのシリーズは、本投稿の一番最後に案内していますので、ぜひお立ち寄りください。 薬局と薬草店の共存マリア・レティツイアさんにお話を伺っている時、『エルボリステリア(薬草専門店) 』という言葉が発せられました。 イタリアには、製薬会社の薬を販売する薬局のほかに、薬草を専門とするエルボリステリアというお店も存在します。 薬局はファルマチア(Fa

教会と光と夏至。

夏至の日は、たまたま海方面へ行っていて、サンミニアートアルモンテ教会のような夏至のスペクタクルが観れるところないか、探してみた。 あったあった! 場所は、バディア・サン・ピエトロ教会。 建立は700年代で、いまの姿は12世紀のもの。 巡礼の路といえば、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路が有名ですが、ローマへ向かう、フランチージェナと呼ばれる巡礼路がイタリアにもあります。 余談ですが、コロナ以降、イタリアは、ちょっとした巡礼路ブーム。数日かけて、巡礼地

ルッカのプライド

街をグルリと囲む城壁が残っているのは、イタリアでも珍しい。 戦争だったり、都市計画だったりで、壊されてしまうことが多いから。フィレンツェにも1284年に造られた城壁があったのに、1870年に都市計画のためという理由で、一部が取り壊されてしまった。 いまだにフィレンツェ人の泣き所。もし「あの」城壁が残っていたら、交通規制もできただろうし、古都の雰囲気も、いまよりもっと残されていたはず。 そこにくると、ルッカはすごいんです。 1504年からの城壁で、街がグルリと囲まれてい

カッラーラ山は、宝の山よ。

フィレンツェから高速道路に乗り、海沿いに向かって行くと、夏でも真っ白い山々が現れます。これが、カッラーラ山。 前回案内したサンミニアートアルモンテ教会の白い部分も、ルネッサンス時代を代表するフィレンツェの大聖堂の白い部分も、ミケランジェロ作のダヴィデ像も、ぜーんぶ、カッラーラの大理石。 いざ、カッラーラ山へ何トンもある大きな塊の大理石を乗せたトラックが、行き交うカッラーラ街。すれ違うだけで、迫力。採石場に行く道は何本もあり、まるで迷路のよう。 カッラーラ山の大理石は、世