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路面店のない、ハンドメイドの鞄店。n.4

今回のインタビューは、フィレンツェ中心街にある『Cellerini チェッレリーニ』です。

1960年から同じ場所に工房とショールームを構え革製品の商品を作っている、フィレンツェの老舗店です。

今回は、チェッレリーニのインタンビュー最終回です。


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* イザベッラさん

イザベッラさんは工房に入り今年で4年目。

学校を卒業後、なにをしていいのかわからない。
自分が将来なにをしたいのかもわからない。
それでこの工房に入りました。

お店の接客をしていて、いまの彼とも出会ったのよ。

将来の夢はアーティストになること。

ここではクリエイティブなこともできるので満足しています。

お客様の接客ができることは、わたしにとって贅沢な環境です。言語も当然ですが、丁寧な対応が求められ、自分の成長にも役に立ちます。いまの経験はきっと将来の力になるはずです。

世界中からお客様が来られるので、それぞれの国の話しや文化の違いを聞いたりできるのも素晴らしい体験です。

23歳のイザベッラさんの今後の活躍が楽しみです。

* もうひとりのスタッフさがし

スタッフをひとり欲しいと、フィレンツェ市の研修生を斡旋する課に申し出をしました。ざっと30人ほど面接をしたでしょう。

名の通ったファッション系や革学校の生徒もいたのですが、驚いたことに、だれもかれもが、革を手で切った経験がありませんでした。

いまはコンピュータに指示を出せば、レーザーで切ったりミシンが勝手に動きます。

コンピュータの入力はできても、手で革を切りミシンを使えなければここでは即戦力にはなりません。

大切なのは、学びたい。と心から思う気持ちです。

間違えたら、やり直せばいいだけです。

インタビューに伺った時に風邪でお休みしていたマルコさんは、家庭の事情により残念ながら辞めてしまったそうです。慌ててもうひとりのスタッフを探していましたが、ようやく見つかったそうです。良かった。

ダリさんも重要な面接官。

アントネッラさんへ再度質問を投げかけます。

Q.人生でもっとも幸せだったときは?

結婚と出産。
特に子供が生まれたときね。

イザベッラさん:わたしがここにいるから、言っているんじゃないの?

違うわ!
子供はかけがいのないものよ。
結婚以上に大切なもの。

再婚はできるけど、絶対に必要なことじゃない。
子供を持つということは、まったく別なことです。

それとアルジェリアでの2年間の生活。
毎日がすっごく楽しくて幸せだったわ。

父の仕事の関係で赴任が決まった時、家族全員で引っ越すことに決めました。
そのとき飼っていた犬も一緒に海を渡ったわ。

私たちが中学生のときです。

3月から11月までずっと海に行き、まるで毎日がヴァカンスのようでした。

80年代でしたが、娯楽施設はなにもなく、あるのは、駐在先のみんなで使える部屋だけ。でも、私たちはすっごく楽しかった。わたしたちが必要なものはすべて揃っていたの。両親も楽しんでいたみたい。本当にいい思い出です。

Q. このお仕事をしていなければ、なにをしていましたか?

19歳からこの仕事をしているので、まったく想像がつきません。他の職種へ転職したこともあったけど、結局、もとの場所へ戻りました。

Q. 人生で不可欠な3つのことは?

これは難しい質問ね。と、しばらく考えてから、

健康、勇気、好奇心。

Q. タイムマシンがあります。過去と未来、どちらに行きますか?

なんて簡単な質問!

過去よ。

1500年初期のメディチの時代に戻って、あの時代のフィレンツェを訪れてみたい。当時の服装って、男性も女性も素敵じゃない? 革工房に立ち寄って、仕事をさせてもらっているかも。

イザベッラさん:私にとって未来は未知の方がいいわ。夢があるじゃない。そうねえ、80年代とか90年代に戻りたいわ。

アントネッラさんとアレッサンドラさん:つい最近のことじゃない!! 

老いるのは、
心のなかの「夢を見る場所」に、
「思い出」が棲みついたときである。

なかなかに意味深長な言葉です。工房に貼ってありました。

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アントネッラさんは、時あるごとに、倉庫の奥に眠っている革の素材を取り出し、手で触れ、どう使おうか想像しています。

昔の素材は、いまよりもずっと作りがしっかりしていて、手で触れると素材の上質感が伝わってきます。

ちょっとした切れ端で、小さなバックを作れてしまうわ。

倉庫に眠っている美しい革素材は、アントネッラさんの手により生まれ変わるのを、いまかいまかと待っているのかもしれません。限られた素材なので、1点ものの商品になる確率は大です。いったいどのようなものが出来上がるのか楽しみです。

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* 革製品はサステナブル?

日本経済新聞に、革製品がテーマの記事が掲載されていました。たまたまチェッレリーニのインタビューを編集していたこともあり、目に留まりました。

ここ数年で革製品を使うことが「サステナブル(持続可能)ではない」「地球環境によくない」という誤解が広がっているのも事実だ。こういった認識が広まった背景は何か、そして正しく知っても らうためにどうすべきか。

出典元:日本経済新聞

イタリアでそこまで革製品の元になる皮について、サステナブルを論議していることを少なくともわたしは聞いたことはありません。ですが世界的な動きとして、皮よりも合皮へという動きがあるのかもしれません。

読み進めていくと、皮革‧革製品のサステナビリティーに関する詳しい情報を掲載しているHPを紹介していましたので、こちらにリンクを貼っておきます。とてもわかりやすく説明しています。興味のある方は、ぜひ一読ください。

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* イタリア式玄関の問題。

お客様が正面玄関にある呼び鈴を押すとお店にブザーが鳴るので開錠します。

でも待てど暮らせど階段を上がってくる気配がありません。どうしたのだろうと、窓を開けて見下ろすと、玄関の前で立ち尽くしていることがあります。

玄関は押さないと開かないのですが、これはイタリアならではの文化なのでしょうか。

ようこ:自動で開くのを待っているのか、もしくは一般の人も住んでいる建物の正面玄関を勝手に開けて入るのは失礼に当たると考えるのかもしれません。

そんな場合、窓から顔を出して「プッシュー!(押して)」と叫ぶか、下に降りて出迎えます。

ようこ:玄関のプレートに、押してください。と書いておくのはどうでしょう。

書いているんです。でも、とってつけたような案内だから、見落とされているのかもしれません。

正面玄関の木製の扉を押すと、歴史とともに生きてきた重厚で、かつエレガントな踊り場が現れます。階段はフィレンツェらしいグレーのセレーナ石が使われており、フレスコ画で装飾されています。

美しい階段を上った先が、チェッレリーニです。アレッサンドラさんが扉を開いて笑顔で迎えてくれます。

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インタビューでお邪魔している間、始終笑いが絶えず、和やかな雰囲気のもと、楽しい時間を過ごしてきました。

革製品は、使い始めはカチっとした手触りですが、年月が経つにつれ風合いも手触りも柔らかくなり、体の一部のようなフィット感が生まれ、革もまた、いい感じにこなれてきます。

ゆえに、人生をともに過ごす(大袈裟ですが)もの選びは、吟味したいものです。

モノづくりには作り手の感情や精神が表れると思いますが、チェッレリーニの商品には、1針ずつ丁寧に縫いんこんだ温もりを感じます。アントネッラさんやイザベッラさんが作った商品を使うことで、毎日が小さな幸福に包まれそうです。

フィレンツェにお越しの際には、アントネッラさん、アレッサンドラさん、イザベッラさんに会いに、ぜひチェッレリーニへ足をお運びください。

日本でも購入できます。下段にリンクを貼っておきます。

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最後までお読みくださり
ありがとうございました!

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