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路面店のない、ハンドメイドの鞄店。n.2

今回のインタビューは、フィレンツェ中心街にある『Cellerini チェッレリーニ』です。

1960年から同じ場所に工房とショールームを構え革製品の商品を作っている、フィレンツェの老舗店です。

貴重な時間を頂いてしまうので、
あまり長居をしないように心がけています。

しかし日本贔屓の職場ということもあり、
ついついおしゃべりに花が咲き
あっという間に時間が過ぎるのを
引き戻しながらのインタビューとなりました。

楽しそうな工房の雰囲気も感じて頂ければ嬉しいです。


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工房にお邪魔すると、薄茶色の柔らそうな革を扱っています。

牛皮は厚みがあるので、ピシっと立ちますが、
この革はヘニャグニャっとして扱いにくそうです。

素材はオーストリッチ。

オーストリッチという音の響きから、いかにも高級感が漂いますが、動物名は、世界最大の鳥ダチョウです。

オーストリッチ革の最大の特徴はぽちぽちの丸い突起です。この部分に羽根が生えるそうで、触れて観察してみると、なるほど、小さな穴が開いています。

この革は扱うのが大変なの。
脇の部分は柔らかすぎてボロボロになって使えないし、突起を活かすには限りがあるから、使える部分が本当に少ないんです。そのためオーストリッチは高級皮革のひとつです。

手前の茶色い小さなバックです。

チェッレリーニのスタッフは4名。
職人頭のアントネッラさん。
接客経理全般を担当する妹のアレッサンドラさん。
アントネッラさんの長女イザベッラさん。
研修生として目下修行中のマルコさん。

左から
アントネッラさん、
イザベッラさん
アレッサンドラさん。
マルコさんは風邪でお休みでした。

そう、ダリも忘れてはなりません。

事故に遭い絶体絶命のところを救われた野良猫ダリ。

工房に引き取られてからは、至れり尽くせりの特別待遇。

悲運から一転して大幸運を手にした王子様ダリは工房の重鎮です。寒い日は暖房機の近くが彼の居場所です。

インタビューは、主にアントネッラさんが応じてくれました。

Q. チェッレリーニと検索すると、たくさんの日本語ページが出てきます。

チェッレリーニ社と日本との関係は1980年代まで遡ります。

チェッレリーニの創業者シルヴァーノ氏は何度も日本へ訪れ、日本を中心に広告展開をしていました。当時の顧客とはいまでも連絡を取り合っています。

Q. 2020年に東京でイタリア・モーダ展が開催されたとき、日本へ行きましたか?

コロナ禍だったので商品のみが日本へ旅をし、私たちは行けなかったの!

アントネッラさん、アレッサンドラさん、イザベッラさんが口を揃えます。

職人として私が!
営業をする私が!
将来を担う私が!

全員では行けないから、くじ引きでもしないと喧嘩になるわね。

師匠シルヴァーノ氏からは、お店と技術だけでなく、日本贔屓も引き継いだようです。

カスタムメイドについて。

チェッレリーニの特徴のひとつに、カスタムメイドが挙げられます。

ショールームには、工房で作られた商品が展示されています。気に入ったものが見つかれば、もちろんその場で購入できます。

幅といい、高さといい、形も気に入ったのに、色が自分に合わない。残念にも購入を断念することもあるでしょう。

チェッレリーニでは鞄の形をベースに、自分好みに近づけることができます。

* 牛革の種類
* 牛革の色
* 裏地に使うイノシシ革の色
* 縫い付ける糸の色
* 金具の色(ゴールドもしくはシルバー)

革の種類と色見本

選択肢がありすぎてどう選んでいいか分からない。自分の好みにどう近づければいいのか分からない。

そんな心配はご無用です。

いままで作ったものがカタログになっており、ページをめくりながら、あれやこれやと考えあぐねることができます。

ショールーム担当のアレッサンドラさんが相談に乗ってくれます。難しい注文のときには、工房からアントネッラさんを呼んできて、お客様、アレッサンドラさん、アントネッラさんの3人で相談しながら世界にひとつだけの鞄を作り上げていきます。

複雑な作業を引き受けると、アントネッラさんご自身が大変になるのに、「こうしたら素敵じゃない?」などと、自ら提案をして、たまにアレッサンドラさんが、呆れた表情で姉を見てる、なんていうシーンに立ち会うこともあります。

Q. カスタムメイドは、顧客の細かい注文に応えてくれるので嬉しいですが、作り手としては大変じゃないですか?

大変ですよ(笑)

でも、細かなカスタムメイドに対応しているお店なんてそうないでしょ? だから続けているの。ほかのお店と差別化をすることも意図しています。

それに、世界でひとつだけの自分だけの鞄を持てるなんて、素敵じゃない?

革が入手できない。

なるべく期日に間に合わせるようにがんばるわ。

でも素材がないと鞄作りはできません。

革を加工する工場はフィレンツェから車で90分ほどのところにあります。でも、そもそもの革が、コロナや戦争の影響で加工場に入ってきません。グローバル化されたことによる弊害がここにも現れています。

それでも10月から12月にかけて注文された商品は、すべて期日通りに発送できたわ。いつもそうとは限らないけどね。いま、やっと一段落したとこです。

Q. ネットでの注文も受け付けているようですね。

観光シーズンは来店して注文される方が多く、オフシーズンはインターネットからの注文が多いです。

2018年春に路面店から2階に移転し2年が経とうとしている時にコロナ禍に入ってしまい、そのときのショックは言葉にできないわ。

コロナ禍でわたしたちを救ったのはインターネットです。インターネットがなければ、私たちはとっくに店じまいをしていたでしょう。

日本で私たちのお店は信頼されているようで、インターネットで注文を受ける比率は、圧倒的に日本からが多かったです。

注文してもなかなか自分の好みに近づけない人もいますが、日本の方は、あたかも商品が手元にあるようにディテールにこだわった注文が多いので、いつも感心しています。

Q. 路面店をなくしたことによって、販売に支障は生じませんでしたか?

建物の2階にお店があるとは思わずに、通り沿いを探して結局見つけらなかったという話しを聞くこともあります。

路面店ではないので、ショーウインドウを見て来店される方はいません。そのため来客数は少なくなりました。

ですがその分、食べ物を手に入店する方はいなくなりましたし、興味を持たれている方の接客ができない、などの問題もなくなりました。

移転後は、チェッレリーニの名前を知って来店される方が大半です。ゆっくり商品を見て頂き、質疑応答も、注文も、じっくり時間をかけれるようになりました。職人も集中してモノ作りに励むことができます。

日本人とわたしの英語は、大抵の場合は、どちらも教科書レベルなので理解しやすく、なぜか分かり合えるんです(笑)

アメリカ英語は、わたしには聞き取りづらくて、そんなときは、娘のイザベッラさんを工房から呼んできます。さらに込み入った話し合いが必要なときは、イザベッラさんの彼氏がアメリア人なので、彼に助っ人を頼みます(笑)

Q. いまはどのような方法でお店を告知しているのでしょう。

ホームページ、インスタグラム、FB等から問い合わせが来ることもありますが、大半はありがたいことに口コミです。

ソーシャルを通しての広告活動。

チェッレリーニが投稿する写真は、光の使い方や被写体の撮り方が美しく見惚れます。

参照:インスタグラム

革だけでなく、いまは写真の撮り方も職人は勉強しなきゃいけないのよ。

ほとんどはアントネッラさんが撮影しるとのこと。フィレンツェ商工会議所で講習があり、そこで学んだそうです。

モデルを使い屋外で撮影したものもあり、よくみると、どこかで見たお顔。

アントネッラさんの娘さんイザベッラさんがモデルになっています。

参照:インスタグラム

リゾートの雰囲気が出ていて、避暑地としても知られているコモ湖あたりでシューティングしたのかと聞けば、

ふふふふ。それは光栄だわ。
実は、ビランチーノ湖で撮影したものなのよ。
すっごく寒かったんだから!

ビランチーノ湖というのは、フィレンツェから車で40分ほどのところにある、フィレンツェの飲料水が枯渇したときのための貯水池で、別段、なにもない場所。

いかにもリゾート風に見えるのにはカメラマンの腕もあります。モデルに光を当てるレフ板係はお母さんのアントネッラさんが担当したようで、想像すると微笑ましくなります。


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第3回目は、もう少し工房へと近づき、
アントネッラさんに
お仕事について色々と伺います。

最後までお読み下さり
ありがとうございます。

次回もチェッレリーニの工房で
お会いしましょう。

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チェッレリーニのホームページは英語とイタリア語のみですが、興味を惹かれた方!日本語のホームページもあります。

コンドッティというイタリアから厳選した商品を販売している日本の会社で、注文もできます。下段のリンクをご覧下さい。

フィレンツェにお越しの際には、わたしがご案内します!


インスタグラムでは
日常のイタリアを投稿しています。


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