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緑の中に村が点在する、トスカーナの田舎。その1 [小さな村とナイフ職人] 。*エノガストロノミア&アトリエ n.5*

『フード&デザイン』をテーマに、アトリエや工房を見学しつつ、「ワインを飲みながら、食事も楽しみましょう!」という、あちらも、こちらも、どちらも楽しそうなイベント。

前回までのお話しはこちらです。

15箇所で開催され、そのなかでも、ムジェッロ風ラーメンに惹かれて、ムジェッロ地方へ行ってきました。

今回は、せっかくの機会なので、あまり日の目を見ない、ムジェッロ地方をご案内します。

フランス王家まで血筋を広げた、ムジェッロの一族。

もともと銀行家。その後、大商人となり、ローマ法王を出し、トスカーナ大公にまで上り詰めた一族。

さらには、フランス、オーストリア、スペインの皇族と血縁関係を結び、欧州へと一族の手を広げた一族。

これは、かれらの家紋。

6つの丸薬の家紋とくれば、メディチ家。

生粋のフィレンツェ人じゃぁ、ないんですよ。田舎の出なんです。農業を営んでいました。

よし、おらぁ、フィレンツェにでるべ。
金融業でも、やってみっか。

ムジェッロの山から降りて、フィレンツェに引っ越してきたのは、あと少しで1300年に届くあたり。

フィレンツェでは、世界的に信用のある24金のフィオリーナ金貨を造幣し、名のある銀行や、素晴らしい腕をもつ職人たちが、活躍していた時代。

メディチ家は、新参者として銀行業に加わり、1300年後期には、メディチ家を大公にまでのし上げる、最初の礎である、老コジモが商才を発揮し、財を築くのです。

わたしです。

(参照:Wikipedia  "Pontormo" )

銀行家として成功を収めたあと、故郷ムジェッロにカファジョーロ別荘を建てます。

現在も、ほぼ変わらずに、城の姿を留めています。

参照:Wikipedia

ムジェッロ地方って、どこにあるの?

どの辺にあるのか、軽くお復習い。フィレンツェから約40キロ北上したところ。

右上に青色で"MUGELLO"と記載のあるのが、ムジェッロ地方。オレンジ色は、フィレンツェ。ローマは、ずっと、下です。

ムジェッロから北側は、ボローニャ。さらに、上には、ミラノ。さらに、さらに、上には、フランス。

これが、フィレンツェ共和国にとって、何を意味するのか。

北から南下し、フィレンツェ共和国に入るには、商人も、巡礼者も、使節も、必ずムジェッロ地方を通らなければならず、軍事的に非常に重要で、時と場合によっては、敵からの侵入を防ぐ砦となるのです。

ナイフ職人の街、スカルペリア。

そこで、フィレンツェ共和国は、1306年に、ムジェッロ地方に、防衛のための街を建設します。名は、スカルペリア [scarperia]。

メインストリート1本。並行して右と左に、1本づつ。これが街の大きさ。そんな小さい街なのに、フィレンツェのベッキオ宮殿と似てる、堂々とした、この建物が、街の真ん中に建っています。

フィレンツェ共和国により選出された人物が、スカルペリアを代理統治。壁にごちゃっと、埋め込まれているのは、歴代代理統治した一族の家紋。

中庭に入ると、こちらも、統治した一族の家紋のコレクション。鮮やかなフレスコ画で壁一面に描かれている。

ここも、最初は真っ白な壁だったろうに。我はこちら。あなたはあちら。と、空白のところを見つけては、それぞれの一族が描かせたのでしょう。

入り口の真っ先にある、この紋章。
中央は、当然のごとく、フィレンツェ共和国のシンボル。

右側はグエルファ、左側はフィレンツェ国民の紋章。グエルファに関しては、また別な機会に、物語りたいです。

スカルペリアが建国されたのは、軍事目的のため。軍事に必要なのは?

武器。剣。

いまでもスカルペリアは、ナイフが有名で、この小さな街に、工房を兼ねたお店が並んでいます。

あともう少しでフィレンツェ共和国に到着だ!
長旅も、あともうちょっと。
やれ、やれ。
どっこいしょ。
スカルペリアで、まずひと一息しようか。
それと、ここにきたら、ナイフを買わなくちゃね。

スカルペリアに宿をとり、長旅の疲れを癒し、ナイフを購入する旅人も多かったようです。

ナイフは、食べるため、防衛のため、森を歩くときに枝を取り払うため、万能な道具で、それでいて、軽くて小さい。必要なくなったら、売り払うことも容易。

軍事のための剣はもちろん、旅人たちにとって重要な、ナイフの需要もあったのです。

ここは、1800年代から続いているナイフ店。

スクオーラ・リフージョで説明していた、彼のお店です。1895年から、同じファミリーが受け継いでいます。

メインストリートと並行して走る、小さな道に建つお店。

ここは、私のお気に入りのお店。

ナイフを製作するための様子を、デモンストレーションしています。

ナイフの柄の部分は、動物の角を使うものもあり。

角の先のところを使った、キーホルダー。1個、10ユーロ。

オリーブの木を利用したものもあり。

トスカーナ州には、厚み4センチの、赤身の牛肉を、塩だけで焼く(炭火が理想)、Tボーンステーキというお肉料理があります。日本で熟成肉と呼ばれているもの。

このお肉を食すには、切れ味の良い、ナイフが必要。スカルペリアのナイフは、最適なのです。

Coltello dell’amore 愛のナイフ。

ナイフは、切るものなので、縁を切るもの。と言われています。

でも、スカルペリアのナイフは「愛のナイフ」。

婚約するときに贈られたナイフで、二人の誓いをナイフに刻み込み、持ち手のところには、動物の骨で作られた白い円が埋め込まれており、魔除けとされていたそうです。

参照:Coltelleria Saladini

 スカルペリアは、ナイフの街。というのは、知っていたけど、「愛のナイフ」は、わたしも初めて知りました! 

ナイフに施されいる絵も可愛い。今度行ったときに、チェックしてみよう。

スカルペリアを後にして、もう少し、ムジェッロ地方を回ってみましょう。

連載にも関わらず、前回から間が空いてしまったので、ムジェッロ地方は続編として、次回もご案内します。


今週は、ベニスで開催中の、アート展示会「ビエンナーレ」を訪問しておりました。規模が大きいので、今回は半分。

11月下旬まで開催しているので、もう半分は秋以降かな。こちらも、いつか、ご案内したいと思います。

興味のある方は、インスタに投稿しているので、ご覧ください。

最後まで読んでいただきまして
ありがとうございます!

次回もムジェッロで
お会いしましょう。

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