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家を浮上させて水害から守る 〜耐水害住宅という新常識〜

ちょうど昨日の朝に見たテレビ番組で特集が組まれていました。住宅のゲリラ豪雨などに起因する水害問題に対する取り組みについて。一条工務店の耐水害住宅の技術が紹介されていました。

今回は理系向けの記事として、実際に出てきている技術トピックを紹介します。これが実現できれば、かなりの社会貢献につながると思います。

環境変動の背景について

地球温暖化などを背景に、突発的に引き起こされる「ゲリラ豪雨」と呼ばれる異常気象。日本でも馴染みのある言葉になりつつあります。日本では1時間に50ミリ以上の豪雨の発生回数が増加傾向にあります。

近年では、市街地や住宅街に降った雨の排水が間に合わないことで発生する「内水氾濫」も問題に。実は、内水氾濫の被害の方が河川の氾濫による「外水氾濫」よりも多いというデータがあります。つまり、日本のどこでも水害に遭う可能性があると言えるのです。

山々に囲まれた立地条件の日本は、昔から河川より低い土地に街を誘致してきました。ゲリラ豪雨になると河川から水が溢れるため、川沿いの街が水害に遭いやすいのです。市街地などの「内水氾濫」に加え、こうした立地的背景もあり、10年間で全国の約97%もの市町村で水害・土砂災害が発生しています。

水に浮く家の開発

家が水没するような水害に見舞われたとき、あえて家を水で浮かせるという大胆な方法で被害を抑える。これが技術の肝です。開発当初は失敗作と考えていたそうですが、そこから逆転の発想で開発に漕ぎ着けました。

ポールと家は中継装置で繋がれているため、家が浮上しても流されません。水が弾いたらほぼ同じ位置に着地します。

この耐水害技術には、他に大きく3つの危険に対する対策が施されています。

■浸水
・床下の換気口からの浸水を防ぐ弁
・壁面防水処理
・隙間を無くした玄関ドア
・高水圧に耐えて水を侵入させない窓

■逆流
・排水管からの逆流を防ぐ逆流防止弁

■水没
・エコキュート
・内外部電気設備を高い位置に設置

この辺はさまざまな工夫が施されているそうです。例えば、高水圧に耐えて水を侵入させない窓については、車の設計などを参考にされたそうです。

個人的には、家の浮上中に流木などが下に挟まるなどしたらどうなるか、などの素朴な疑問点もありますが、その辺の課題も含めて、なかなか新規性のある技術だとは思いました(本件は気候変動アクション環境大臣表彰などを受賞しています)。

オランダに学ぶ気候変動への適応

場所は変わってオランダ。オランダは低地であるがゆえに、高潮や洪水に悩まされてきました。古くから水車や堤防を利用して水害から国土を守ってきましたが、国土の4分の1が海抜以下の低地であるため、数々の水害に見舞われてきました。

昨今では、地球温暖化の影響でゲリラ豪雨や冬の雨が増えてしまい、従来の方法では解決できない問題として危機意識が共有されてきました。

そんな中で提案されたのが「フローティング・ストラクチャー」です。今回紹介した一条工務店の水に浮く家と原理的に近い、まさに水にゆだねる解決方法です。

例えば、首都のアムステルダムには運河の上にフローティングハウスが建てられています。耐久性や断熱性に優れ、高い質の居住空間だそうです。水面上昇すれば、それに合わせて家も上昇するため、洪水や海面上昇に影響されないという特徴があります。

原理を船で例えてみます。船が水に浮くことは、船の重量が水に支えられているということ。つまり「船による重力」「水が船を持ち上げる力」が釣り合うということです。

この「水が船を持ち上げる力」のことを「浮力」と言います。水中で物体が受ける浮力というのは、その物体と同じ体積の水の重さに相当します。物体の重さよりも浮力が大きければ浮上し、小さければ沈みます。

同じ材質であれば浮力は物体の体積に比例します。例えば、水に浮かんだ木片を沈めようとしたとき、小さい木片は簡単に沈められますが、大きい木片は浮力が大きいため、沈めることは困難です。

つまり、軽量化を図りながら体積を大きくできれば、巨大な家でも水に浮くことが可能になるのです。

おわりに

今回は住宅街などで発生する水害に対する解決策(家を水で浮上させる)について、一条工務店の取り組みを紹介しました。

日本に留まらず、水害による住宅の損壊はメジャーな存在になりつつあります。今回の紹介した技術もこれからの主要なキーワードになると思います。

ぜひ課題点なども克服して、一般的な普及につながってほしいところです。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに寄り添えたら幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

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