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「食」、「色」、「職」

食文化と聞くと何を思い浮かべるだろう。

自然、言語、地域、背景、経済、ビジネス、アイデンティティ、コミュニティ、多様性...などなど。

実際にレストランで働いてなくても、「食」には様々な要素があることは容易に想像できるだろう。決して「味」が全てとは限らない。

素材

素材一つとっても、その素材の味から形、新鮮度、匂い、柔らかさ...など「モノ」的な側面もあるし、その素材はどこから来たのか、誰が作ったのか、どういう風にして育ったのか、どういうルートで送られてきたのか...と「見えない部分」もたくさんある。

国によって、育て方も異なる。日本人が米を育てるときとドイツ人が小麦を栽培するときの育て方もまるっきり異なるだろう。(もちろん似ている部分もある)。

文化が異なれば、人の食に対する意識も異なるだろう。私たちが料理を見るとき、決して同じことをみているわけではない。

準備

「食」は、食べる時だけではない。食べる前から始まっているのだ。

料理を作るときもその作っているプロセスに感じる気持ちが異なるだろう。日本人が魚をおろして、酢飯の上にかぶせる時と、イギリス人がりんごを切って、パイ生地の上にトッピングして焼き上げる時では考えていること、感じることが違う。(寿司を作っている時、あなたはきっと旬で脂がのって、美味しいだろうと感じるとか、パイを作っている時、小さい頃おばあちゃんと一緒に作ったその時の記憶が思い浮かぶかもしれない。)

子供がいるいないでも、選択肢が変わってくるだろう。ターゲットによっていくレストランも異なる。

保存

食べた後も考えてみよう。一般的に、私たちは冷蔵庫に保管することが多い。長期的に保存するときは、砂糖漬けや塩漬けにする場合が多いだろう。

塩漬けを例にあげよう。韓国では保存方法としてキムチにする。スペインでも同様に塩漬けにする場合が多い。なぜなら、多くのスペインの人たちはしょっぱい食べ物が好きだからだ。

実際、これには気候や場所も関係する。もし暑い地方であれば、塩漬けにしても腐ってしまう可能性もある。それ以前に食糧が豊富ということもある。

ここからわかるように、その土地の特徴によって、私たちの文化や生活様式、そして性格まで影響する。

文明の構成要素

言葉、物語、宗教など文明には様々な要素が含まれている。そこにも「食」が関係してくる。

キリスト教を例にとろう。キリスト教ではパンはイエスキリストの肉体を、ワインはイエスキリストの血を表す。オイルを額の上にたらすことは神様からの祝福を象徴する。

言葉も「食」に関係する。例えば、日本語で「ご飯」(白いほっかほかのお米がお椀の上によそられている場面を想像してみよう)は「ランチ」や「ディナー」などをまとめた「食べること」を意味する。

このように、食は一見関係のなさそうな言葉や宗教にも影響しているのだ。

経済の発展

現在の農業を行う人はかなり少ない。平成30年の農業就業人口は175万人である。 しかし、100年前は大半が農家であった。200年前なんぞほとんどである。

それでは誰が食糧を作っているのか?

食糧を作るにせよまず土地が必要である。その土地はもしかしたら自分の土地かもしれないし、他の人から借りた土地かもしれない。借りた場合、その土地にはオーナーがいて、土地を借りるにはその土地のオーナーとの関係性が必要になる。ここから、食糧を作る時でも、ネットワークが必要となり、経済を回す必要があることがわかる。

誰が家で料理をしているのか?

多くの日本の家庭では女性が料理を作っている場合が多い。ここから食文化にはジェンダーが含まれていることもわかる。

コミュニティ

食にまつわる伝統は多い。日本では、家族全員がテーブルを囲んで一緒に「いただきます」と言ってから食べる。私たちは当たり前のことだと思うが、他の国の人からしたら、それは全く当たり前ではない。

キリスト教の人たちはご飯を食べる前に手を合わせて神に祈る。これによって帰属感を得る。

私たちは同じ動作をすることで、「繋がり」を感じる。この共通点が「帰属感」を生み、コミュニティを形成する。

あなたの友達に辛いものが好きな国の人(韓国、メキシコ等)がいるとしよう。あなたは辛いものが平気で友達と一緒に辛いものを食べると想定する。あなたが辛いものを食べれると知ると、彼らも嬉しく感じる。このように、少しでも自分の文化(当たり前だと思っている価値観)に同調すると、帰属意識が芽生え、急に距離が縮まることが多い。

私たちは繋がりに依存しているとも考えられる。例えば、卸売業者だ。肉の卸売業者は実際に牛を育てていない。しかし、卸売業者も肉の流通に携わり、卸業者が直接消費者と繋がり、流通を加速させるという側面を持つ。このように、私たちはネットワークの中で生きているのだ。

食糧のトレードをすることで私たちはコミュニティを形成しているとも言い換えることができる。

食とコミュニティの観点からもう一つ例を挙げる。祭りだ。

祭りがあると、世界中の料理が一箇所に集まる。そこで繋がりが生まれるのだ。

食がコミュニティを生むのだ。

終わりに

食事は私たち人間の3大欲求のうちの一つである。それぐらい大切でもある。食が人を結びつけ、ネットワークを形成し、経済を回す。

一見、食なんて重要ではないと思うかもしれないが、食には様々な面があり、私たちの生活を大きく支えている。

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