見出し画像

ドラマW 『そして、生きる』互いに両親を亡くした男女、震災後のボランティアで出会う

※この記事は一部センシティブな内容を含みます


2019年にWOWOWで放送された
東日本大震災後のボランティア活動で出会った男女の、
約8年間に渡る紆余曲折ラブストーリー
全6話を初見し終わったので感想を綴っていく


【 ざっくりあらすじ 】

幼い頃に両親を事故で亡くし、
たったひとり生き残った 瞳子〈有村架純〉
盛岡で理髪店を営む叔父〈光石研〉が
瞳子を実の娘として男手ひとつで愛情深く守り、すくすく育つ

やがて19歳になった瞳子
女優の夢を叶える為にオーディションに向かう前日、東日本大震災が発生

その後 友人のハン〈知英〉とともに
気仙沼へボランティアとして活動を始める中で
東京の大学生 清隆〈坂口健太郎〉と出会う

彼は子供時代 父を病気で、母を自死で亡くしており、人生もがいていた___


2011→2019

瞳子の幼少期ダイジェストを除き、
物語は2011年から2019年の
約8年間の出来事が描かれている

リアルタイムで震災を知っている、
主要人物たちと世代が同じだったり
死別や ほろ苦い恋愛経験をしたことがある人ほど
物語に共感できる作品だと思った


私は14歳の時に愛知で東日本大震災の瞬間をリアルタイムで体感して、
テレビで津波の恐ろしさや
遺体の大まかな数を伝えるニュースがあまりにショッキングで、すぐテレビを消したことをふと思い出した

あの日、金曜日は定期的に通っていたメンタルクリニックの帰宅直後
まるで目眩のような ぬるっとズレこむ揺れで、
そんな感覚 経験したことがなかったので自分の体調がおかしくなったのかと不安に思っていたら、隣の部屋にいた祖母に声をかけると全く同じ感想だった

それからだんだん事態を把握していくにつれて
ここは変わらない日常が流れているのに
テレビをつければ非日常な光景ばかりで怖かった
長年起こる起こると聞かされ続けていた東海地震のことも頭を過って不安になったり

他県の自分はテレビを消せばすぐ現実から離れられたけど、
被災した方々は嫌でも体感せざるを得なかったんだよなと
その差がなんとも言えず、戸惑ったことが忘れられない

なので瞳子たちのようにテレビを観て
災害ボランティアに参加しようと行動に移せた方々を尊敬する


あとまだ2011年辺りはガラケー率高かったよな、
でも同時にスマホに移行する人も多かったよなとさりげないシーンで思い出したりもした


ちゃんとあのとき話していたら…

なるべくネタバレしないように書きたい

瞳子 と 清隆は 互いの過去を知ったのち
キラキラと夢を追いながら晴れて恋人関係になって
その初々しさに微笑ましい気持ちになれるシーンがあったけど、
瞳子は ”とても大事なこと“を 清隆にちゃんと話すことなく距離を置く展開になっていく


それは相手の夢を思ってのことだとしても
一人の問題ではなく二人の問題なのに…と思ってしまったし、
あのときちゃんと話していたら
二人はどんな人生を歩んでたんだろうと

でも瞳子が最終回で話していた言葉がすべてなのかなと、
他人がとやかく言うことでもなく
生きていくってそういうことかとも思えた


ほんと脚本家の岡田惠和さんが
かなり厳しい試練を二人に背負わせるから、
「もう...そんな…辛いって」と思いながら行く末を見守っていた

今まで岡田さんの作品ってほんわか穏やかなイメージが強かったから、
このドラマはなかなかのビターテイストで
でもちゃんとお馴染みの温かさも感じて好みの塩梅だった


叔父と姪、お父ちゃんと娘

光石研さん演じる叔父/お父ちゃん、
一言でいうと最高でした

やさしく、時に厳しく、でもとびきり温かく
瞳子を見守り続けるキャラクターが素敵としか言いようがなかった


とても辛く悲しい思いを味わった時の病室、
取り乱して激しく落ち込む瞳子の背中をさすりながら

「うん、うん、ごめんな…ごめん」

と寄り添うシーンが特に印象的

お父ちゃんのせいじゃないのに、
この時 謝ってたのは娘の笑顔を守る約束を破ったことに対してだったのかなと
その愛情深さ、父心に感動した


それに死別間近のやりとりは
私も死別経験があるので胸が詰まったけど、
最期まで愛しかないお父ちゃんだった
どのシーンもお気に入り

10年以上 光石さんのことを推し俳優として膨大な出演作追ってきたけど、
その中でもかなり好きな役柄だった


本物の母と息子

清隆の実母が自死したことで、
叔母〈南果歩〉が引き取り
何が何でも幸せな子どもに育てると心に決めた育ての母の葛藤も描かれていた

裕福で愛情たっぷりな家庭で反抗期もなく育った清隆だったが
やはり自身の生い立ちのことが尾を引き、
さらには 安定は手に入るけど何もときめかないエリートとして生きる道に違和感を覚えていた

震災後のボランティアで人と触れ合いながら
人の為に動くことにやりがいを感じて熱中する息子を応援したい、
でも安定した幸せな人生を歩んでほしいという
揺れる母心

一方でもがいて、もがいて、傷ついて、救われて
やっと自分の存在意義に気づく清隆もよかった

血が繋がらなくても親子だった


二人の立場

岡山天音さん演じる 瞳子一筋な後輩 真二(のちに…)、
知英さん演じる 瞳子の親友 ハン

二人とも始めはとびきり明るいキャラクターで和ませられる場面もあったけど
どんどん話が進むにつれてかなり葛藤を感じる難しい立場だと感じた

二人がそれぞれいたから 瞳子と清隆 は生き続けられた側面もあったと思うし、
必要不可欠な二人だったと思う


妻子を亡くした気仙沼の理容師

気仙沼で瞳子たちが出会った理容師 坂本さん〈萩原聖人〉、
辛い思いを経験してもボランティアの面々への感謝と笑顔をけして忘れないキャラクターだった

それだけでなく被災者の立場として
現実と当事者の気持ちをしっかり清隆に話すシーンも印象的だった


映画版の編集があまりにも酷すぎる件


この作品は

全6話のドラマ版と、
ドラマ版を再編集&未公開映像を新たに追加した劇場版

2パターンが存在する


私はドラマから入って
そのまま劇場版も観たけれど、
正直に言わせていただくと まあ酷い

具体的になにが酷いかと言うと、


さすがに はしょりすぎ


そもそもドラマ版をカットする所なんかないくらい まとまりがあった、
そのまとまっていた状態をわざわざ崩して
せっかくの素晴らしい素材を台無しにする編集に感じてしまった

ふとしたシーンだったり 間 がどれだけ大切なのかが分かったし、
これは足早に終わらせるシーンじゃないだろ…というシーンがばっさり簡略化されていたりして
とても残念な気持ちになった


言ったらもう劇場版はダイジェスト、
説明不足に感じる部分が多く
素敵だったはずのキャラクターが浅く感じて感情移入しづらかった

てかお父ちゃんの理髪店の常連さん、
お父ちゃんと常連さんと瞳子を交えた会話に和ませられながら
年月の経過を感じることができたのに
大幅カットされてるのがマジで納得行かなかったなぁ


本当にドラマ版は素晴らしかったので
もしまだ観たことがなく、ご興味がある方には

絶対的にドラマ版の方を強くオススメ致します!


ドラマ版配信


DVD-BOX


この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?