見出し画像

AIでクリエイティブは楽になるのか限界突破するのか?/農業全然サスティナブルじゃない、って話(コンワダさん52週目)

 こんにちは、株式会社アーキロイドのコンワダです。3連休中日、皆様いかがお過ごしでしょうか。今週も社内で話題になった事例(コンワダさん)からいくつかをご紹介します。バックナンバーはこちら

”画像の外側”を生成できる「stablediffusion-infinity」

ヨハネス・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」(画像:記事より)
画像の”外側”に背景が追加された(画像:記事より)

―――概要
 本連載で度々取り上げてきたStable Diffusionの新ツールです。既に上記2枚の画像でおわかりのように、今回登場した「stablediffusion-infinity」は元となる画像の構図や絵柄を維持したままイラストを描き足していく”アウトペインティング機能”でどんどん画像を拡張できるツールです。それにしても素晴らしい精度ですね。

―――この事例について
 0→1を創ることと、1→100をつくることはどちらが優れた才であるかという議論はどんな世界にもあると思います。仮に元となる画を作ることが0→1の才、周辺の画をつくることが1→100の才だとしたときに、Stable Diffusionは発想(言葉)を絵にしてくれるので、1を描く才がなくても0.1の発想ができれば1を生み出せるし、1→100を描く才能がなくても1.1の発想で100を生み出すことができます
 AIを使った創作が、これまでに比べてステップが小さくなるということなのか、それとも1→10,000というように限界が広がるということなのか。答えはないと思うので、私の理想を言えば両方です。これまでより楽に創作ができて、これまででは想像/創造できないものが創れるという世界。その中でどのようにAIを使ってどこを目指すか、という評価選択の自由があることが豊かだと思います。その一方でどちらも起こり得ないかもしれません。
 敢えて2つを分けて思考してみましょう。前者はクリエイティビティが離散的なものから限りなく連続的なものになると仮説を立てられます。これまで、クリエイティビティは0から100の中で、離散的に役割を配置されてきました。一人の天才によって0→1が生み出され、他の優れた才を持った人々によって1→100のステップを段階的に登っていくわけです。これまでは出力に1の才能が必要で、0.1の才能では発現できなかったクリエイティビティが、AIをテコに画像生成(絵画や写真)においては0.1でも発現できるようになりました。AIの精度や適用範囲が広がるたびにこの0.1は更に細かくなっていきます。0.00000001くらいになれば全体の100からみたときには滑らかな連続的なものになっているでしょう。一方で記号にすぎないこの数値の刻みは無限後退可能なものです。たとえそれが0→0.00000001であったとしても、その小さな1歩における才能が全体を左右する可能性は否定できません。AI画像生成にインプットする文章の「詠唱順序」を皆がこぞって磨いているのがそれでしょう。
 後者は、私たちが長年の経験で0~100のレンジでしか物事を見れない、生み出せないとした場合に、今は100の範囲の中でできるだけ細かく切り取って微細な差異を競う戦いになっています。そんな世界にAIは平気で10,000の角度から玉を投げてくるという話です。でもそれを10,000だ!と評価できるでしょうか。AIが「これは人間に想像/創造できないものです」とすごい絵画を提示してきたとしても、私からしたらそもそも人間の想像力/創造力が豊かすぎて、「こりゃ確かに人間に生み出せないものだなぁ、創作の質が伸びた・高まった!」と評価できる気がしないのです。人間に生み出せないものを人間が評価できるのか想像がつきません。結局0.00000001だろうが1歩が必要かもしれない話と一緒で、どんなアウトプットも最大を100に標準化して位置づけてしまうのだろうと思うのです。

 絵画とは違いますが、将棋の世界では藤井聡太五冠がAI将棋で勉強していることは有名な話ですよね。歴代のどの棋士よりも強いのだとしたら、人間の棋力の限界値をAIが100→10,000に引き上げてくれてたのかもしれません。将棋の1盤面における手数には限界があるとはいえ、その組み合わせは星の数、勝負か続く限り棋譜は無限です。しかし、上で述べたふわふわした話とは違って1歩(1手)の定義も、過程と結果の相関も明確ですから、その進化を人間が評価可能だったのは幸運な話だと思いました。

その他の事例

 夢想が長くなってしまいましたので、ここからはサクサク行きます。

「Stable Diffusion」をPhotoshopで使えるプラグイン

 またしてもStable Diffusionに関するニュースです。発表されたのが8月だとは信じられないほど話題の尽きないツールです。「The Stable Diffusion Photoshop Plugin」はその名の通りAdobe Photoshopで使えるツールです。アドビユーザーの皆さん要チェックです。

画像1枚から3Dモデルを生成する「LOLNeRF」 by Google

 Googleが画像1枚から3Dモデルを生成する「LOLNeRF : Learn from One Look」の研究成果を発表しました。メタバースなどの3Dモデル需要の高まりへの対応として期待が高まっています。各社がこぞって類似技術の研究をしていますが、まだ確立された手法はないそうです。AI画像生成に続いて次なる発展が期待される分野です。

「サイバーパンク桃太郎」完結!

 8月13日のコンワダさんで紹介した「サイバーパンク桃太郎」が完結しました。この作品は漫画原作者Rootport先生が画像生成AI「Midjouney」を使って制作した漫画です。「名無しの権兵衛」と書いて「アノニマス」と読み、「脳垢」と書いて「キャッシュ」と読む。ルビがサイバーパンク心をくすぐりますね。なかなかの大作で、実はまだ私も読み終わっていません。このnoteを投稿したらゆっくり読もうと思います。

建設用3Dプリンタードローン

 インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の研究で、ハチを参考にして作られた飛行しながら3Dプリントするドローンの事例です。ICL航空学科のMirko Kovac教授は「少なくともドローンが自律的に連携して建物の建設と修理を行えると証明した」、「将来的に手の届きにくい箇所の建設や修理に役立つ可能性がある」と述べています。本研究の論文はNatureにも掲載されています。

食糧とエネルギーは直結している

 今週社内で最も衝撃的だった事例農業は光合成で植物を育てているのでサスティナブルだと思われがちですが(みなさんは違うかもしれませんが私は少なくとも漠然とそう思っていました)、実はすごいエネルギー消費産業です。化学肥料を作るにも、トラクターを動かすにも大量の化石燃料に支えられており、米を1キロカロリー生産するのに1.8倍ものエネルギーを消費しているそうです。農業全体では生み出すエネルギーの2.79倍のエネルギーを消費、GDPの1.4%を締める一方で使用エネルギーは全産業の7%とエネルギー消費過多。農業がなくなったらご飯食べられなくなるのに、農業が全然サスティナブルじゃないという衝撃のnoteでした。3分もあれば読み終わるのでぜひ読んでみてください。

まとめ

 毎週のように「急速な進化と普及を見せているAI画像生成事例」といったようなことを書いており、もはやコーナー化しつつありますね。最後の事例は、実は先週のコンワダさんで取り上げた自動果物収穫ドローンについて改めて話しているときにメンバーが持ってきたnoteです。事例集をアウトプットすることでまた新たな会話が生まれ、新たな事例に巡り会える、いいサイクルです。皆様も週明けの雑談にコンワダさんを使ってもらえたら幸いです。
 最後に「スキ♡」を押してくださると、連載の励みになります。よい週末を。

(文責:つ)


「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

【バックナンバー】こちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?