きなこむ

詩を書くのが好きです。 書くことで何か整う気がするからです。 でもあまり読むことはしま…

きなこむ

詩を書くのが好きです。 書くことで何か整う気がするからです。 でもあまり読むことはしません。 私にとって、詩はとても自分勝手なものなんです。

記事一覧

祝福

何が欲しい? と問われたら 祝福が欲しい、と僕は答える 祝福さ、祝福だよ それは敗北を勝利に変え 悲しみの涙を笑顔に変える 雨は優しくなり、空は青くなる それはどこ…

きなこむ
13日前
2

ブラック・ミュージック

『黒人の音楽は  どこにある?』 彼らは跳ぶ、跳ねる ツイストし、高らかに叫ぶ 跳ねて、跳ねて、跳ねて 太陽はカンカンだ カンカンだよ、君 『黒人の音楽は  どこにあ…

きなこむ
4週間前
1

会社員 「雨にうんざりする  今日も雨、明日も雨  明後日もきっと降るだろう  靴は濡れるし一日暗い  週末のテニスはキャンセルときた  梅雨どきに楽しみなどひとつも…

きなこむ
1か月前
3

へそ曲がり

へそ曲がりと女に振られて 鏡の前に立ってみりゃどうだい たしかに曲がってら! ああ、こりゃ見限られても仕方ない 道行く女を見れば どいつもこいつも美味そうだ ネット…

きなこむ
1か月前
2

壁とわたし

私は何者でもない、と 誰に問われるでもなく答えると 白い壁が大きく笑い声をあげた つられて私も笑い出す そうさ、噴飯ものだ 手にもったチョークで 白い壁にびびびと赤…

きなこむ
1か月前
3

世界が

世界が 俺のものになればいいのに そうすれば 世界は平和さ 世界が俺のものになれば 一番尊いのは愛だ 次になにを選ぶ? 俺は音楽を選ぶ 芸術の中で 音楽より尊いものはな…

きなこむ
2か月前
1

すでに多くが交りを終え 出遅れたものたちが川を舞う 誰かいないか、誰かいないか あるものは飛び回り あるものは葉の上で羽を休めながら 相手はいたか、相手はいたか そ…

きなこむ
2か月前

アラスカ、星野道夫

アラスカ、には 行ったことがないが 気持ちの良いところだろうなと思う 星野道夫の写真が 気持ちのいいものばかりだから 彼の取る写真にも 連ねる文章にも 正しく風が吹い…

きなこむ
2か月前
3

わが子

わが子の小さな手をおもう 楽しみと興奮の入り混じった笑顔をおもう そこらを駆け回る足音をおもう ふとんについた涎のしみをおもう まるいやわらかい小さなおしり 泣き顔…

きなこむ
2か月前

鎮座する石

かみさまがおわす ところにぼくはいて ならばもう幸せじゃないかと 問われるけれど そうではないんだな 幸せの『し』の字もないよ 正しくあろうとすれば 面倒なことばかり…

きなこむ
2か月前
1

ニワゼキショウ

オオイヌノフグリは盛りを過ぎて キツネノボタンもとうに熟した カタバミは爆竹を空に捧げ オオバコがにょきにょきと頭角を現す そしてニワゼキショウ 草原を見渡すとそこ…

きなこむ
2か月前
3
祝福

祝福

何が欲しい? と問われたら
祝福が欲しい、と僕は答える
祝福さ、祝福だよ

それは敗北を勝利に変え
悲しみの涙を笑顔に変える
雨は優しくなり、空は青くなる

それはどこからのものか
誰からのものか知らん
元をたどれば神さま?
親しい人を通して?
あるいは道端に転がる石に宿る
   : )
偏在し、遍在するものだね
ああ、ぼくは祝福が欲しい

日常に飽いて
道端の石を蹴飛ばせば
残念それはからっぽだ

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ブラック・ミュージック

ブラック・ミュージック

『黒人の音楽は
 どこにある?』

彼らは跳ぶ、跳ねる
ツイストし、高らかに叫ぶ
跳ねて、跳ねて、跳ねて
太陽はカンカンだ
カンカンだよ、君

『黒人の音楽は
 どこにある?』

ホップする白い鍵盤、黒い鍵盤
シェイクする金管、ストンプする木管
ドラムは腹を抱え、大笑いし
雨雲はゴウゴウさ
ゴウゴウだよ、君

黒人の音楽はどこにある?
方々歩けど
見つかりゃしない
そりゃそうさ
そこかしこにあるか

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雨

会社員
「雨にうんざりする
 今日も雨、明日も雨
 明後日もきっと降るだろう
 靴は濡れるし一日暗い
 週末のテニスはキャンセルときた
 梅雨どきに楽しみなどひとつもないよ」


「つまんで、挿されて
 わたしはいま泥水の上
 濁った田水はやがて澄んで
 空を移す鏡となる
 とめどなく降り注ぐ雨
 わたしはそれがたまらなく嬉しい」

店主
「不機嫌そうな人も
 そうでない人もみな
 ひとしく足元

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へそ曲がり

へそ曲がり

へそ曲がりと女に振られて
鏡の前に立ってみりゃどうだい
たしかに曲がってら!
ああ、こりゃ見限られても仕方ない

道行く女を見れば
どいつもこいつも美味そうだ
ネットを覗けばほら
こっちもあっちも美味そうだ

声をかけようと踏み出せば
途端にへそが動き出す
画像をほうぼう渡りあるけば
その都度へそが動き出す
むずむず、むずむず
へそ大爆笑、大よじれ

男でごめんなさいねと
お天道様を仰げば
仕方が

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壁とわたし

私は何者でもない、と
誰に問われるでもなく答えると
白い壁が大きく笑い声をあげた
つられて私も笑い出す
そうさ、噴飯ものだ

手にもったチョークで
白い壁にびびびと赤い線を引いた
お礼のつもりだった
だが壁は悲鳴を上げた

なんだい、たいしたことない奴め
わたしは、彼に向って
さらにおしっこをかけてやった!

おともの音楽:細野晴臣、”Non-Standard Mixture”

世界が

世界が

世界が
俺のものになればいいのに
そうすれば
世界は平和さ

世界が俺のものになれば
一番尊いのは愛だ
次になにを選ぶ?
俺は音楽を選ぶ
芸術の中で
音楽より尊いものはない
(画家小説家舞人その他大勢からの抗議)

Classicは侮れない
真正面から向き合うと底知れない闇がある
POPSは最も強い
人数の多さがそれを物語る
ROCKは人々を支えている
たとえまるで興味のない人をすら
JAZZ、J

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蛍

すでに多くが交りを終え
出遅れたものたちが川を舞う
誰かいないか、誰かいないか
あるものは飛び回り
あるものは葉の上で羽を休めながら

相手はいたか、相手はいたか
そこで休んでいていいか
もっと光らなくていいか

   *

けしかけるお前もほら
出遅れた物見客
せめて彼らの幸福を願え
相手の一人も見つかりますように、と

おともの音楽:Bon Iver, "Salem(Live at Barcl

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アラスカ、星野道夫

アラスカ、には
行ったことがないが
気持ちの良いところだろうなと思う
星野道夫の写真が
気持ちのいいものばかりだから

彼の取る写真にも
連ねる文章にも
正しく風が吹いている
空はフェアだ
誰に対しても優しく厳しい

アラスカ、には
行ったことはないが
その印象は裏切られることはないだろう
かの土地のあらゆるところ、
人々に親しいトウヒ
背の低い地衣類
冬ごもりをする生き物たち、に
彼は遍在して

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わが子

わが子

わが子の小さな手をおもう
楽しみと興奮の入り混じった笑顔をおもう
そこらを駆け回る足音をおもう
ふとんについた涎のしみをおもう
まるいやわらかい小さなおしり
泣き顔、止めるすべのない癇癪
バナナが欲しい、バナナが欲しい、バナナが欲しい…

七月には七夕の行事があるという
短冊を持ち帰ってきた
何を書こうか
何を願おうか
さて君は何が嬉しい?

おともの音楽:Derek Trucks Band, ”

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鎮座する石

鎮座する石

かみさまがおわす
ところにぼくはいて
ならばもう幸せじゃないかと
問われるけれど
そうではないんだな
幸せの『し』の字もないよ

正しくあろうとすれば
面倒なことばかり
ただ、間違ってはいないと
自己肯定感のひとさじがあって
少し安心するだけ

かみさまとは鎮座する石のようなものさ
お日さまであたためられた巨大な石
そのそばにぼくはいて
幸せの『し』の字もないよ
そこにいるだけ

おともの音楽:D

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ニワゼキショウ

ニワゼキショウ

オオイヌノフグリは盛りを過ぎて
キツネノボタンもとうに熟した
カタバミは爆竹を空に捧げ
オオバコがにょきにょきと頭角を現す
そしてニワゼキショウ
草原を見渡すとそこかしこに
彼らもきっと今が最盛期
晩春と初夏のはざま
草原を見渡すとそこかしこに咲く

おともの音楽:Derek Trucks Band, ”Sierra Leone”