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短編集(2024)

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#私の作品紹介

夜。

夜。

その夜はとても激しく雨が降った。

手元のスマートフォンで時間を見ると深夜ニ時。築六〇年の木造アパート。立て付けの悪い雨戸。ガタガタと揺れ、定まらない。しばらくぼうっと宙を眺めていたが眠気が再び訪れることはなく、諦めて上体をむくりと起こした。

シパシパと目をまばたかせ、ぼんやりとドアの方を見た。目はまだ慣れてなく、ただそこには闇があるだけだった。

その夜、その時、不思議な感覚に陥り、その瞬間だ

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18歳、6月の夏。

18歳、6月の夏。

ッパーーーン!!

乾いた音が夏の夕空に響く。僕は審判のコールに合わせて冷たい金属のコントローラを操作する。ストライク、と。センターの後ろの移動式のスコアボードは僕の操作通りに黄色の丸が一つ増えた。

チッとバットが掠りガシャーンとネットが鈍く揺れる。ファール。これでツーストライク。僕はボタンを押す。

ボール、青。ファール、押さない。ファール、押さない。山井が投じた6球目はドロンと落ちるカーブで

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スタンドで君を想ふ。

スタンドで君を想ふ。

拝啓

3年ぶりですね。

今日、あなたを見ました。

本当はグラウンドでユニフォームを着たあなたを見たかったけれど、仕方ないですね。こればっかりは。

少し残念だけれど、私(「うち」って言ったほうがいいかな。でも文字にすると「うち」はちょっとこそばゆいのでやっぱり「私」で)はあなたを責められませんし、それはちょっと違うと思うのです。

久しぶりの地元はなんだかホッとしますね。大阪も暑いけれど、横

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強まる雨音、図書館で。

強まる雨音、図書館で。

とても冷たい雨が降った日だった。

僕は図書館で彼女を見かけた。

脚を組んで、上履きを半分脱いでぶらつかせ、猫背で雑誌を読んでいた。学校の図書館には古い本しかないと思っていたので僕は少し驚いた。彼女が読んでいたのはバスケットボールの情報誌でチラと見えた表紙には「インターハイ速報」と書かれていた。彼女はバスケ部だった。

肩まである短い髪を左手で弄びながらほとんど無表情でページをめくっていた。人が

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黙々と、モクモク、キーボード彼女

黙々と、モクモク、キーボード彼女

ねえ、なんで小説を書くのさ。

聞いてみた。彼女は僕が家にいようがセックスの後だろうが、ちょっとでも隙間ができるとお構いなしにキーボードを叩く。タバコを咥えて。黙々とモクモク。

「それは、”仕事だから”以外で?」
「うん」

死にたいから

重すぎる答えに閉口した。

死にたいのと小説って関係あるの?

彼女は僕に背を向けたまま続ける。痩せ型の、ゴツゴツした背中には生と死が混在しているように見え

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ないものはなく、狼。

ないものはなく、狼。

動物で例えると、キツネとか狼で。

切れ長の大きな三白眼と肩まで伸びた黒髪、鼻がちょっぴり高くて、背は低い。フレアスカートに真っ白なスニーカーを履いていて、いつもツーサイズ大きいパーカーを着ていた。

低い声と乱暴な口調で、そこに「彼氏の前でだけ甘える」なんてギャップがあればモテるのだろうけれど、そんなものはなく、ずっと、淡々と口が悪かった。

手なんか繋がないし、そもそも繋ぎたいとか、くっつきた

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