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小説・過去との遭遇

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新幹線に乗りこんだ。 同窓会に参加するために、地元へ向かう。 地元にはいい思い出がない。 …それに、思い出すだけで、胸が痛くなることがある。
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#恋

過去との遭遇・1・彼の声

過去との遭遇・1・彼の声

だいたい、なんで新幹線なんか乗らなきゃいけないわけ?

重たいキャリーバッグを引きずりながら、座席を探す。
わたしの地元は田舎だから空港なんてない。
飛行機に乗ったところで、帰れない。

だいたい、帰りたいわけじゃないし。

同窓会のハガキは、だいぶ前に実家に届いていたという。
だけど、わたしの元にそのハガキが届いたのは3日前。

偶然仕事が休みだったから。
別に、参加したいわけじゃないけど。

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過去との遭遇・6・今までとこれからの

過去との遭遇・6・今までとこれからの

今なら自信を持って彼女にいうだろう。
「なんてバカなんだ」って。

あの夏休みがきっかけで、ぼくは散々からかわれたけれど、彼女の方がずっとずっと嫌な思いをしただろう。
ぼくは噂には慣れていたし、そのままにしておいたってそれほど困ることはなかったんだ。
なのに。

きっと彼女はぼくをかばってくれたのだろう。
彼女は「自分がぼくを誘った」といったという。
この地域が窮屈で、噂がどれほどの脅威か知りすぎ

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