柔術のドーピング 「キッズに対してどうよ」って話(全文無料)
今日も今日とて柔術は楽しい。今日はドーピングの話。ツイッターでもネットでもよく議論になっています。自分の考えをまとめるために書いてみました。不快になる方もいるかもしれませんがあしからず。4,500字越えになってしまいましたが興味のある方はどうぞ!
1.白黒はっきりできる部分とグレーな部分がある
ドーピングについてどうしてこれだけ語られるかというと、「明確な答えがないから」でしょう。おごり論争や持ち家賃貸論争、結婚子持ち論争なども同様ではっきりと答えがない分野ほど議論が盛り上がります
2.まずこれをはっきりさせておく
柔術のIBJJFのルールにおいてドーピング(ステロイド)は禁止されています。反則・不正です。他のほとんどのスポーツでもそうでしょう。ルールは守らねばいけません。それは前提
3.「バレなければいい」なのか
MMAでも反則を取られないギリギリのロープつかみや反則スレスレのテクニックはあります。サッカーのファウルのアピールや見えない角度で服をつかむのもテクニックといえばテクニックです。
ドーピングをそれらと同じと考えるのはやや短絡的ですが、「バレなければいい、見えなければテクニックのうち」と考える人もいるでしょう。
ここはもう倫理観、価値観、哲学、宗教、信条の話になります。スポーツ史でもドーピングと検査のイタチごっこはずっと続いています。検査をかいくぐって少しでも有利になろうとする人間は必ず現れます。それに対してさらに厳しい検査が行われる、ということが何十年も続いています。これから先もきっとそうでしょう。
ドーピングの宗教(倫理観、価値観、哲学、信条)が違う人たちはどう頑張っても相容れません。「バレなければいい」教の人は一定数いてゼロにはならないです。良し悪しは別として、そういう事実があります。
4.100%否定しきれない自分がいる
何をしてでも勝ちたいという選手の渇望を自分は100%悪だと否定できない部分があります。もちろんダメだと思っていますしその人のほとんどを否定します。しかし、ドーピングを使ってでも何が何でも強くなりたいと思う選手を数%くらい尊敬というか「自分にはできない」と思っている部分があります。
ドーピングを使った選手の試合を見て「すごい」と感じてしまうこともあります。
ドーピングの全くない世界線の柔術と今の世界線の柔術を比べたらどっちが面白いか、というと今の方が優れている部分もあるかもしれません。もちろん全くない方がいいに決まっているんですが。ドーピングが全くない世界線では生まれなかった柔術があるかもしれないです。
と、ここまで少しドーピングを肯定するような書き方をしてしまいましたが、私の柔術哲学ではドーピングは絶対的に反対です。撲滅されてほしいと願っています。それについて以下書いていきます。
5.なぜダメなのか、の一番の理由
検索するとドーピングがダメな理由はこれらが出てきます。
分かりやすいです。でもこれらをかみ砕いてもう少し具体的に言語化していきます。
私が思う一番のドーピングのダメな理由は「キッズへの悪影響」です。
「柔術界にドーピングがはびこることで、自信を持ってキッズに柔術をやらせられなくなる」
これに尽きます。
ドーピングがまん延することで柔術という競技が以下の様に思われます。
こんな競技をキッズにやらせたいと思いますか?
「柔術?選手がみんなドーピングやっているスポーツだよね?」と思われるのはどうでしょうか?
キッズにやらせたくない競技に未来はありません。
※「健康を犠牲にしないと勝てない競技」について
競技のトップレベルは健康を害するレベルのトレーニングをしていることがほとんどですが、それがキッズへの悪影響になることはありません。プロ野球選手の練習量は健康を害するレベルのものもありますが、だからといって「野球で強くなるには健康を害するほどやらないといけないからやらせない」とはならないです。
6.思考放棄のバカ
ドーピング(ステロイド)がまん延する競技としてボディビルディングがありますが、この業界でもずっと論争は続いています。
柔術界でもボディビル界でも一定数ステロイド肯定派がいてその内容は
などですが、
はっきり言ってバカです。本当に何も考えてねえんだなと思います。競技の発展とか社会的な悪影響とか選手の健康とかいろんな要素をすべて考えるのを放棄して「みんなステロイドやればいいじゃん」で済ませてしまうバカです。
先ほども書きましたがドーピングがまん延すれば「健康を犠牲にしなくては勝てない競技」になります。健康に被害のあるものを当たり前のように使う人たちがいるのは社会的にも悪影響です。選手の人生が壊れる可能性だってあります(実際、内臓の病気やうつ病などの精神的な疾患にかかる人も多い)。その競技をやっているクリーンな他の選手にも風評被害があります。
社会的にも、その競技の発展にも、選手にもデメリットだらけで不幸になる人が増えるものがドーピングなのです。みんなが使わないようになればメリットしかありません。
ドーピングはなくすべきものだし、「どうしたらドーピングをなくすことをできるか」を考えていくべきです。そこで「ドーピング解禁すればフェアになるし本人の自己責任だしいいじゃん。検査費用もかからないし」というのは思考放棄です。バカですバカ。言葉が強くなりますが、心の底から本当にバカだと思っています。何も考えてない。
例えば「寝ずに勉強できて高校受験に有利になるけど健康被害があるので禁止されてる薬」があるとしたらそれを無くすために検査等の取り組みをするのが普通です。そこで「検査なんてやめて解禁すればいいじゃん。逆にフェアだし検査費用もかからないし、健康被害も自己責任だろ?」とかいうやつがいたらバカです。
競技の発展は先人たちが”思考”してきたから
ボクシングは危険な競技ですがアンチドーピングの取り組みやグローブの使用などにより競技として発展し普及しました。剣道では安全に稽古ができるようにと竹刀や防具を開発し、多くの人が取り組めるものとして発展し普及しました。これらの発展は先人たちが選手の安全や競技の発展のために「どうしたら安全に稽古ができるか」を考えてきたから生まれたものです。そこでみんなが思考放棄して「実戦は素手だろ」「真剣でこそ実力は磨かれる」「強くなりたければやるべき」「自己責任で各自が危険を背負えばいい」とか言っていたら競技として発展していなかったでしょう。
競技の発展も選手の健康と安全も社会的な影響も何も考えてない「ドーピング解禁すればフェアになるし本人の自己責任だしいいじゃん」というバカは、健康を犠牲にするステロイダー達と素手の殴り合いのスパーリングや防具無しで木刀で殴り合いをしていてください。
7.まとめ 何のために格闘技やってんだ
”強く”なるために格闘技やってんだろ
格闘技は強くなるためにやるものだと思っています。身体的な強さ、競技的な強さ、精神的な強さ、生物的な強さ、概念としての強さ、あらゆるものを包括した”強さ”を求めて格闘技をやっているのだと思います。
日々の地道な積み重ねや苦しい練習、悔しい気持ち、試合への恐怖、周りの理解と協力を得る努力、そういった道のりを経て強くなるものです。それをすっ飛ばしてステロイドに頼るのは”弱さ”です。
強くなるために格闘技をやっているはずなのにステロイドという”弱さ”に手を出すのは矛盾しています。
ステロイドで試合に勝てるようになってもそれは本当に”強く”なっているのでしょうか?
人生を豊かにするために格闘技やってんだろ
格闘技は人生を豊かにするためのものです。中には仕事として生きるためにやる人も競技としての強さを追求するためにやる人もいるでしょうが、それすらも最終的には「人生を豊かにするため」のものです。
ステロイドで健康を犠牲にしてでも競技で有利になることが人生を豊かにすることにつながるとは自分は思いません。
目に見える健康被害というのもそうですが、精神的な被害もあると思います。今時「正々堂々」なんて言葉は流行らないしギリギリの反則はテクニックです。でも、自分の中の倫理観や正義を少しずつ失っていきます。これは目には見えないですが人生を貧しくしていきます。
夜寝る前に反則や不正をして勝ったことを後悔しないと断言できますか?人生の最後にその不正や反則を誇れますか?(そこで後悔しないような人がある意味強いのかもしれませんが)
「自分に納得すること」
自分は、柔術に限らず「自分に納得すること」が究極の目標です。勝てることが一番納得できる結果ですが、負けても納得できることはあります。
反則や不正をしてしまったら絶対に「自分に納得すること」ができなくなります。「倫理観や正義を失うけど簡単に強くなれる甘い誘惑」には歯を食いしばって手を出さず、自分なりの正々堂々で戦っていきたいです。その方が最終的に「自分に納得すること」ができて人生を豊かにすると信じています。
感情が入りまくりの文章になってしまいました。不快に感じた方は申し訳ありません。
2024/6/15 アンディ
追伸 自分たちにできること
業界のドーピングについて、いち愛好家ができることなんて限られているのですが、全員がこれをやればドーピングを撲滅できます。まあ理想論で机上の空論ではあるんですが。。。一人でも多くの人がこの意識を持ってもらえたら嬉しいです。
追伸の追伸 ジャックハンマーは好きなキャラ
すげえどうでもいいんですが。ジャックハンマーはけっこう好きです。まあ、漫画ですからね。。。
漫画の怪盗キャラが好きでも現実世界で窃盗を肯定することはないじゃないですか。そんなカンジです。
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