「音楽と洗脳 美しき和音の正体」苫米地英人 を読んだ
「音楽、それも和音(コード進行)に”洗脳”されることはあるのだろうか?」
音楽や香りは鎮静効果や癒しをもたらすことがある。タイトルからは、「洗脳的によく使われるコード進行」でも出てくるのかと思った。だがそうではなく、音楽的にかなり専門的なところまで掘り下げてある。
音楽家とリスナーが音楽に没入している状態は、呪術師が歌い踊る「トリップ」や「トランス」に近いかもしれない。音楽を聴くことで得られる快感は、いわば薬物中毒や依存症に罹っている時の高揚感と似ているようだ。
魅力的な音楽家が美しい音楽を奏でる様子は、とても魅惑的で神聖にも映る。ある意味、音楽を介したメッセージで大衆を扇動し「洗脳」することも可能だと思われるほどだ。
この本のタイトルは、わたしのモヤモヤした疑問を解くカギになるだろうか?そんな期待をしながら読み進めた。興味深い箇所がいくつかあったのでメモしておいた。
◎神の音階
ペンタトニックスケール(ヨナ抜き音階)だと、なぜ5音で調和の取れた音階になるのか。なぜ洋の東西を問わず、ヨナ抜き音階を使った楽曲が好まれているのか。
この本では音階のはじまりと発展から始まり、コード進行、周波数が脳に与える影響について、専門的なこともわかりやすく書かれている。
完全五度ずつ音を上げていくと循環する音がヨナ抜き音階
ド→ソ→レ→ラ→ミ→シ→ファ#→ド→#ソ→#レ→#ラ→#ファ→ド
音楽の始まり
音楽の始まりとピタゴラス音階は密接な関係がある。プラトンが作ったアカデミアでもハルモニア(調和・ハーモニー)に関心を寄せた。数学と音楽の数比のシンプルさは、のちのキリスト教にも「スコラ学」として大きな影響を与えていく。
すべての宗教と音楽はセットになっている。仏教の声明、ウィーン少年合唱団の天使の歌声、神道の雅楽とジャンルは色々。宗教音楽は癒し効果や感動、心地良さによるトリップ効果がある。おごそかで美しい音楽を聴くことで意識を良い方向へ向かわせ、聞く人に明日への活力を与えるという。
◎人間の脳はある特定の音のつながりを聴くと脳内ホルモンを放出する
◎世界中の人が大好きなカノンコード進行
◎日本人が好きなコード進行
コード進行は不安定な響きと安定した響きの繰り返しで、人の気持ちを揺さぶるように作られている。子どもの頃から、そういった楽曲を何度も聴いて育ったという学習、刷り込みの影響があることは間違いないらしい。人が好む音のパターンが存在し、刷り込みが可能であるとも書かれている。
わたし自身も好きな音のパターンがある。メロディーライン、コード進行、楽器編成など「これは好きなパターン」とはっきり言い切れるぐらいだ。
好んで聴くようになる音楽家は、たいていその「好きな音のパターン」にぴったり当てはまる。また、そういった楽曲を作ったり演奏したりする音楽家は、幼少期から聴いてきた音楽の「刷り込みパターン」が自分と近いのではと感じている。
◎宗教と音楽と洗脳
ヒーリングミュージックだけでなくPOPSやロックにおいても、宗教音楽と同じようなカタルシスをもたらすものもある。演奏者の声や楽器とのバランス、歌詞の内容は精神を浄化させ、声明や聖歌と同じような効果が感じられる。
音楽を聞き、心身の安定を促す音楽療法的な効果は、どんなジャンルの音楽を聴いても得られる。音楽の好みは個人の体験や、音楽的素養による違いが大きい。人によっては癒し系のゆったりとした楽曲ではなく、激しいリズムやテンポの速いものを聴くことでストレス発散することもあるだろう。
ここ数年は感染症対策でマスク生活もあって閉塞感を感じがちだ。パンデミック以前とは違い、いまだに気軽な身体的接触は難しくなっている。
音は身体に直接「触れ」なくても空気振動で伝えられる。ジャンルにこだわりなく、気に入った音楽を幅広く聴くことで、せめて精神ぐらいは何物にもとらわれず解放したいと思っている。
「音楽と洗脳: 美しき和音の正体」苫米地 英人
#読書感想文 #読書 #音楽と洗脳 #苫米地英人 #コード進行 #ペンタトニックスケール #アルゴリズム #ピアノ #ピタゴラス #プラトン #和音 #音階 # #認知科学 #機能脳科学 #心理学 #哲学 #教育 #記者 #ライター
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?