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第114回:『ガラスの海を渡る舟』は、明日を生きるための力となる物語。

こんにちは、あみのです。
今回の本は、寺地はるなさんの『ガラスの海を渡る舟』という作品です。公式コンテスト『読書の秋2021』の課題図書一覧を見て、「ガラス」というモチーフや綺麗なカバーイラストから伝わる「キラキラ」に魅力を感じ、手にしてみました。

今作では「ふつう」とは何かを考える箇所や、「自分に自信をつけること」について描いた箇所がありました。
すぐ自分と人を比べてしまったり、自分のことを好きになれなかったりと私の悩みに触れていた部分も多く、毎日が生きやすくなる方法を教えてくれた今作に出会えたことがまず嬉しかったです。

自分のことが「嫌い」だと思っている人には、ぜひこの物語を読んでほしいです。これからを生きる気持ちがちょっとでも変わるかもしれません。

あらすじ(帯より)

脆くて、同じものは一つもない。人生はまるで、ガラスみたいだ――。
みんなと同じ行動がとれず、他人から疎まれてしまいがちな兄のみち。落ちこぼれでも優等生でもなく、なんでも平均的にこなせるけど、「特別ななにか」が見つからない妹の羽衣子ういこ。祖父の遺言をきっかけに、ともにガラス工房を引き継ぐことになった、相容ない二人の絆の行方とは――。大阪・空堀商店街にあるガラス工房で兄妹が過ごした、愛おしい10年間を描く感動の物語。

感想

なんで他の人はできるのに、私だけできないのか。つい最近、些細なことで身近な人と自分を比べてしまい、心を傷つけてしまうことがありました。数日間、とても心が痛かったです。

自分と他人を比べてしまったり、自分が「できない」ことをコンプレックスに感じてしまったりする道と羽衣子の姿は、凄く普段の私と重なって見えたところがありました。

祖父のガラス工房を思いと共に継ぐことになった道と羽衣子。作中で描かれる10年間の中では、厳しい現実が2人に立ちはだかる場面もありました。

触れられたくない弱みに触れられて落ち込むこともありましたが、身近な人の温かな言葉が彼らにガラス作家として、そして人間としての自信をつけていきます。道と羽衣子がそれぞれの「いいところ」を受け入れて、自己成長につなげていくところが美しい物語でした。

今作には優しい気持ちになれる名言がたくさんあり、中でも私は下記の言葉たちに勇気をもらいました。これらの言葉を目にしたとき、「今の私はこんな言葉が欲しかったんだ!」と思わずうるうるしてしまいました。

「ひとりひとり違うという状態こそが『ふつう』なんや。『みんな同じ』のほうが不自然なんや」(p42)
「他人の良いところを認めるより、批判したり揚げ足とったりするほうが、ずっと簡単やな。優位に立ったような気分になれるけど、実際はその場にとどまったまんまや。でも羽衣ちゃんは道を認めた。それができるやつは先に進める」(p92)

前者の言葉に込められた「人それぞれの個性があるから「ふつう」が成り立つ」という考えには、凄く感銘を受けました。人には「できること」と「できないこと」があって当たり前。周りに流されず、私のペースで毎日頑張ろう!という気持ちになれた言葉でした。

また、私には「自分にはないもの」を持った人を羨ましがってしまうところもあります。羽衣子は道と自分をよく比較していましたが、その中には彼の自分にはない「個性」が羨ましい気持ちもあったように感じました。

羨ましがるだけでは前には進めない。悔しい気持ちも少なからずあるかもしれないけど、道の「個性」を認めて、自分らしいガラス作家としての生き方を見つけていく羽衣子の成長を感じた後者の言葉に胸が熱くなりました。私も人のいいところをたくさん見つけられる人になりたいな。

今作には、今の私が知りたかった答えがいっぱい詰まっていました。私は自分のことを完全に「好き」だとは言えません。だけど今作を読んで、自分に自信をつけて「好き」になる方法を知ることができました。
ネガティブな気持ちになることもある日々ですが、壁にぶつかってしまった時には今作の温かい言葉たちも思い出しながら生きていきたいと思います。

『ガラスの海を渡る舟』は、明日を生きるための力になる物語です。

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