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この司書さんに会いたい!(青山美智子:『お探し物は図書室まで』)

青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』を読みました!

noteでもよく感想文を見かける本で、いろんな方の感想を読んでずっと気になっていました。

今作では仕事や家庭の悩みを、コミュニティハウスの図書室の司書・小町さんの選書と「付録」の羊毛フェルトによって乗り越えていく人々の物語が描かれました。仕事をテーマにしたエピソードが多かったので、今の私に参考になった箇所もありました。

小町さんは図書室の利用者が求めている本だけでなく、「なぜこの本を選んだ?」と思ってしまう意外な本も薦めてきました。でもその意外な1冊が利用者の心を大きく動かしていきます。

私も本を買ったり借りたりして読む時、前から読むのを楽しみにしていた本よりも何気に手にした本の方が意外と気に入ることがよくあるので、そういった読書での気持ちを思い出す作品でした。

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その中で特に心に残ったエピソードが、1話目の朋香のお話です。

新卒で総合スーパーに入社した朋香ですが、慣れない仕事や思っていたのと違う生活に不安を抱いていました。転職も考え出した朋香は、資格の勉強をしようとコミュニティハウスを訪れ、そこに図書室もあることを知ります。

図書室で小町さんと出会った朋香は、小町さんに資格関連の本に加えてなぜか『ぐりとぐら』の絵本も薦められました。

おそらくこのエピソードのカギとなる絵本なんだろうけど、小町さんはなぜ朋香に『ぐりとぐら』も薦めたのか、私も疑問に思いました。でも読んでいくとその答えがわかってきます。

『ぐりとぐら』は動物たちが大きなカステラを作るとても有名な絵本。朋香も物語に惹かれて、作中のカステラを再現しようとします。しかしネットを参考に作ってみても、なかなか理想の味にはなりません。

仕事も料理と同じで、時間を重ねて何度も続けていくことで上達する。朋香がぐりとぐらの物語から得た気付きは、私にとっても大きな学びとなりました。

また「早く休憩に行きたいから」など、自分の感情を優先した行動ばかり仕事中していたことにも朋香は気付きます。私も彼女と似た感情で仕事に取り組んでいたところがあるなーと読んでいて思いました。

絵本の中でたくさんの動物たちが協力して大きなカステラを作ったように、仕事もたくさんの人が支えあって成り立つもの。絵本って小さい子の読み物と思ってしまいがちですが、シンプルなストーリーだからこそ、大人が読んでも心に刺さる何かがあるのだと思います。

悩みを乗り越えるヒントは意外な物語の中に隠されているのかもしれない。そんなことを感じたエピソードでした。

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生活のためだけじゃない「自分が働く理由」、夢に挑戦するのはいつでもできるなど、他にも毎日を頑張りたくなるメッセージが詰まった魅力的なエピソードが多数ありました。「カニ歩き」から視野を広げることの大切さに気付いた親子の会話とかもなるほど〜と思いましたね。

利用者の話からその人の今の気持ちに寄り添った本を用意できる小町さんのスキルも、長い間、人の気持ちと向き合う仕事を続けてきたからこそ得たものだと思います。こうしてみると、どんな仕事でも続けてみることって本当に大切だと気付きます。

興味のある本、時々意外な本で誰かとつながれたり、今の悩みと向き合えたりできる(そして可愛い羊毛フェルトにも出会える)、小町さんがいる図書室に私も行ってみたい!

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