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第128回:美味しい料理で、「心の傷」を癒す話(髙森美由紀:柊先生の小さなキッチン2)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、髙森美由紀さんのライト文芸作品『柊先生の小さなキッチン』の第2巻(集英社オレンジ文庫)です。(サブタイトルは「雨のち晴れの林檎コンポート」

2巻は「家族」が大きなテーマとなっていて、読んでいていっぱい発見のある内容でした。中でも姉妹の関係を描いたエピソードでは、一人っ子の私にはわからない姉妹ならではの感覚を知れたのが新鮮でした。

笑いや感動、そして癒しで満ちたこのシリーズ。1巻から読んでいると思わず嬉しくなるシーンもある続編です。柊先生と石原さんのコンビも相変わらず最高です笑。

(良かったら1巻の感想と合わせて読んでください)

あらすじ

「明日も――ごはんを食べよう」
「マリーさん」からの着信。それは懐かしい一葉かずはの大叔母からの、突然の電話だった。いつもの南部で、個性的な万福荘の住人たちとうち解けるマリーさんの姿に一葉が安堵したのは束の間、予期せぬ報せが入って‥‥‥!?季節は流れ、柊先生のやさしいメニューが離れた家族をそっと繋ぐ‥‥‥あの日の「美味しい」を、もう一度。盛岡が舞台の、満腹万福ストーリー!おかわり。

カバーより

感想

1作目は万福荘の住人たちが柊先生によって救われていく様子が描かれましたが、今回は「家族」をテーマにしたエピソードが中心でした。

一葉の姪である真奈ちゃんは、妹と比べられることが大嫌いで万福荘に逃げてきました。真奈ちゃんの家出を通して、一葉が自身の過去と重ねながら真奈ちゃんや彼女の母親である自分の妹と向き合うシーンが印象に残りました。

「双葉(一葉の妹)が懸命に子育てしてること知ってる。忙しいことも分かってる。ただね、こんな小さな子が、親の愛情に不平等を感じてるなら、やっぱりそれが真実なんだよ。それ以外ないんだよ。」

p181

私には子育ての経験はまだありませんが、一葉のこの言葉は今後の人生にも活かせそうな良い気付きとなりました。

かつて一葉も妹と比べられた経験があり、「お姉さん」である真奈ちゃんの気持ちもよく知っています。上記のセリフは、「お姉さん」だからこその悔しい気持ちを知っているからこそ選べた言葉なんだろうなと思いました。

妹とは嫌な思い出もありましたが、もちろん嬉しかった思い出もありました。このエピソードの最後にて一葉は自分の妹と真奈ちゃん、万福荘のみんなと一緒にりんごのコンポート作りをします。りんごのコンポートは、一葉にとって家族の絆を象徴する思い出のスイーツでした。

りんごのコンポートを通して、姉妹の思い出が真奈ちゃんにも伝わっていく。万福荘の楽しい仲間と一緒に美味しいスイーツを作った経験は、真奈ちゃんにとって一生忘れられない思い出になっていくのだと思います。

(いつか真奈ちゃんに子どもが生まれて、このレシピがさらに受け継がれたらめちゃくちゃ素敵ですよね)

またマリーさんのエピソードも悲しい結末ではありましたが、今の私の身にもなったとても心が震える傑作でした。

「傷は一日では直らないんですよ。でも、傷つくことは悪いことじゃありませんよ

p53

欠けて傷ついてしまった器も金継ぎをすることで、美しい器へと時間をかけて生まれ変わる。マリーさんのこの言葉、今回の中で1番素敵だなと思いました。

前作のポトフ作りのシーンでの表現といい、髙森さんは身のまわりの風景と人々の気持ちを重ねたわかりやすい表現が本当に上手だなと思いました。

万福荘のみんなも私が知っている人たちも、何らかの傷は必ず抱えている。頑張ることも大切だけど、日常生活でできた心の傷を癒す時間を作ることもとても大切なことであるとマリーさんのエピソードでは感じました。

あと一葉の元カレ、彼女の気持ちを裏切っただけでなく人を見た目で選んでいて、最低な人だなと思いました。一葉、この男と別れて本当に良かったなと安心しました。

「鈍かろうが不器用だろうがおせっかいで料理下手だろうが、ここの住人なら一葉ちゃんが好きなんだよ」

p266

万福荘のみんなは柊先生にも充分救われていましたが、元カレに向けた一葉を侮辱したことへの怒りと一葉のことが大好きな気持ちからは、住人たちがどれくらい一葉の優しさにも救われていたのかがよく伝わってきました。こういう温かいシーンが今回見れたのは、私もとても嬉しかったですね!

居心地の良い仲間と美味しい料理。今作を読んで私はもっとこのシリーズの世界にいたい!と思いました。あと久太郎、本当に可愛いです。推し。

3作目も出るのであれば、引き続き追っていきたいです。今回はどちらかというと一葉側の話だったので、次は柊先生側のお話が個人的には読んでみたいですね。

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