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小説『青の音』

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「あの世の空はこの世の空よりも美しいと思いますか?」 とある少女、百音に投げかけられたその一言が主人公、律の心を大きく揺さぶる。 ふたりが抱えていたのは氷となった辛い「生死の記憶…
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記事一覧

【小説】青の音#1

あらすじ 「あの世の空はこの世の空よりも美しいと思いますか?」とある少女、百音に投げかけ…

雨宮そら
7か月前
3

【小説】青の音#2

第二話 「おはよ。」  礒谷翔はいつもとなんら変わりない調子で僕の背中を叩いた。礒谷は僕…

雨宮そら
7か月前
3

【小説】青の音#3

第三話 梅雨はあっという間に過ぎ、七月になった。一学期最後の定期考査も終わり、学校中が…

雨宮そら
7か月前
2

【小説】青の音#4

 第四話 僕はその日、姉が家を出る直前、姉の異変に気づいていた。でも引き留めなかった。姉…

雨宮そら
7か月前
1

【小説】青の音#5

第5話 そんな出来事を思い出していたら、職員室についていた。礒谷も黙っていたから、きっと…

雨宮そら
7か月前

【小説】青の音#6

第六話 彼女がこちらへ来る。僕は彼女をじっと見つめていたと思う。本当にじっと。普通なら睨…

雨宮そら
7か月前

【小説】青の音#7

第七話 振り向いた彼女と僕はしばらく黙って向かい合っていたと思う。恐ろしく長く感じたが、実際はどれくらいの時間が経っていたのだろうか。彼女はゆっくりと口を開けて深く息を吸った。そしてそっと呟いた。 「空は・・・あの世の空は・・・この世の空よりも美しいと思いますか。」 空?なぜ彼女は空の話を突然始めたのか?あの世から見える空?僕の頭の中は疑問符で埋め尽くされた。でもこれは彼女が僕に伝えたいメッセージだ。僕はゆっくりと頭の中で反芻した。 『空』『あの世の空』『この世の空』

【小説】青の音#8

第八話 「じゃあ、私にこの世で最も美しい空を見せて。」 「最も美しい空?」 予想外の彼女…

雨宮そら
7か月前

【小説】青の音#9

第九話 それからの日々はもう本当に文字通り「必死」だった。   夏休み初日にしてすでに過…

雨宮そら
7か月前

【小説】青の音#10

第十話 その絵は姉の絵ではないのではないかと思うくらいに、美しく鮮やかな青色で彩られてい…

雨宮そら
7か月前

【小説】青の音#11

第11話 約束の日になった。僕は放課後、あの日と同じ時間に海に行った。彼女はすでにそこに…

雨宮そら
7か月前

【小説】青の音#12

第12話 僕らはすぐに計画を立てることにした。鈴の音山は隣町とはいえ、少し離れたところにあ…

雨宮そら
7か月前
2

【小説】青の音#13

第13話 約束の日までの日々は、いろいろな想いが交錯していた。もしかしたら彼女を喜ばせるこ…

雨宮そら
7か月前

【小説】青の音#14

第14話 ついにその日がやってきた。僕は朝から緊張していた。しかし礒谷の話を聞いてから、強い不安感はなくなった。この日が彼女にとって生きやすい一日になればいいと思った。集合よりも少しだけ早く海に着いた。僕は約束の時間の少し前に着くことが昔からの癖だった。遅刻しそうになって慌てることがなにより嫌いだからだ。しかし彼女はまたしても、僕より早く到着していた。彼女は一体いつもどれくらい早く到着しているのだろうか。彼女はまた海をじっと眺めていた。今度は彼女を名前で呼ぶことができる。し