連載小説「ぬくもりの朝、やさしい夜」3
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診察室を出るともう窓の外は暗くなっていた。その日の時間の流れは本当に早かった。わたしはなぜか吸い込まれるように真っ暗な闇の映る大きな窓に向かった。鏡のように自分の姿がはっきり映った。それは確かに自分だったけれど、どこか違う人にも感じた。「なぜ山に行ったの?」そう心の中で尋ねてみた。もちろん何の声も聞こえなかった。瞳をじっと見つめた。黒い窓に映るわたしは、下瞼に涙を溜め込んでいた。そして止まるほどゆっくり瞬きをした。一粒の大きな涙がわたしの頬を流れいくのを見た。「泣い