見出し画像

こころがうごくとき

昨日の夕方
締め切っていた病室のカーテンを
ほんの少しだけ開けてみた
理由はよくわからない

カーテンを開けたその瞬間
夕日の光が一気に部屋に入り
こもれびの影が
白い壁にゆらゆらと映った


しばらくの間
ただ眺めていた
窓の外のたくさんの緑と
差し込む夕日
微かな風の音で揺れる
こもれびの影

「きれい」と思った
本当に久しぶりに
こころが動いた


「感情がわからなくなる状態」
お医者さんから
入院するときそう告げられた
感情(empathy)の頭に
否定の意味がつく
無感情(apathy)
そんな状態になっているらしい

そう告げられたときですら
何を思っているのか
何を感じているのか
全くわからなかった


こころが動かない
そんなことが起こり得るのだと思った
人間らしく生きられない
そんなふうに思った
でもそこに悲しみや驚きはない
ただただ怖いくらいに
静まり返って何も生まれない


でも、昨日カーテンを開けて
「きれい」と思えたとき
その瞬間だけ
ちょっとこころが動いた気がした


まだ気持ちはよくわからないでいる
でもきっといつかは必ず戻ってくる
そしてそれは遠い未来じゃない
もうすぐやってくる
そんなふうに思った

戻ってきたらそれはそれで
大変なのかもしれないけれど
わたしには支えてくれる人が
ありがたいことにたくさんいる
だからきっとたぶん
大丈夫なんだと思う

だからもう少しここで
ゆらゆら〜としてみる


今朝はカーテンをすぐに開けた
親友がくれたドライフラワーが
朝日に照らされた
こころの中で「きれい」と言い、
次は自分と確かめ合うように
静かに声に出してみた

「きれいだね」

この記事が参加している募集

#今こんな気分

75,167件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?