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小学校受験のママパパと今から考えたい「15年後の大学受験」

【カズキチ】私立学校法人勤務の32歳/三度の飯より車のタイヤが好きな3歳児の父/息子に最適な"学校キャリア"(子供が社会人になるまでの進学プロセス)を考えるため、保護者+本業目線で都内の学校情報を収集中

ママパパアカは基本100%フォロバしています!

「15年後の大学受験」

突拍子もないテーマに見えますか?

ですが、子供の小学校選びを"学校キャリア"(子供が社会人になるまでの進学プロセス)という視点から俯瞰すると、このテーマは決して「今」と無関係ではありません。

私立小学校は、中学、高校、長ければ大学まで内部進学というレールでつながっています。もし志望校が高校までしかない(あるいは大学まで進むつもりはない)場合、その学校が将来の大学受験の"準備の場"になるわけです。

そう考えると、今3歳の子供が15年後(6歳なら12年後)に迎える大学受験がどうなっているかは、今やろうとしている小学校選びにも少なからず影響があるはずです。

今回はそんな話をしていきたいと思います。


国立大学が一般選抜をやめる時代

夜、子供の寝かしつけを終えて、妻とダイニングで話をしていた時、昨年11月に出たこのニュースが話題になりました。

選ばれれば、政府の10兆円ファンドの運用益から莫大な資金援助が受けられるという「国際卓越研究大学」制度ーーその認定候補に唯一選ばれたのが、東北大学でした。
東大、京大を抑えての台頭に世間では賞賛とどよめきが起こりましたが、もう一つ巷を騒がせたのは、この東北大学が選ばれる根拠となった研究力強化の計画案に、「選抜試験を全て総合型選抜へ移⾏」という文字が記載されていたことです。

簡単に言えば、

共通テスト(旧センター試験、旧共通一次)
  ↓
二次試験

という国立の伝統的な筆記試験による選抜を「将来うちは全部やめまーす!」と宣言したのです。

今振り返っても、これは衝撃以外の何物でもありません。

確かに最近の大学入試では、総合型選抜の枠を拡大し、一般選抜の枠を縮小するのがトレンドになってきています。ですが、"将来的に"とはいえ、一般選抜をすべてなくしてしまおうという大胆な方針は、私の知る限り他の大学にはありません。

総合型選抜に期待感を高める理由

なぜ東北大学はこれほどまでに総合型選抜を強く推進するのでしょうか?

その大きな理由として言われているのが、総合型選抜の前身であるAO入試で入学した学生の成績の良さです。

詳しくは↓の記事をご覧いただきたいのですが、要するに従来型の筆記試験で入ってきた学生より、AOで入ってきた学生の方が成績の平均が高かった、という調査結果が出ているのです。

もちろんこれは東北大学のAO入試の審査方法が優れていたからこその結果だとは思いますが、かつて「一芸入試」などと揶揄されてきたAO入試が市民権を得ることに成功した大きなできごとだったのではないかと思います。

総合型選抜への全面移行が盛り込まれた計画案には、東北大学の総合型選抜に対する「期待感」がにじみ出ています。

総合型選抜ってどんな入試?

では、実際に総合型選抜に全面移行するとどうなるのでしょうか。

一般的に総合型選抜では、小論文、面接、プレゼンテーションなど、学校の教科に直接当てはまらない審査形式が採用されます。
筆記試験の結果ですべてが決まる一般選抜ではアピールが難しい、志望動機、物事への興味関心、活動実績、人間性などを評価してもらえるのが一番の特徴と言えます。(これに共通テストの結果を加味するなどして、学力を担保している大学もあります。)

そして言わずもがな大学は、学問を深めたり研究したりする場所です。
総合型選抜で問われる志望動機などにしっかりと答えるには、まず自分に興味関心の持てるものがあることが大前提となってきます。

興味関心を育てること

すでに行われている!興味関心を育てる「探究」

ここで少し視点をずらし、大学受験に最も近い立ち位置にいる高校に目を向けてみましょう。

今、高校の教育現場では、「探究」という学習活動が盛んに行われています。
これはかつての「総合学習」のようなものですが、実際の学校現場の様子を聞いていると、「総合学習」の時代よりももっと専門的に物事を調べたり、近隣の大学と高大連携を結んで普段大学生が使っている実験施設を使わせてもらうなど、かなり本格的な体験をしているようです。

「探究」は、それ自体が有意義な学習活動であることはもちろんですが、総合型選抜に対する「武器」として機能する側面もあります。
「探究」を通じて自分の興味関心を育て、そこで体験した活動や得られた成果を引っ提げて、出願書類や面接でアピールするイメージです。

このように、高校の「探究」と大学の総合型選抜には一定の関連性が見て取れます。
大学受験と常に隣り合わせにある高校では、「興味関心を育てる教育」がすでに活発化しているのです。

「博士ちゃん」には誰も勝てない

ところで皆さんは「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」というテレビ番組をご存知でしょうか?

普段テレビをほとんど観ない私が、今でも時々観たくなる番組の一つです。
ご存じない方に簡単に紹介すると、芦田愛菜ちゃんとサンドウィッチマンの司会のもとに、例えば「恐竜」や「神社」など特定の物事にものすごく詳しい小学生(中学生)が出てきて、その世界の魅力を語ってくれるという番組です。(番組内ではその子が「博士ちゃん」と呼ばれます。)

毎回いろんな「博士ちゃん」が出てくるのですが、どの「博士ちゃん」も大人顔負けのエグい知識量で、得意ジャンルを語ってくれます。

しかもただ詳しいだけでなく、みんなとっても楽しそうに語るのです。

「学びの真理はこれだな」といつも思わされます。
好奇心を燃料にして走る人は本当に強いです。勉強している感覚がないまま勉強し続けるので、一種の永久機関のようなものです。これに普通の人が立ち向かおうと思っても、なかなか難しいものです。

このタイプは、大学の総合型選抜にはうってつけです。本人の大学選びさえ間違っていなければ、大学からは「ぜひうちに来て、思い切り研究に没頭してほしい」と歓迎されるでしょう。
東北大学はいつかこういう人材でキャンパスを埋め尽くしたいのかもしれません。

15年もあれば、大学入試は簡単に変わる

東北大学の動向から考察すると、「15年後の大学受験」では、子供が何かに興味関心を持つことはますます重要になってくる可能性があります。

「いやいや……たった一つの大学がそういう構想を出したくらいで大げさでは?」
そう思った方もいるかもしれません。ですが、その可能性を無視することの方がリスキーではありませんか?

例えばAO入試という入試制度は、1989年に慶應義塾大学が国内で初めて導入して以来、10~20年程度で全国に浸透しました。

(AO入試は)文部省によるバックアップとともに2000年代拡大を続け、2011年度では全体の52.4%の国立大学、29.3%の公立大学、そして79.9%の私立大学がAO入 試を導入するに至り、早稲田大学、旧帝大等の難関大学でも導入が図られる。

尾室拓史『AO入試に対する社会的評価の変遷』「KEIO SFC JOURNAL Vol.12 No.2 2012」

また今では定番となっている「英語外部検定利用入試」(英検やTOEICなどのスコアを得点化する入試)も、2016年頃から5年足らずで全国に広まり、一時は共通テストにまで導入が検討されました。

15年もあれば、大学入試は簡単に変わります。

「え、お父さんってちゃんとした就活したことないの?」
「結婚したら寿退社? 何それww」

皆さんは自分の親にこんなことを思ったことはありませんでしたか。
しかし油断は禁物です。

「え、お母さんの頃って筆記試験だけで大学に入れたの?」
「やりたいこともないのに大学に進んだってどういうことww」

15年後、今度は私たちがこんなことを言われているかもしれません。

"学校キャリア"の大事な基準

今のところ私は、内部進学で楽させてあげたいとか、お上品な私立が息子にぴったりだとか、そういう親の思惑のような理由で私立小学校を調べているわけではありません。
将来子供が自分の能力を社会で存分に発揮するために、小中高大にかけてどのような"学校キャリア"を形成するのがよいのかーーそこに私立小学校という選択肢が入るのかを考えるためにやっています。

この記事にまとめているうちに改めて思ったのは、子供がいろいろなものに出会い、好きなことを見つけ、好きなだけ深めていける場所であることーーそれが"学校キャリア"を考える上で大事な基準になるのではないかということです。

「博士ちゃん」のパートで触れたように、好きなことほど進んで学ぶのは人の学びの真理です。
「博士ちゃん」になってほしいとまでは言いませんが、我が子には自分の好きなこと・やりたいことをいつでも胸を張って言える子になってもらいたい。
そうなってもらうために最適な"学校キャリア"とは何かを、うちはじっくり考えていきたいなと思います。

皆さんのご家庭なら、どのように考えますか?

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