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「隠れた本質を引き出す質問力」レクチャーをしてみたら、私自身の価値の棚卸しにつながった

最も私が苦手なことの一つが、自らの「スキル」を人に「教える」という行為。
けっして誰にも教えない!と抱え込みたいわけじゃなくて、上には上がいるし、人に「教える」ほどのものかどうか…という気持ちが強かった。

そもそも「スキル」という表面的なカタチより、「培った経験」という捉え方をしていて、「教える」より「伝える」スタンスのほうがシックリくる。

私自身は、自分の経験にそれなりに自負はあっても、「講師然」として構えることが、どうも好きではなかった。

「やってみよう」のキッカケ

ところが数か月前、「かしわぎさんのその経験を教えて欲しい」と言われることがあった。
noteの中の企画で、あるライターさんY.Oさんと話す機会があり、私の経験や感覚をお話ししている流れの中で、彼女の関心にヒットしたようだった。

Yさんはインタビューライターとして既に仕事もしていて、中でも「人の生き方にフォーカスする」こと、生き様を題材にしたコンテンツが大好き。
だから、私がやってきた著名人やアスリートへのインタビューやコンテンツプロデュースの経験が彼女の琴線に触れ、思わぬ共感で盛り上がった。

その流れの中で、私もすんなり「それ、やってみよう」と自然に思えた。
他人のレクチャーのシナリオ作成は作ったこともあったけれど、自分自身が「講師」になるレクチャーは、初!

私自身は、マスメディアにおいて、インタビューを通して「その人の本質的な魅力や人となりを引き出し、コンテンツ化・文字化」してきた。
ただ、スキルとして意識したことはないし、そもそも合理的なスキルだけで質の良い仕事になるわけではない領域だと思っている。

だから、手っ取り早くスキルだけ知りたい、という人には向かないかもしれないけれど、逆に、インタビュー業にならなくても使えるメソッドでもある。
ということもお伝えしたうえで、受講してもらうことにした。
タイトルは
【隠れた本質や魅力を引き出す「訊く」コツ ~訊き手の視点とマインド】

「人に問う」「話してもらう」「文字化する」は独立した能力

いざレクチャーするとなると、自分が生業で得てきたものを、どう言語化して体系化するか、が必要になる。

自分が培ってきたものは何なのか。
どんなことを意識したり、工夫していたのか。
トコトン振り返ってみた。

目に見える成果物としては「記事」や「書籍」「HP」というコンテンツだから「書く人=ライター」として見られがちだけど、私自身は「ライター」と名乗ったことはない。
文字化に至るまでの「企画」「問い」「話してもらう」プロセスが、意識ウェイトの8割を占めていた。
「文字化の良し悪し」はこのプロセスにかかっている、という意識だった。

私が生業としてきた「パーソナリティを深堀りする」アプローチは、人間ならではの「矛盾」や「言葉にならない曖昧さ」こそが大切なポイント。
わかりやすい表面的な情報よりも、こういった見えづらい奥底が、本人の本質的な魅力発見につながったりする。

そこを引き出す、というより、相手に話してもらう。

引き出そうと企むのではなく、相手に気持ちよく、楽しく話してもらえるようにする。

あー、楽しかった!
いつの間にか話してた!
自分でも気づかない自分がいたなぁ。

私は、これまでインタビューの後、こう言われるとホッと胸をなでおろす。

そのために「問い」があり、「リアクション」がある。

「問い」はツボ押しの役目。
自分自身では目の届かない、遠いところからの「問い」によって、本丸につながることがある。
「鋭い切り込み」というよりも、「意外な角度」「本人の中では当たり前になっているところ」に光を当てるイメージで質問を組み立てる。

使うのは「視点」と「想像力」。技術力ではない。
子どもの素朴な質問に、ハッとさせられる、むしろそんな感覚

本番での「リアクション」は生物だから、正解はない。
相手のリズムやテンションに合わせる必要もあり、何度やっても難しい。
流れの中での「問い」→「答え」→「リアクション」は「化学反応」。
これ次第で、相手の深掘りが進んだり、思考の展開が変わることもある。

私自身は、アドリブ力が強い方ではないから、とても腐心してきた。
話の流れ、思考を途切れさせず、相手の心気持ちよくほぐし、テンポのいいリアクションのために、質問のバリエーションをいくつも準備するようにしていた。

それが結果的に、「相手に気持ちよく話してもらえる」インタビューにつながっていったのかもしれない。

「気持ちよく話してくれたもの」を「どう文字にするか」は、また別のセンスで、媒体や目的によって文体やスタイルなど多種多様に異なる細かい話。

一般的に「インタビューライター」と一言で表現されると、
「ライター」に重きが置かれ、インタビュー(問い)は付随セット、くらいのイメージがあることにも気づいた。
だから個々の独立した能力が伝わりづらいんだと、やっとわかった。

実際は、
「質問の組み立て」「話してもらう」「書く」はそれぞれ別物のスキルであり、異なるセンスを使っている。
「問う」の視点と「話してもらう」リアクションは、なにもインタビューライターでなくても、使えるシーンはたくさんある。

深掘りしっぱなしにしない
傾聴とは異なる文字化

「書く」は別物。
だからこそ、「文字化する」「原稿に落とす」という「書く」を意識する逆算から「質問を組み立てる」工夫が生まれてきたことも確か。

相手の話したいことをただただ聞く傾聴と違うのは、これ。

内容を「文字化」(単なる文字起こしではなく)するためには、膨大な話を端的にまとめなければならない。
ただ言葉を端折ればいいのではなく、抽出力翻訳力を使って、わかりやすく凝縮する。
それはまるで「その人のコンセプト」作りのようなもので、これを後々に反復できるところが、文字化・見える化の良いところ。

5を聞いて →2にする
20を聞いて →2にする

同じ2のように見えても、その「質」「密度」は格段に違うと私は思っている。
だからこそ「話してもらう」プロセスが大切だとつくづく思っている。

今回、私の経験をレクチャーというカタチで体系化することによって、
それが明確になった。

レクチャーするのは自分のためにもなる

まだまだブラッシュアップが必要なものの、受けて頂いた方からは、概ね好評を頂き、何かは得て頂けたかなと思う。
一安心。

「人に伝える」ことは「自分も学びになる」ことを実感した。

「教えるのは趣味じゃない」とか言っていたけれど、
私自身が無意識にやっていたこと、当たり前にやっていたことをあらためて洗い出し、説明するために文字化して整理する、というまさしく「棚卸し」の機会になった。

「あなたの経験を教えて欲しい」と言われなかったら、気づかなかったかもしれない「自分の価値」を、ようやく自分の中で認めることにもつながった。

良いキッカケをくれたY.Oさん、レクチャーを受けてくれた皆さん、ありがとうございます!

ニーズがあれば、またレクチャーする予定です。

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