『走王』

檻として、彼を囲ってからどれくらいだろう。

産まれた時から、ずっと見守ってきた。

今では、獰猛な姿に反して、園内の人気者だ。

「俺さ、百獣の王なのに、優しく見えるって
 
 言われるんだ。野生とは違うね。って」

「まぁ、ここしか知らないしな。仕方ないよ」

「野生の仲間はどんなだろう。会ってみたい」

「外の世界は危ないよ。仲間の場所も遠いぞ」

「それでも行きたい。開けてくれないか?」

施錠を外す。颯爽と走る。王よ、無事を祈る。


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