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アルチノテ

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2023年11月の記事一覧

IN MIND

人には大なり小なり触れてほしくないものがある。

並ぶ自販機の向こうから歩いてきた上司の中川さんが

「おう、おつかれ」

と僕の肩をたたいた。あったかい。彼の平熱はきっと高いに違いない。

彼は恩人で、入社したてのころに僕の失敗を上司からかばってくれた過去がある。中川さんにとっても上司だったのに最後まで、大したことじゃない。これから何とでもなる。そういいながら僕の味方でいてくれたのだ。

その時

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ウィトゲンシュタインはこう語る

突然、現れた新人の事務員さんが、なぜかとても可愛い。やたら可愛い。ぜんぶ可愛い。

なんでも女性社会での洗礼を受け、転職先に弊社を選んだらしいのだが、その判断力が的確なモノであるかどうかについては私は沈黙せざるを得ない。無責任に放たれた言葉の矢が、彼女を動かす要因であったコトは間違いない。

私は人の悪口が好きではない。いや、嫌いではない。しかしそれは気心知れた者を相手に限っての「あの人のああゆう

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茶番劇~どいつもこいつも~

あらゆる難解な言語表現に対する読解力は持ち合わせてはいない。

先日、知人に誘われて、渋々ともに観に行った映画でも、作品のテーマやメッセージ、人物の思想や動機、何もかもが腑に落ちないデキであった。

帰りの電車の中で、その旨を伝えると、その返答が『芸術性』なるものを感覚的に伝えようとする言葉のチョイスばかりで、かなり何言ってるかわからない。

自分から誘った手前、駄作であるとは認め難く、引くに引け

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世界を読め

映画観ない、ドラマ観ない、新聞読まない、本読まない、そんな私に世界が語りかけてくる。

「私を読め」と

さらに世界は語りかけてくる。その声が届かざる者への嘆きの念を。

午後の休憩時間、すぐ近くの公園のベンチでコーヒーを飲んでいると、そこに同僚の田辺と後輩の村井がともに現れた。村井の表情は天気とは裏腹に曇天そのモノのようであった。

田辺は職場での己の役割というものを理解する能力に欠け、進行中の

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渇望の宝玉~水が如く~

あらゆる思想が、私のゆく道に風を立て、吹き抜けてゆく。時には流れに身をまかせ、時にはあらがい、柔軟な対応を心がけているつもりではあるが、結果がともなうかどうかは、また別問題だ。

ある日の出来事、個室の扉に『フタを閉めてから流してください』と書かれた紙が貼ってあった。この理念に触れる度に、私の中に超絶な違和感が込み上げてくるのだが、具体的な説明はここでは割愛する。

そして同日、別の個室では『つま

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誤解

電車の中、私の背後で
「乗る順番を抜かされた
ケツ蹴ってやろうか!」
と、二人組の女性の一人が怒っている。

電車内の席はすべて埋まっており、人の配置も多少電車に乗るのが前後したところで乗り心地は変わらないと推測する。しかし論点はそこにはなく、彼女の怒りは至極真っ当なものであり、そして、その怒りの対象はおそらく私である。

彼女は己が愛すべき世界において、マナー違反をするような人間の存在を憂い、思

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救世の黒龍

人の印象を決定づける要素とは何か?

ボディータッチはマジでムリとか、ガン見してくるやつキモいとか、呼び捨てされるのだけはナシとか、タトゥーだらけで超コワイとか、とかく心はワガママバーリエル。

しかし、その与える印象と本質が完璧に一致していることなどあるのだろうか?そして嫌いだと認識しているからといって、それが魂の核なる意思であるかは己でも判別が難しい。それほどに人の心は混沌の中にあるのだ。

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沈黙は何より多くを語る

どんな人生が望ましいか?

生きるヒントを与えよう。答えは無論、持ち合わせてはいない。生を考えるうえで対極に位置するものの存在から目を背けてはならない。それは何か。死である。

それでは死とは何か。静寂なる大衆である。生なる魂、その数に比べ、死した魂、その沈黙なる数の多いこと。しかし、さらにその数を超える魂が概念として存在する。これから生まれてくる魂である。

ここで私は疑問に思う。その無限なる魂

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