世界を読め

映画観ない、ドラマ観ない、新聞読まない、本読まない、そんな私に世界が語りかけてくる。

「私を読め」と

さらに世界は語りかけてくる。その声が届かざる者への嘆きの念を。

午後の休憩時間、すぐ近くの公園のベンチでコーヒーを飲んでいると、そこに同僚の田辺と後輩の村井がともに現れた。村井の表情は天気とは裏腹に曇天そのモノのようであった。

田辺は職場での己の役割というものを理解する能力に欠け、進行中の仕事内容に関わらず、いきなり音信不通の長期休暇を独断で決行するような、社長の善意のみで職場にいられているような人物である。

そのくせ経験の浅い、人の良い、断るコトが苦手そうな後輩を見つけては説法を始める、タチの悪さも合わせ持っている。今回の生け贄が村井というワケである。

いったい田辺には、この世界で何が見えているのだろう?そんな疑問を深めんばかりに彼は口を開き語り始めた。

「この会社にも、もっと仕事できるヤツ欲しいよね~」

世界が田辺に語りかける

「お前じゃねえよ」と

「ひとりひとりの負担が減るもんね~」

世界が田辺に語りかける

「お前が言うな」と

「この会社、変な人、多いよね~」

世界が田辺に語りかける

「その頂点がお前だよ」と

最近は活字中毒であり、君も読むべきだと怒涛のごとく並べてくる本のタイトルを聞きながら、今にも雨が降りだしそうな、アニメしか観ない村井の表情。しかし雷鳴は轟かない。

世界が田辺に語りかける

「本より先に空気読め」と

空は快晴そのものである

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