理工系の大学院生です。主な興味は情報科学・脳神経科学など。読んだ本の感想などの記事を書…

理工系の大学院生です。主な興味は情報科学・脳神経科学など。読んだ本の感想などの記事を書きます。

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    読んだ本の感想を書いています。読む本を探すときなどの参考にしていただければと思います。

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東大在学中に読んだ300冊の本まとめ

4年間の東大生活で読んだ本をまとめています。分野ごとに分類しています。分野の並ぶ順番は、なるべく日本十進分類法に合わせています。 凡例: ◆『[本のタイトル]』 [主著者] [感想・コメント]←追記予定。 知識・学問・学術◆『学問のすゝめ (岩波文庫)』 福沢 諭吉 ◆『知るを学ぶ あらためて学問のすすめ』 村上陽一郎 ◆『東大教授が考えるあたらしい教養 (幻冬舎新書)』 藤垣 裕子 ◆『教養の書 (単行本)』 戸田山 和久 ◆『教養主義のリハビリテーション (筑

    • 不登校だった中学時代の病み期について当事者の語り

      はじめに: こちらは6年前,私が大学1年生のときに書いた文章です. 以下は本編です. ====== 記事のタイトル通り、そういった時期がありました。どの時期にどういう状況だったかは、目次の通りです。 一つの事例として、何か参考になるものがお届けできたら、と思っています。かつて思っていたこと・感じていたことを正直にちゃんと書く努力をするつもりです。 読んだ方が不快になる表現も含まれると思います。あらかじめ謝罪いたします。 プロローグ なぜ、学校に行かなくなったのか。明確

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      • 卒業を実感できずに嘔吐した.

        先日,大学院の卒業式を終えた.しかし,心は卒業を実感できていない.また4月から,新学期が始まりそうな気がする.授業が開講されそうな気がする.研究室に通う生活が始まりそうな気がする.大学の図書館で気ままに本を読み,勉強する生活が続きそうな気がする.一生このままであるような錯覚にも陥る.大学に住む人生.図書館に籠る人生. しかし,大学院を卒業したという事実が存在する.4月から社会人になるという事実が存在する.身体はその事実をわかっているのだろうか.腹の奥底が蠢くように気持ち悪い

        • 英英辞典や国語辞典を読み,言語間ネットワークに思いを馳せている. 見出し語と,その説明文で出てきた語との結合を定義すると,言語間ネットワークとなる.これはスモールワールドネットワークではないか.food, dish, dietがクラスタを形成し,doやhaveがクラスタ間を繋ぐ.

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        東大在学中に読んだ300冊の本まとめ

        • 不登校だった中学時代の病み期について当事者の語り

        • 卒業を実感できずに嘔吐した.

        • 英英辞典や国語辞典を読み,言語間ネットワークに思いを馳せている. 見出し語と,その説明文で出てきた語との結合を定義すると,言語間ネットワークとなる.これはスモールワールドネットワークではないか.food, dish, dietがクラスタを形成し,doやhaveがクラスタ間を繋ぐ.

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          23本

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          【『傲慢と善良』 読書メモ?】 就活時に持っていた"生きていくための悪意"を修士論文執筆における自己反省の過程で失ったので,『傲慢と善良』の真実を反面教師として取り戻し,要領と善良の二重思考を極める

          この記事で何が言いたいか.それは表題の通りです. 表題を説明します. 就活時に持っていた"生きていくための悪意"を修士論文執筆における自己反省の過程で失ったので就活時には"生きていくための悪意"を持っていました.すなわち,平然と「第一志望です」「他の企業は受けてないですね」「受かったら御社に行きます」と言いました.当然,嘘がたくさん含まれる内容です. しかし,修士論文の執筆をしているときは,"生きていくための悪意"を失っていました.論文の執筆では,真実(しんじつ)を伝え

          【『傲慢と善良』 読書メモ?】 就活時に持っていた"生きていくための悪意"を修士論文執筆における自己反省の過程で失ったので,『傲慢と善良』の真実を反面教師として取り戻し,要領と善良の二重思考を極める

          読書メモ『脳のネットワーク』 by Olaf Sporns, 1~3章

          なぜ読んだ?私は神経細胞のネットワークに関するの研究をしており、ネットワーク科学の観点から脳を捉える方法に興味があるため。 新学期の開始に合わせた研究書の読書により、研究のモチベーションとメタ知識を手に入れるため。 基本情報タイトル:『脳のネットワーク』 著者:オラフ・スポーンズ (Olaf Sporns) 訳者:下野昌宣 1章「はじめに」で学んだことこの本のテーマは、「ネットワーク科学は脳についてどのような知見をもたらすだろうか?」である。 複雑系を理解するためには

          読書メモ『脳のネットワーク』 by Olaf Sporns, 1~3章

          AIの発展に伴う「論文を書く意味の変化」に関する小考察

          論文を書く意味は、 「人間に読んでもらって人間に科学を発展させてもらうため」ではなく、 「AIに読んでもらってAIに科学を発展させてもらうため」になりそう。 よって、論文の形式も、人間が理解するための「背景・手法・結果・考察・結論」ではなく、 AIが理解しやすい形のインプットになる。 現在人間が所有している意味の表現形式の中で、AIにインプットするために十分多次元なのは自然言語しかない。 しかし、AIが言語以外の表現形式を獲得し、それを用いてやりとりし始める可能性は高い

          AIの発展に伴う「論文を書く意味の変化」に関する小考察

          資本主義に染まっていない野菜の美味しさ——『武器としての「資本論」』を読んで

          東京で、値上がりした110円のペットボトルの水を飲みつつ、140円のコンビニパンを食べている。 実家にいた頃、おやつとして山盛りのフルーツを頬張っていたあの時間が、どれほど充実していたかを思い出す。 筆者は指摘する。「現代人は、ネオリベラリズムの価値観に侵され、魂を資本に包摂されてしまっている」と。その自覚はある。そうは言っても、スキルを身につけなければ、稼ぐことはできない。スキルを身につけて応用することにも楽しさがある。スキルを身につけていきながら一定の時給で働くことは、

          資本主義に染まっていない野菜の美味しさ——『武器としての「資本論」』を読んで

          【エッセイ】「役に立つ読書をしなければならない」という強迫観念から逃れたい

          本を探すときに、「この本は自分の仕事の役に立つか」という観点で見てしまうようになった。あてはまらなさそうな本は切り捨てるようになった。「役に立つ」的価値観が内面化され、染みついてしまった。その結果、視野狭窄になり、教養が広がらなくなっていった。 ビジネス書や実務のHow to(スライド作成術や作文技術など)の本を読んでいると、「仕事に活かさなければ」「何か次のアクションを起こさなければ」「そうしなかったらこの本を読んだ意味がない」との強迫観念に駆られる。 「役に立つ」読書

          【エッセイ】「役に立つ読書をしなければならない」という強迫観念から逃れたい

          最近、本を読めていますか?【『本を読めなくなった人のための読書論』 読書メモ】

          なぜ読んだ?最近、あまり本が読めていない。研究や仕事に関する本・論文を必要に駆られて読むことはある。しかしその読みは苦しく、逃げ出してしまうことが多々ある。 趣味を仕事にしたら楽しくなくなるとはよく言ったもので、仕事で「読む」をするようになると、不思議と趣味での「読む」がなかなかできなくなる。 そんな葛藤を抱えながら、久々に1人で図書館をさまよう時間を取った。終わらせなければならない課題を抱えて図書館に来たものの、心が浮いたので机には座らなかった。研究で使う理系チックなコーナ

          最近、本を読めていますか?【『本を読めなくなった人のための読書論』 読書メモ】

          反省してない?根本的な認知能力を支援する必要がある?【『ケーキの切れない非行少年たち』読書メモ】

          基本情報タイトル:ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書) 著者:宮口幸治 なぜ読んだ?最近人気になっており、かつ今まで触れてこなかった教育分野の新書ということで読んでみた。 感想「“反省させること”以前に、そもそもの見る力・聞く力といった認知能力や、感情統制力や対人スキルといった根本的能力に問題がないかを確かめ、そこを支援しなければならない」という内容が印象的だった。 一般化すると、 自分にとって当たり前であることが当たり前でない人もいるのかもしれないと、そもそもの

          反省してない?根本的な認知能力を支援する必要がある?【『ケーキの切れない非行少年たち』読書メモ】

          名著の抽象的な「知恵」を現実に落としこむ【『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』読書メモ】

          基本情報タイトル:もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 著者:岩崎夏海 なぜ読んだ?コロナ禍の2020年にて、「読んでいなかった過去のベストセラーを読んでみようキャンペーン」を行なった時に読んだ。 感想総論第三者視点で叙事的に書いてる小説。名著に書いてある抽象度の高い「知恵」を現実に落とし込んでみよう!タイプの本。 読書メモ・企業の目的と使命を定義するためには顧客と市場の観点から見ないといかん。 ・顧客にとっての現実、欲求、価値を探るマ

          名著の抽象的な「知恵」を現実に落としこむ【『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』読書メモ】

          生命倫理の形成は技術発展に追いついていない?【読書メモ『はじめて学ぶ生命倫理』】

          なぜ読んだ?大学の授業で「死生学」を学んだことと、生命系の研究に携わっていることから、生命倫理学に入門したくなったため。 また、ユヴァル・ノア・ハラリ『ホモ・デウス』を読み、人類が死を克服したらどうなるのだろうと考えたため。 基本情報タイトル:はじめて学ぶ生命倫理: 「いのち」は誰が決めるのか (ちくまプリマー新書) 著者:小林亜津子 感想総論人類が生命を操作しうる技術が高まりすぎて、問題がたくさん生まれている。倫理形成が技術発展に追いついていない時代である。 ユヴァル

          生命倫理の形成は技術発展に追いついていない?【読書メモ『はじめて学ぶ生命倫理』】

          『教養としての〇〇』が沢山出版されているけど結局「教養」ってなんですか?『教養の書』【読書メモ】

          なぜ読んだ?東大OCWにある"生物意味論"の授業を聞いて好きになった戸田山和久先生の本。戸田山先生の『哲学入門』をちょっとだけ読んだ。この本『教養の書』は初め本屋で新刊として見かけ、その後大学の図書館でよく行くNDC002コーナーにあったので借りた。 基本情報タイトル:教養の書 著者:戸田山和久 感想各論p35 自分が学ぶことの人類にとっての意味。 文化遺伝子を残していくため。よい概念・理念・アイディアを生み出し、伝えていく、知的遺産の継承の担い手になる 文化遺伝子はド

          『教養としての〇〇』が沢山出版されているけど結局「教養」ってなんですか?『教養の書』【読書メモ】

          思考形態を思考してみる 【『思考術』 読書メモ】

          なぜ読んだ?図書館を歩き回るとき、いつも足を止めてしまうコーナーはないだろうか。私にとってそれは、NDC002番の棚である。日本十進分類法において、002は「知識・学問・学術」を表す。 002の棚には、いつもこの本が置いてある。堂々としたタイトルである。表紙も、黒地に白い明朝体のみとシンプル。 パラパラとめくってみると、自分の思考形態をメタ的に捉えるための材料が散りばめられていそうであった。思考について思考したい!そう思考して、貸し出しカウンターに向かった。 基本情報タイト

          思考形態を思考してみる 【『思考術』 読書メモ】

          【読書メモ】深層学習の原理に迫る 数学の挑戦

          こんにちは!大学院で生命系のデータを使った研究をしている山田です(仮名)。 今日は深層学習に関する本の読書メモをお届けします。 なぜ読んだ?・今後半年くらいの勉強モチベとして、「自分に足りないデータサイエンススキルセットを学び、穴を埋めていきたい」というのがある。 ・自分のスキルセットの穴の中に、「深層学習の深い数学的理解および実装能力」がある。大学の講義にて簡単な数学的背景や応用例は学んだものの、数学的に深い所を理解したり、実際の問題解決のために実装したりといった経験はな

          【読書メモ】深層学習の原理に迫る 数学の挑戦