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『教養としての〇〇』が沢山出版されているけど結局「教養」ってなんですか?『教養の書』【読書メモ】

なぜ読んだ?

東大OCWにある"生物意味論"の授業を聞いて好きになった戸田山和久先生の本。戸田山先生の『哲学入門』をちょっとだけ読んだ。この本『教養の書』は初め本屋で新刊として見かけ、その後大学の図書館でよく行くNDC002コーナーにあったので借りた。

基本情報

タイトル:教養の書
著者:戸田山和久

感想各論

p35
自分が学ぶことの人類にとっての意味。
文化遺伝子を残していくため。よい概念・理念・アイディアを生み出し、伝えていく、知的遺産の継承の担い手になる

文化遺伝子はドーキンスの言うミームと同じか。
知的遺産の継承の担い手になりたい!という新たな学ぶことのモチベーションができた。

p38
豊かな知識は人生を楽しく生きることに重要。

これは大変共感。私は「なぜ学んでいるの?」と聞かれたら、「この世の全てを面白いと思えるようになるため」と答える。この私の主張を補足してくれるような説明が展開されていく。

p47
知識がないと、ストーリーを一つの視点でしか見られない。知識ある人のみが理解できるストーリーの意味を見出すことができるようになる。二つのレベルで機能する物語。

p61
さしあたって使い道のない事柄をたくさん知っていることのフツウの人にとっての意義。
知識は楽しみをより大きくしてくれる。知ることそのものが楽しみでもある。

これも超絶共感。アカデミック・ハイは最高。
知ること自体が喜びなら、人生を潰すことができる。飽きが来ないし、無限に知るべきことはあるから終わりがない。安上がりだし、ギャンブルのようなリスクもない。
紙と鉛筆を持って図書館に篭れば一生を潰すことが可能。素晴らしい。

p63
楽しみと結びついた知識の働きは検索で代替できない。

いちいち調べるのって大変だよね、と情報系のことをやってて思う。リアルタイムな楽しみ方は知識を持っていないと難しい。

4章 知識プラスアルファ
自分を超えた価値の尺度に照らし合わせて自分を相対化。開豁さ。知識を全体として構造化している→類比。自分を超えた知識を大きな座標系に位置付ける。

ここら辺いいですね。クイズに即答できる知識だけではいけない。
クイズをやっていた時に生じた疑問がこれ。表面的な知識を点で学んでいくより、構造化された・体系化された知識を線で学んでいく方が楽しいね。
多様な視点で物を見るという教養の一面もここから出てきそう。

5章 読書の意義
『華氏451』の話。原作読みたい。自分の人生が周りと異なるものになる。横に繋がる人と、縦に繋がる人。
ダイアローグとしての読書は、新しい自分に生まれ変わるために行われる。「読む」を絶やさないために読む。

p95
ここまでのまとめ
豊かな知識の構造化・大きな座標系での位置付け
自己相対化、闊達さ

p108
教養の社会的な次元
社会の中の自分のポジションを見る

p123健全な懐疑主義、わからなさへの耐性、したたかな楽天性とコミットメント

わからないことを認めつつ楽天的に挑むという話は、物理工学の先生が同じこと言ってたなという印象

p125
教養の定義
社会の担い手であることを自覚し、公共圏における議論を通じて、未来へ向けて社会を改善し存続させようとする存在であるために必要な…

公共圏とか、社会の改善・存続のあたりには少し違和感があった。強引なまとめ方に感じられなくもない。とはいえ、とても網羅製の高い良い定義だと思う。

p133
プラトンの洞窟の話いいですね。『国家』読みたくなる。英語以外もなんか言語力持っているといいんだろうな…と思いつつ。

p153
種族のイドラ・洞窟のイドラ・市場のイドラ・劇場のイドラ

p176
学問は人工物であり、人間の能力を増強するもの。知性・思考の補助手段

p185
人間知性の増強
人工物・言語・方法論・訓練

p196
相対化の方法
視点を変える・「他者」と出会う。歴史を遡る。

p220
母語で難しいことを考えられる幸せ。
アホにする一番の近道は、言語を奪うこと。『1984年』よみたいね。ニュースピークは底知れない怖さ。

p231
人類全体としてはかなり賢い。人工物を作って一緒に考える・共同作業と分業で考える。時間をかける。

p243
学問の加速ぶりのヤバさ。
これは共感。パブリッシュオアぺリッシュ、しんどい。時間をかける研究ができない。論文の短期生産を求められる。新しい学問システムを作らなければならないのでは。

p324
文章の設計法
①文章の目的②読む相手③共通知識④知識の非対称性⑤どのような知識を補えば目的のことをしてもらえるか⑥どのような仕方で獲得すれば果たせるか⑦相手にその知識を⑥のような仕方で獲得してもらうにはどうすればよいか⑧そうして設計された文章をどのように実現すれば相手は気分よく読めるか

p334文と文との関係

p364無駄な勉強をしたくないと思うと、かえって勉強しそこねる

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