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最近、本を読めていますか?【『本を読めなくなった人のための読書論』 読書メモ】

なぜ読んだ?

最近、あまり本が読めていない。研究や仕事に関する本・論文を必要に駆られて読むことはある。しかしその読みは苦しく、逃げ出してしまうことが多々ある。
趣味を仕事にしたら楽しくなくなるとはよく言ったもので、仕事で「読む」をするようになると、不思議と趣味での「読む」がなかなかできなくなる。
そんな葛藤を抱えながら、久々に1人で図書館をさまよう時間を取った。終わらせなければならない課題を抱えて図書館に来たものの、心が浮いたので机には座らなかった。研究で使う理系チックなコーナーではなく、分野の外れた文系チックなコーナーに惹かれた。そこで、まるで私のために書かれたようなこの本を発見した。

基本情報

タイトル:本を読めなくなった人のための読書論
著者:若松英輔


感想

今の自分が会うべくして会った随筆であった。

本を読まないでいると、いろいろな不安が心に表出してくる。本を読みたいのに読めない。もしかして、本心では読みたくないのではないか。本当は読みたくないのに、本を読みたいと思っている自分でありたいから読みたいと思っているだけなのではないか。本を読まないから、自分はこの頃深いインプットを得られていないのではないか。本を読まないと、自分と向き合う時間がなくなり、周りの環境にただただ流されていってしまうのではないか。

そんな不安を抱えた自分をふんわりと受け止めて、抱擁してくれるような本だった。読めない自分を肯定してくれて、前を向かせてくれるような本だった。

「本はたくさん、速く読まなければならない」「知識を得るために本を読まなければならない」「一冊全部読み切らなければならない」
読書好きが内面化してしまっているこんな価値観から、解き放してくれるような本だった。

読みながら、不思議と少し涙が込み上げてくることもあった。随筆で泣くことは初めての経験だった。自分が無意識に抱えていた苦しみを、悩みを、緊張を、優しく解きほぐされた感覚である。言葉によって心をマッサージされた感覚で合った。そして、本を読むのが好きだった自分のことが思い出され、失っていた感覚が取り戻され、本に夢中だった自分という「書物」を「読み直した」(p77参照)。

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