赤レンガ

精神科病院の閉鎖病棟に強制入院した時の記憶が戻ってきたので始めてみました。 空を見上げ…

赤レンガ

精神科病院の閉鎖病棟に強制入院した時の記憶が戻ってきたので始めてみました。 空を見上げるような、雲を数えるような気持ちで読んでみてください。 「記憶の欠片ー閉鎖病棟にいた私の記録ー 」11話まで公開中。 「それでも私はおじいちゃんが好きーヤングケアラーの介護奮闘記ー」近日公開。

マガジン

  • 記憶の欠片ー閉鎖病棟にいた私の記録ー

    精神科病院の閉鎖病棟に強制入院した時の記憶が戻ってきたので綴ってみました。 思い出すタイミングが急なので、時系列はバラバラかもしれません。 更新頻度は不定期ですが、最後まで綴るつもりでいますので見守っていただけると嬉しいです。

  • それでも私はおじいちゃんが好きーヤングケアラーの介護奮闘記ー

    重度のうつ病だった(継続中かも)私が祖父の介護をした2年間を綴ります。 ヤングケアラーの年齢ではないですが、個人的にはまだヤングと思っている20代後半なのでヤングケアラーとしてのモチベーションで言葉を届けたいと思います。 祖父と一緒に温泉に行くのが夢でした。

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そして書きたい話があるので今日から更新していきます
ほぼノンフィクションですがほぼが取れかけてるノンフィクションです

赤レンガ
1年前
1

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もう少し記憶が戻ってきたらまた書き始めます

赤レンガ
1年前
1

11.外の世界とは

「今日の昼の献立見た?」「野菜カレーだって」「カツカレーが良かったんだけど」「来週カツカレーあるよ」「毎日カレーでもいい」「毎日カレーは違うけどカツカレーは楽し…

赤レンガ
2年前
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10.認める勇気

「私のうつ病ってどのくらいのレベルなんですか?」 この質問ができるようになるまで、私はいったいどのくらいの時間を過ごしたのだろう。 決められた部屋の中で決められ…

赤レンガ
2年前
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9.話すということ

「私ってうつ病なんですよね」 強制入院して3週間ほど経った頃、私は少しだけ自由を得ることができた。ドアに鍵がかかっているのは変わらない。ただ、外に出られる時間が…

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2年前
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8.友達と呼べる存在

「いつも話聞いてくれてありがとね」 私の人生の中で一番の友達と呼べる存在はいつも私にありがとうの気持ちを伝えてくれていた。未読スルー多発中の彼氏持ちの友達だ。私…

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2年前
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7.母と私、そして父

「お母さんと同じ顔してるな」 私の母はもうこの世界にいない。私がまだ親孝行ができる段階ではない時、母は自らの意思と行動でこの世界から姿を消してしまった。母のこと…

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2年前
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6.私は認めない

「鬱」 うつという漢字はとても難しい。読み方は簡単でもものすごく画数が多く、一度見ただけで正確に書ける人はほとんどいないのではと考えてしまう。それくらい私の生活…

赤レンガ
2年前
3

5.私に告げられた病名

「彼氏から連絡来なくてうつ病になりそう」 未読スルー多発中の彼氏持ちの友達は、口癖のようにうつ病という言葉を使っていた。学生時代だけでなく、社会人になってからも…

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2年前
4

4.食べない決意をした夜

「食べることって必要なのかな」 夜に眠れない日々が何日も続いた。夜は寝るものだと思ってたし、夜寝られない自分になるなんて思ってなかった。時刻は午前4時、明日も仕…

赤レンガ
3年前
5

3.食べるということ

「とりあえずちゃんと食べさせてください」 父がそういったのも無理はない。私は衣食住の食を完全に断っていた。今思えば、夏なのにぶ厚い生地のハーフパンツを着ていたの…

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3年前
3

2.ここはどこ

「お名前言えますか?教えてほしいんですけども」 私がいる場所は、屋上に行くための外階段。私はまだここにいる。ここというのは、生きているという意味でのここ。今日も…

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3年前
5

1.終わりの始まり

「とりあえず荷物をまとめてくれ、それくらいはできるだろ」 父にそう言われた時、私は夏にしては暑すぎるぶ厚い生地のハーフパンツと今にも被れそうな黒のキャミソールを…

赤レンガ
3年前
5

そして書きたい話があるので今日から更新していきます
ほぼノンフィクションですがほぼが取れかけてるノンフィクションです

久しぶりにログインした
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もう少し記憶が戻ってきたらまた書き始めます

11.外の世界とは

11.外の世界とは

「今日の昼の献立見た?」「野菜カレーだって」「カツカレーが良かったんだけど」「来週カツカレーあるよ」「毎日カレーでもいい」「毎日カレーは違うけどカツカレーは楽しみだね」

食堂スペースに自由に行けるようになってから、私は2人の人と仲良くなった。全員女性で、全員年上、見た目も性格も興味のあるものも全然違うけど、どこか話が合うのはきっと、みんな私と同じように決められた部屋の中で決められた区域内で生活を

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10.認める勇気

10.認める勇気

「私のうつ病ってどのくらいのレベルなんですか?」

この質問ができるようになるまで、私はいったいどのくらいの時間を過ごしたのだろう。

決められた部屋の中で決められた区域内で生活をする閉鎖病棟。自ら閉鎖病棟に入る人もいるらしいが、私はそうではない。自分の人生を終わらせる決意を35回しながらも実行できず、父に連れられ3つの病院で診察を受けたのち、最終的に訪れたメンタルクリニックの先生の指示により強制

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9.話すということ

9.話すということ

「私ってうつ病なんですよね」

強制入院して3週間ほど経った頃、私は少しだけ自由を得ることができた。ドアに鍵がかかっているのは変わらない。ただ、外に出られる時間が一定時間設けられる部屋に移ったのだ。私がいる精神病棟は、誰一人として自分の意志で病院の外に出ることができない。私のその当時の感覚として、自分の部屋以外が俗に言う外の世界なのだ。だから、廊下に出られるという事実自体に特別な意味を感じていた。

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8.友達と呼べる存在

8.友達と呼べる存在

「いつも話聞いてくれてありがとね」

私の人生の中で一番の友達と呼べる存在はいつも私にありがとうの気持ちを伝えてくれていた。未読スルー多発中の彼氏持ちの友達だ。私は友達の恋バナをひたすら聞く側だった。たまに、聞くばっかりで自分の話を聞いてくれないと思う人もいると聞くが、私自身はストレスを感じることはほぼなく、むしろ友達の恋バナを聞く側にいれることを喜んでいた。これ以上にない喜びを感じているのに、あ

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7.母と私、そして父

7.母と私、そして父

「お母さんと同じ顔してるな」

私の母はもうこの世界にいない。私がまだ親孝行ができる段階ではない時、母は自らの意思と行動でこの世界から姿を消してしまった。母のことは毎日のように思い出す。母がこの世界からいなくなった日のこともその次の日のことも半年後のことも1年後のことも。母がなぜ生きることをやめてしまったのか、その理由を100%正確に答えられるのは、私も父も家族にもいないかもしれない。

それでも

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6.私は認めない

6.私は認めない

「鬱」

うつという漢字はとても難しい。読み方は簡単でもものすごく画数が多く、一度見ただけで正確に書ける人はほとんどいないのではと考えてしまう。それくらい私の生活でうつというものはかけ離れていると思った。それでもその時の私は紛れもなくうつ病だった。

「しばらくはこちらの部屋で過ごしてください」

精神科の閉鎖病棟と言っても様々なエリアがあり、私が最初に入院した部屋は部屋の半分を占める大きなベッド

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5.私に告げられた病名

「彼氏から連絡来なくてうつ病になりそう」

未読スルー多発中の彼氏持ちの友達は、口癖のようにうつ病という言葉を使っていた。学生時代だけでなく、社会人になってからも恋バナだけは欠かすことなく話していた気がする。未読スルーするような彼氏を好きになってしまう友達のことを不憫に思うことはなく、むしろ恋を一生懸命に頑張る彼女を私は誇らしく思うほどだった。物であれ人であれ、好きになる気持ちは人をハッピーにさせ

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4.食べない決意をした夜

「食べることって必要なのかな」

夜に眠れない日々が何日も続いた。夜は寝るものだと思ってたし、夜寝られない自分になるなんて思ってなかった。時刻は午前4時、明日も仕事がある。なのになんでだろう、まったく眠くないのだ。仕事に行きたくないというよりは、仕事を辞めたらこの先どうなるんだろうという不安。貯金がそこまであるわけではないし、これといった資格があるわけでもない。パソコンはある程度できるし、タイピン

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3.食べるということ

3.食べるということ

「とりあえずちゃんと食べさせてください」

父がそういったのも無理はない。私は衣食住の食を完全に断っていた。今思えば、夏なのにぶ厚い生地のハーフパンツを着ていたので、衣の部分も放棄していたのかもしれない。外に出るためには裸では出歩けないという理由のみで服を着ていたのかもしれない。衣に対する意欲がなくなったように、食べたいという気持ちは私の心の中には完全に皆無だった。父が私が何も食事をしていないのを

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2.ここはどこ

2.ここはどこ

「お名前言えますか?教えてほしいんですけども」

私がいる場所は、屋上に行くための外階段。私はまだここにいる。ここというのは、生きているという意味でのここ。今日も私は自分の命を止めることができなかった。実際は35回目だったけど、まだ10回目くらいに思っていた。同じルーティーンでしか生きられないというよりは、同じルーティーンでしか行動できないくらい、私は家の外に出ることができない状態だった。それは俗

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1.終わりの始まり

1.終わりの始まり

「とりあえず荷物をまとめてくれ、それくらいはできるだろ」

父にそう言われた時、私は夏にしては暑すぎるぶ厚い生地のハーフパンツと今にも被れそうな黒のキャミソールを着ていた。頭が混乱したのを今でも昨日のことのように覚えている。その日はおそらくだが、私が自分の命を止められなかった35回目の朝だったと思う。

「同じような服ばっかり持ってるな、買ったものもわからないのか」

同じような黒のキャミソール、

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