【エッセイ】 色のない未来
『ああ…なんだか、悔しい
まだまだ、私をワクワクさせる物が自分の見えていない世界にはあるだなんて』
それは、私が自分の好みの音楽を見つけたご機嫌な日に心の端っこでつぶやく事
『こんな良い音楽を知らなかったなんて
まだ、あるのね
私をこんな気持ちにさせる物が未来には
ああ…今すぐには見つからないと言う事がもどかしい…』
新しいお気に入りの曲を見つけた日は
こんな、愛しいような嘆かわしいような
もどかしい気持ちを抱えているのです
空っぽの人生で見つけたもの
新たに好きな場所を見つけた時も
新たに楽しい趣味を見つけた時も
良い映画に出会った時も
私はこうして人生のキャンバスの白く何も塗られていない所から
自分の気持ちを温めて優しく燃え上がらせる何かを見つけては描き込んできました
それは、過去の自分には見えていなかった
未来で見つけた宝物の様な大好きな物たちであり
今の自分をつくるもの
いつしか、こんな自分の好きな色で人生を描き
その度に素敵な何かを探しきたからなのか
これから色を塗られて行く予定の人生も
どこか、素敵な色で塗られて行くのだな…と
回転草が右へ左へ転がって行くのを眺めているかの様な
素朴でどこか貧相な日々でも
心のどこかで思っている自分に気づく様になったのです
とは言え私の人生のキャンバスは
絶望のトンネルなら顔パスが効く常連です
と胸を張って言えるほど、何度も通り抜けてきて
うっかりすると馴染みすぎて居座ってしまいそうになるほど
これまでに塗ってきた人生の殆どの色は絶望色で
まるでピカソの青の時代を想像させるほど暗く湿っぽい
空っぽで何一つ無かった
そんな仄暗い人生で
私はある壮大な勘違いをし始めたのです
それは、希望は未来にしかないなと言う事
素敵色で塗り始める人生
青の時代と思い込み人生を諦めようと思った過去
そんな時に私を救ったものは
目の前に聳え立つ山でした
あまりに綺麗な景色だったから、その向こうが見たくなってしまって
更に、綺麗だなと見ていると
腹の底から欲が増して来て
もっとこう、胸にドンっと来る何かがこの世界にはあるはずだ
この目があるうちに
この体があるうちに
感じなくちゃと
ただ、そんな風に思ったのです
あの日から、私の人生のまだ何も塗られていない空白の部分には
自分の心が動く物を見つけては描き足されて来ました
青の時代から、グラデーションが出来て少しづつ様々な色が使われる様になって
今の私はこんな風に思うんです
人生のキャンバスの何も描かれていない空白の所
この先、どんな素敵な物に出会えるだろう?
どうせなら少しでも素敵な何かを描き込まなくちゃ
なんだかもったいない
でも、急いで何かを見つけようとするのも
もったいない
素敵な物は探している場所にしかないわけではないんだよ
ゆっくり歩いて行けばいい
未来にしか希望はないからねと
そんな思いを抱えて、今日も素敵色にキャンバスを埋めて行こうと自分と約束するのです
akaiki×shiroimi