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ウクライナーサハリンー日本

ウクライナ、サハリン、日本を結ぶもの


日に日に想像を絶する悲劇が続いているウクライナ情勢の影響は、私たちに”物理的に”近いところにまで及び始めている。

今度は北海道の北隣の島の名前が出てきた。そう、これまで「サハリンスケッチ」で紹介している島、サハリン(樺太)だ。

そして、私たちがここから輸入しているエネルギーがどうなるかという話だった。

ご存じない方もいるかもしれないが、日本はサハリンからもエネルギーを輸入しているのだ。

英石油大手シェルが「サハリン2」から撤退へ


今日のニュースとは・・・

「ロシアのウクライナへの侵略を受けて、イギリスの石油大手シェルが、ロシア極東のサハリンでの石油・天然ガスの大型開発プロジェクト「サハリン2」から撤退する方針を発表した」というもの。

「サハリン2」というのは、サハリン沖の石油天然ガスの巨大開発事業で、ロシア政府系ガス会社ガスプロムとシェルの他にも、日本の三井物産と三菱商事が出資している。

欧米と日本の資本で始まったこのプロジェクト。その過程は色々と多難だった。

2000年のプーチン大統領就任以来、ロシアでは”資源ナショナリズム”が高まり、環境問題を口実に2006年に許可が取り消された。結局、ロシア政府系ガス会社に株式の過半数を譲渡する形で、継続が決まった。

現在、全体の27.5%を出資しているシェル社が撤退することで、このプロジェクトがどうなるか心配されているのだ。

今日の松野官房長官会見では、「操業は継続されるので日本のエネルギー輸入に問題はない」との見解ではあったが、今後どうなるのかは全くの未知数だ。

北海道のすぐ北から運ばれている天然ガス


「サハリン2」では、サハリン北部の天然ガスを、およそ800キロのパイプラインでサハリン南部のコルサコフ(大泊)に近い、プリゴロドノエ(深海村)という場所に運んで液化し、それをタンカーで日本に運んでいる。日本が輸入する液化天然ガスのおよそ1割を占めているという。

プリゴロドノエの天然ガス液化プラント 撮影 AJ

このプラントで作られた液化天然ガスは、タンカーに乗せられて、すぐ南隣の島である北海道の、札幌北部の石狩湾新港に運ばれていく。

液化天然ガスを日本に運ぶタンカー 浜辺は地元民の憩いの場になっている 撮影 AJ

天然ガスプラント、浜辺に憩う市民、日本軍上陸の碑・・・


このプリゴロドノエという場所、行ってみると不思議な風景が広がっていた。

液化天然ガスプラントと沖合のタンカーを望む浜辺では、地元の人たちがバーベキューをしている。子供たちの明るい声が浜に響き渡っていた。

そして、そのすぐ横には・・・・
こんな碑が、草むらにドーンと倒れたままになっているのを見つけた。

「遠征軍上陸記念碑」 奥には天然ガスのタンクが見える 撮影 AJ

この碑は一体何だ。
よく見ると、「遠征軍上陸記念碑」と書いてある。

これは、1905年に建立されたもので、日露戦争に日本が勝利して、南樺太(サハリンの南半分)を領有することになった際に日本軍が上陸したことを記念した碑だという。

そのすぐ横には、これ。碑の土台だろうか。
放ったらかしにされ、落書きされて無惨な姿を晒していた。

撮影 AJ

日本のエネルギー輸入の最前線、浜辺のバーベキュー、放置された日本軍上陸の碑・・・この3つは、なかなかつながらない。プリゴロドノエは、なんともミスマッチなものが共存する、形容し難い風景の場所であった。

誰も幸せでない戦争

ウクライナの戦争は、サハリンを通して、日本のエネルギー問題に直結していた。

しかし、それよりも今、情勢が本当にヤバい。

今、これを書いている間にも、攻撃は止まるところを知らない。ロシアとウクライナの代表団がベラルーシで停戦協議を始めたニュースがあったばかりなのに、今度は、キエフのテレビ塔への攻撃の映像が入ってきた。東京で言えば、スカイツリーや東京タワーが攻撃を受けているようなものだろう。首都の包囲戦が起ころうとしている。

今、キエフの地下壕で恐怖に怯え、また慣れぬ武器を持って戦おうとしているウクライナ人たちの顔を想像してみる。そして、それと同時に、命令を受けて異国で破壊活動をさせられている若いロシア兵の顔も。そして彼らの帰りを待つ母国の母親も。攻撃命令を下している大統領も含めて、・・誰一人として、幸せな人は、いないと思う。

この後ベッドに入っても、しばらく寝られそうにない。

「サハリン2」をモチーフにしたマトリョーシカ  撮影 AJ



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