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タイムスリップしに、ちょっと消防署まで 【高輪消防署二本榎出張所】
旅は距離じゃない。「非日常」が旅だとしたら、自分のすぐ近くに目的地がある旅もある。
休みの日、起きたら昼前だった。遠くに行く時間もない。でも貴重な休み、近場で何か非日常を体験する小さな旅がしたい。ーそんな時におすすめの場所をひとつご紹介したい。
それは、東京・品川区高輪の「高輪消防署二本榎出張所」。きょうはこの消防署に、タイムスリップをしに行く。
というのは、最近行ってnoteでも報告した「江戸東京たてもの園」がとても面白く、古い建築物をもっと見てみたい気分だったので、「東京・歴史的・建築物」などのキーワードで検索して見つけたのがこの消防署だったのだ。
(「江戸東京たてもの園」の記事はこちら↓)
一体どんな建物なんだろう。とにもかくにも向かってみよう。
JR高輪ゲートウェイ駅、地下鉄白金高輪駅などからそれぞれ徒歩10分ちょっと。目印は、国道一号線(桜田通り)の明治学院大学前の交差点だ。
この交差点。国道沿いに歴史的建造物が鎮座しているのには驚いた!高輪の高級な街並みに堂々たる洋館。明治学院記念館。明治23年のネオゴシックと呼ばれる様式の建築だという。
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さあ、目的の消防署に向かおう。この交差点を曲がるや否や・・青い尖塔をつけた丸い塔のような建物が目に飛び込んできた。間違いなくこれだ!
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鉄筋コンクリート造り地上3階。昭和8年完成だというその建物は、丸みがとてもオシャレだ。その上には望楼。交差点の角にドーンと誇らしげに建っている。
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昭和8年か。ということは25足して、1933年。五・一五事件の翌年。日本が軍国主義に突き進み始めた頃か。
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タワーマンションの近くでも、存在感を際立たせていた。
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中に入ろう。
タイムトラベルの入り口は、木の扉。「高輪消防署」の文字は、右から左に書かれていて時代を感じさせる。
恐る恐る入ってみる。
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受付があり、消防署員のお兄さんがすぐに案内を始めてくれる。
実は行く前に電話を入れたところ、土日も含めて緊急出動がなければ、午後4時半ごろまでなら案内しますよ、との驚くほど嬉しい返事。年間1200人が見学に訪れるという。
ちなみにここは、現役の消防署。博物館ではない。火事があったら出動するのだ。それでこの対応とは素晴らしい!
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中は、少し薄暗く、石のひんやりした感じ。すぐに曲線を描いた階段があり、登っていく。必然的に期待が高まる。
3階に着いた。
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梁が放射線状に広がった円形の天井、上部が丸くなった高い窓が、優雅な気分にさせてくれる。
当時のアール・ヌーヴォー風のガス灯がそのまま残されていた。停電時に使うために設置されたそうだ。
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当時の消防服なども展示されている。
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一本の木の棒。
案内してくださった署員さんは、この棒を・・
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パッと広げて、瞬く間に木の消防ばしごに変身させた!
火災現場に持って行きやすいように、との当時のアイデアに驚く。
他にも、こんなものが。手榴弾!?
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箱の中には、消火剤入りの砲丸のようなものが入っていた。これを投げて火を消していたらしい。
そして、半鐘。戦後も暫く使われていたという。
火事が起きたら、この上の階の望楼で鳴らしていた。
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望楼は安全のため上がれないというのが残念。海抜25メートルのこの場所。当時は周囲に高層建築物もなく、望楼から東京湾まで一望できたという。
街を見下ろすその威容から、当時は「軍艦」や「灯台」の愛称で呼ばれたそうだ。
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次は、車庫へ。
消防車が2台。奥は今実際に活躍しているもの。手前にあるのが、展示車「ニッサン180」。今すぐに出動してしまいそうなほど、ピカピカに整備されている。
本格的な国産ポンプ車第一号。この消防署では昭和20年から、なんと昭和39年まで現役を務め、米軍の大空襲で燃える街の消火にも活躍したそうだ。
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どこか蝉の顔を彷彿とさせるフロント。昔のフランス車シトロエンが思い浮かんだ。
左のフロントライトの上にある筒はサイレン。助手席にレバーがついていてクルクル手動で回して鳴らすそう。
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屋根はなく、オープンカー状態。
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色々質問にも答えてもらい、30分ほど経っただろうか。私1人のための贅沢な昭和初期へのタイムスリップツアーが終了。
外へ出た。
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夕陽が斜めに射し込み始める中、車庫のシャッターがゆっくりと閉まっていく。
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戦争へと突き進む不安な時代に、庶民の生活を護る「丘の上の軍艦」だった消防署。戦後の復興を見つめた「灯台」だった消防署。そして何よりオシャレな街のシンボルだった消防署。
街の一角で、こんな素敵なタイムスリップを楽しめるとは、思わなかった。
皆さんも、ぜひ!
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【おまけ: デジャブ感の正体は、御影公会堂!?】
ところで、この建築、どこかで見たことあるなあと、デジャブ感がずっとあった。
そうだ!故郷神戸にあった、あの建物だ。外観が似てる。
その建物とは、「御影(みかげ)公会堂」。
アニメ映画化もされた作家・野坂昭如の「火垂るの墓」に出てくる有名な建物だ。リニューアルしたのに、あまりに人気が高かったのか外観は生かされている。
高輪の消防署は、第一次世界大戦以降に流行した、「ドイツ表現主義」と呼ばれるモダニズム建築様式とのこと。
御影公会堂もさては、と思い、調べると・・
やっぱり!
同じ昭和8年建築の、ドイツ表現主義だった!
消防署は耐震補修とかはしてあるのかな。消防署も御影公会堂も、是非とも次の百年も残してほしい!
案内してくれた消防署員さんも、この建物で働いていて、特に暑すぎ寒すぎなど問題もなく、お気に入りとのことだったし。
将来タワマンに囲まれようが、生き残ってくれ!
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今日も最後までお読みいただきありがとうございました!
AJ 😀
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